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失恋(Ⅱ)
私は立て掛けてあったキャンバスの裏を何気なく見た。
ぁ…
キャンバスの裏には、それを描いた年と日付が書いてあった。
これ…
瞬の字だ。……じゃぁこの絵は、瞬が描いたの?
そういえば、小学生の頃。庭で絵を描いていた、
瞬の姿を、庭の外でよく見かけた事があった。
私は再びキャンバスに目を向ける。
この日付…
××××‐××‐××
瞬と出会う前のものだ…
そして、その年数は、毎年のように綴っていた。
これは…
小学生の頃の?
「…」
春、夏、冬。
瞬がいなかった長い休みの月ばかり…
そっか…この絵を描く為に?
この人がいたから…だから瞬はいなかったんだ。
小学校卒業してからは、毎月のように描いてある…
瞬?
瞬は、どんな思いでこの人の事を描いていたの?
…目が霞む。
「貴女は…誰?」
瞬…
瞬はこの人の事を…
涙が落ちる。
瞬はこの人を…私と出会う、もっと前から…
そんな時から、この人を描き続けている。
それって…瞬がその頃から、この人を見ているってことでしょ?
瞬は、私なんかよりも…
ずっとずっと…長い恋をしてたんだ。
私じゃ駄目なんだ…
こんな私じゃ…
私は…その場に泣き崩れた。