失恋(Ⅰ)
その日から私は、瞬との距離が一気に縮まった。
登下校は瞬とはよく一緒に行くようになった。
(美月ちゃんの送り迎え込み)
帰りは、そのままお家にお邪魔する事も多くなった。
このまま、時間が止まればいいのに…
そんな風に想えた。
数日後の放課後。
今日もいつものようにお邪魔する。
「ごめん…ちょっと、お手洗いに行ってくるね?」
「どうぞ」
そう言うと、私は席を立つ。
「ぇっとぉ…トイレはこっちだったかな?」
何度か来てるとは言え、広い家だもん。
中々部屋の配置を覚えられない。
トイレに行くのも一苦労。
そして帰るのも一苦労。
お手洗いを済ませ、部屋に戻ろうとする。
「…」
えっと…どっちだっけ?
ぁ!この部屋(扉)だっけ?
私は扉を開け、中へ入って行く。
「…」
私の目は奪われた。
「…キレイ」
想わず出てしまった言葉。
そこには見知らぬ女性の、肖像画の数々。
「ここにある絵…皆同じ人だ」
幼い頃の絵もあれば、私と同じ年くらいの絵もある。
その絵は全て、同じ人が描いているようだった。
「瞬のお父さんのかな?」
確か…趣味が画(絵)を描く事だって、聞いた事がある。
じゃぁこれは、瞬のお母さん?
……違う。
瞬のお母さんはこんな人じゃ無かった気がする。
あんまり会った事はなかったけど、全然違う。
じゃぁ…この絵の人は…
貴女は誰なの!?
…何でかな?
私、貴女のこと、知らないはずなのに…
私…貴女を知ってる気がする。
貴女のこと、どこかで見た気がするの。