彼の気持ち(Ⅲ)
その帰り、瞬と美月ちゃんが家まで送ってくれた。
っていっても、近所(200メートルほど)なんだけど…
美月ちゃんは相変わらず瞬から離れようとしない。
私の家。
瞬の家とは大違いの、玄関の前。
「送ってくれてありがとう」
瞬は首を振る。
「礼を言うのは僕の方だよ…」
瞬は申し訳なさそうに言う。
「そんな事ないよ?」
「ゴメン…」
「もう謝んなくていいって!」
私は笑顔でそう言った。
ホントに…今日の瞬は、私に謝ってばかり…
瞬もそんな時が、あるんだね?
私、そんなことも知らなかった。
「気を付けて帰ってね?」
「うん。ありがとう…また明日学校で…」
「うん♪」
「じゃぁ…」
瞬は背を向ける。
「バイバイ…」
手を軽く上げてそう言うと、私の視界に彼女が写る。
瞬の服の裾を掴みながら、彼女は横目で私を見ている。
『あの子(美月)は、人の感情(反応)とかに凄く敏感なんだ』
瞬のあの言葉が頭にチラついた。
「…」
そんな事を思い、横目で私を見る彼女を見ていたら、
良く分かんないけど、自然と口元が微笑んだ。
「美月ちゃんもまたね?」
瞬の時と同様、止めていた手を再び動かして言う。
そんな私を見て美月ちゃんは目を大きくさせた。
そして微かにだけど、微笑んだ。
その小さな笑顔が、なんだかくつぐったかった。
瞬の言うと通りだ…
私が彼女と本気で向き合ってなかったから、
彼女も私に心を開かなかったんだね?
そんなの、当たり前なことなのに…
ごめんね?
美月ちゃん。
そんな簡単な事にも私、分かってなかったよ。
そんな私達を見て、瞬が呟くように言った。
「…そうだな…」
「?」
「愛には…いつか言えたらいいな…」
『瞬…』
そう言って、二人は夕陽に消えて行った。
ねぇ瞬?
相変わらず私は
瞬の事、分かんない事だらけだけど…
今日、少しだけだけど…
瞬に近づけた気がするよ?
それが…とっても幸せ。