寄り道(Ⅰ)
『『私は月になりたいの…
いつまでも変わることなく、
永遠に輝き続ける、あの月に…』』
「…ン?」
「…瞬?」
「…ぇ?……愛?」
「大丈夫?なんかボーっと、してたみたいだけど?」
「…ゴメン…大丈夫……」
瞬…
「ゴメン…ちょっと頭冷やしてくる」
そう言って瞬は教室を出ていく。
「瞬?」
どうしたの?
あんな瞬、初めて見た。
授業が始まる一分ほど前、瞬は戻って来た。
いつもと同じ冷静な姿で。
瞬は何事もなかったかのようにそこに座る。
それをいつもの特等席で見守る私。
瞬…悩み事があるなら私、いつでも聞くよ?
あまり役に立てないかもしれないけど…
その放課後。
あの日から少しだけ、瞬に触れるのを戸惑う私だったけど、
勇気を出した。
瞬がこっちへ帰って来てからの、はじめての言葉。
なんか可笑しいよね?
「瞬?」
小学生の頃は何の躊躇いもなく言えた言葉なのに、
年を重ねると妙に恥ずかしく感じるなんて…
「愛?どうしたの?」
帰る仕度をしていた瞬に、
「今日さぁ…久しぶりに……」
頬を火照らせ言う。
「?」
「だから、今日…」
だけど、肝心な言葉が出てこない。
「…ぃ…一緒に…帰らないかな…て…」
…声が裏返っちゃった(汗)
瞬は少しビックリしたような顔をしていた。
「…」
瞬は少し考えているみたい。
なんか…この妙な緊張感が嫌…
穴があったら入りたいよ。
「いいけど…」
「ぇ?」
…いいの??
「ぁ…でも……」
やっぱ……
「?」
駄目…ですか?
瞬は辺りを軽く見回すと、耳元で言った。
「途中、寄り道に付き合ってくれるなら…いいよ」
単純なのか、私は急に嬉しくなって
「いいよ?それでもいい♪」
笑顔でそう言った。
瞬との寄り道なら…
私、どこだってついて行くよ♪
「ありがとう」
瞬が言った。
“ありがとう”
それはこっちの台詞だよ?
瞬…やっぱり大好きだ。
私の心の中は、久しぶりに暖かくなった。