測定
第四話 測定
翌日。
演習場は屋外だった。
円形。
コンクリート。
観客席。
二年C組、全員集合。
腕章の色が並ぶ。
金。
赤。
青。
灰色は俺だけ。
「本日の再測定で順位を確定する」
担任が言う。
「形式は単純。実戦形式の一対一」
空気が少しだけ熱を持つ。
俺の名が呼ばれる。
「編入生。暫定E」
ざわつき。
「相手は赤ランク、三位」
昨日の男だ。
「よろしくな、E」
笑っている。
中央へ出る。
観客席。
白衣。
眼鏡。
隈。
彼女は端末を構えている。
俺は見ない。
「開始」
合図。
空気が震える。
衝撃波。
正面から。
避けられない距離。
死ぬ。
そう判断する。
恐怖はない。
世界が。
ずれる。
衝撃波が逸れる。
地面が抉れる。
赤ランクの目が揺れる。
「もう一発」
連続。
右。
左。
全部、逸れる。
俺は動いていない。
観客席がざわつく。
「なんだ今の」
「防御型か?」
「いや、回避じゃない」
赤ランクが距離を詰める。
拳。
振り下ろす。
その腕が。
途中で、ずれる。
拳が空を打つ。
赤ランクの身体が傾く。
バランスを崩す。
転倒。
沈黙。
「勝者、編入生」
静まり返る。
俺は立っている。
無傷。
赤ランクは立ち上がれない。
骨は折れていない。
だが、関節の位置が微妙に狂っている。
ずれた。
俺の周囲だけ。
観客席。
白衣。
彼女は立ち上がらない。
眼鏡を押し上げる。
小さく、呟く。
「やっぱり」
次の試合。
金ランク。
速い。
瞬間移動。
一瞬で背後。
刃。
首筋。
死ぬ。
そう判断する。
世界が、静かになる。
音が遠のく。
空気が重くなる。
刃が。
届かない。
刃先が、わずかにずれる。
金ランクの瞳が見開く。
「……は?」
次の瞬間。
金ランクの足元が歪む。
体勢が崩れる。
転倒。
刃が地面に刺さる。
「勝者、編入生」
沈黙。
誰も拍手しない。
怖れている。
理解できないものは、怖い。
担任が口を開く。
「再測定終了」
「暫定Eランクを撤回する」
ざわめき。
「順位、暫定一位」
静寂。
灰色の腕章が、重くなる。
観客席。
白衣の女。
周囲には感情を見せない。
端末に入力する。
だが。
周りに誰もいない瞬間。
ほんのわずかに。
口元が上がる。
「やっと」
小さい声。
すぐに消える。
俺は空を見る。
一位。
意味は、まだ分からない。
ただ。
事故は。
もう偶然ではない。




