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心傷のマカブレア  作者: もにもに
事故は、二度起きる
3/18

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 朝は早かった。


 説明は少ない。


 署名。指紋。網膜。


 形式だけの同意。


 車に乗せられる。


 手錠はない。


 だが、自由でもない。


「暫定Eランク」


 前席の男が言う。


「未分類。未制御。再現性不明。最低評価だ」


 E。


 最下位。


「明日の実技測定で確定する」


 順位。


 価値。




 山道に入る。


 鉄柵。


 二重ゲート。


 監視塔。


 白い校舎が見える。


 隔離施設の方が近い。


 門が閉まる。


 音が重い。


「ここからは学園の管轄だ」


 男は降りない。


 車は去る。


 静寂。




「ようこそ」


 声。


 振り向く。


 白衣の女。


 眼鏡。


 目の下に濃い隈。


 徹夜明けの顔。


 端末を抱えている。


「私は観測担当」


 声は平坦。


「あなたの」

「危険度、不明だから」


「俺はEランクらしい」


「暫定。測定までは最低評価」


 感情はない。


 事実だけを並べる。


 彼女は歩き出す。


 俺は後を追う。


 廊下は白い。


 足音が小さく響く。


「この学校は順位で全てが決まる」


 白衣の背中が言う。


「寮。設備。発言権」


「分かりやすい」


「合理的」


 教室の前で止まる。


「二年C組」


 扉が開く。


 視線。


 二十数人。


 腕章の色が違う。


 金。


 赤。


 青。


 俺の腕は灰色。


「編入生だ」


 担任が言う。


「暫定Eランク」


 ざわつき。


「E?」


「初めて見た」


「事故枠か」


 笑い。


 俺は何も言わない。


「席は後ろ」


 歩く。


 肩がぶつかる。


「悪いな、E」


 悪くなさそうな顔。


 席に座る。


 前の席の男が振り返る。


 金の腕章。


「何ができる?」


「分からない」


「は?」


「俺にも」


 沈黙。


 窓際。


 白衣の女は端末を見ている。


 こちらは見ない。




 昼休み。


 廊下に出る。


「なあE」


 三人。


「試していいか?」


 早い。


「明日が測定だろ」


「待てない」


 赤い腕章の男が手を上げる。


 空気が震える。


 衝撃波。


 避けられない距離。


 死ぬ。


 そう判断する。


 恐怖はない。




 世界が。


 わずかに、ずれる。




 衝撃波が逸れる。


 壁が抉れる。


 粉塵。


 沈黙。


「……今の」


 赤い腕章の顔が固まる。


 俺は立っている。


 無傷。




 足音。


 白衣。


 彼女が近づく。


「廊下での私闘は禁止」


 淡々。


 赤い腕章たちは散る。


 彼女は端末を見る。


「空間歪曲、再発」


 小さく記録する。


「再現性は」


「分からない」


「……そう」


 眼鏡を押し上げる。


 沈黙。


 周囲に誰もいない。


 彼女は一歩近づく。


「あなた」


 声がわずかに低くなる。


「昨日より、安定している」


「そうか」


「ええ」



「やっぱり」


 小さい声。


 端末に視線を落とす。


 すぐにいつもの顔に戻る。


「明日、全員の前で測定」


 事務的な声。


「そこで順位が確定する」


「Eのままかもしれない」


「それはデータ次第」


 彼女は背を向ける。


「私は観測するだけ」


 それだけ言って歩き出す。


 だが。


 角を曲がる直前。


 一瞬だけ。


 こちらを見る。


 期待している目だった。


 すぐに消える。


 廊下はまた静かになる。


 明日、順位が出る。


 Eのままか。


 それとも。

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