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リア充の異世界放浪旅〜陽キャは異世界でも有能です〜  作者: 絶望的メガネ
スカー王国篇

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三十一話 機転

残像を残す速度で駆ける。

剣の軌道を読ませぬように、相手を伺うように走り回る。

その速度は稲妻の如く。


「お前は単純だよ」


そう声だけ残し、アレフは目の前から過ぎ去った。

居なくなったと思えばまた現れ、また消える。

巨躯の周囲を回り続けるアレフをアルガンは捉える事は出来ない。

ーーだがその速度を無に帰す事が出来る瞬間がある。


「ッ!!」


異能による瞬間加速。

この瞬間だけは速度で負ける事は無い。

たとえ相手があの人類最強だったとしても。


「これを待ってたんだ!!」


アレフはアルガンの拳が眼前まで迫る瞬間にしゃがみ込み、巨躯の股を抜け背後に回った。


「貴様の攻撃食らったところで、大したダメージにはならない」


そう豪語するアルガンをみてアレフは高らかに笑う。


「はっはっは!! それは面白い冗談だな」


「……?」


意味が分からない。

そう顔に書いてあるかのような困惑顔を見せるアルガン。

実際の感情はその表情の通り困惑だ。


実はアルガンは道に迷い、ガルガンの戦闘に遅れていた。

それも少しの時間ではない結構な時間迷っていたのだ。

そもそも魔族であるアルガン達がここ人族領に来るには大海を越えるか魚人領を越えるか獣人領を越えなければならない。


どちらも人族とは友好的になるため歩み寄ろうとしているがそのすべては失敗に終わっているらしい。

つまり人族に危害を与えるつもりはなく、寧ろ守ろうとする。


以下の理由からアルガンは初めて木の生い茂る森に来たのだ。

当然土地勘などある筈もなく適当に国を目指していたところ逸れてしまったのだ。


長い時間をかけ国についた時、目の前には身体中傷だらけのガルガンの姿があった。

アルガンはすぐに理解した。

それはガルガンが幾ばくの攻撃を耐え続けた証拠だと。


双子であるアルガンはガルガンの肉体強度を持っている、つまり意味を成さないのだ。

だから不思議だった。

アレフの異様な自信が。 


刹那、アレフは影を残す速度で足を振り上げた。


それと同時に甲高い音が響いたーー気がした。

下腹部に猛烈な痛みを抱きその痛みに耐えきれず蹲る。


「ギッ!?!?」


つい声が漏れるとアレフは悪魔の様な笑みを浮かべながら近づき見下していた。


更なる追撃が来ると理解したアルガンは咄嗟に頭を守るも狙われたのは……金的だった。

股間を蹴り上げ、それに合わせて自然と体が浮く。


男ならば避けては通れぬ痛み。

金的、それを集中的に攻撃されるのは想像を絶する痛みであることは簡単に想像できるであろう。

たとえそれが凄まじい肉体強度の持ち主だとしても。


「痛いか? 勿論痛いよな」


「ぐっ……」


アルガンは悶えながら必死に腕を振っているがそれは乱暴で異能も乱れ、形もままならないまま無我夢中で空を殴っていた。


「さっきのガルガン、つまりお前の兄は身体中のどこ斬っても全然刃が入らず効いちゃいなかった。それはあいつに正確に傷をいれる隙が無かったことが原因だが、その隙を効果的に痛みが入る点を集中的に狙い続けちまえば、作れる……!」


アレフは再度その隙に股下に何度も潜り込み金的に剣を当てる。

肉体の強度は股間にも適用されているらしく刃は通らない。


「お前の異能は恐らくーー否、確実に瞬間加速と言えるだろう。つまりそれ以外の時間は硬いだけの一般人ってことだ!! その弱点を補えなけりゃ、俺には勝てねぇよ!!」


アレフの斬撃はアルガンの股間を集中的に狙い、やがて白い泡を吹きその場に倒れた。

ガルガンの仇をとるという目標は無惨にも儚く散った。


倒れたアルガンの首に剣先を突き立て力一杯押し込んだ。

首元から血が噴き出し、この戦いが終わる……筈だった。


手応えを感じない突き、違和感を感じ剣先に目をやるとそこには蹲りながらも剣を握るアルガンの姿があった。

やがてその剣をへし折り、アルガンは立ち上がった。


「異能を使えない時間が弱点だって言ったよな」


「ああ、そう言ったが……」


「じゃあそんな弱点、握り潰してやるよ……!」


アルガンは何かに気づいたかのように、そう笑った。


ーーー


「『与えろ』」


透のその一言により、カーマインはみるみるうちに"熱"を取り戻していった。

それと同時に透は体力が枯れ、その場で気を失った。

恐らく異能の過剰使用による疲労だと思われる。


「この事件を予期した事といい、どうやら僕は君に助けられることが多いみたいだね」


最強ゆえに頼られることが多い彼は誰かから助けられる経験に乏しかった。

だからこそ"たった"二回の助力はカーマインの中では "たった"では無かったのだ。


「ライナ、僕はあの悪魔を止めに行く。君は透を死守しろ」


「わかりました」


熱を取り戻したカーマインは緋色の髪を靡かせそう言い残し、あの悪魔、ドゥーベの元へ向かうのだった。


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