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リア充の異世界放浪旅〜陽キャは異世界でも有能です〜  作者: 絶望的メガネ
スカー王国篇

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第二十五話 読み合い

このスライム……粘性のある身体を持ち、撓りを利用した一撃や再生する際のエネルギーを利用した攻撃が非常に厄介だ……!!


更に3本目の腕を生み出し再生エネルギーを利用し、速度を上げた一撃。

二本の腕を弾いてもこの腕があるとうまく攻撃に繋ぐことは叶わないだろう。


「突破口を見つけろ……!!」


何か……何かある筈だ……。


「今……トリックがあると考えたよなあ?」


「……っ!?」


思考が読まれたのか?

いや、この程度なら予測は可能か……。

俺が先程の勢いを失い、攻撃をせずこうやって様子見の一手を選ぶ要因を予測したんだ。


「残念ながらトリックはねえよ、お前はそうやって七眼英傑が目の前に現れても考えるのか? 弱点があるなんて考えは甘えなんじゃねえのか? お前自身が変わらなきゃいけねえんじゃねえのか? 少なくとも今の状態じゃその女は守れやしねえ。お前は負け組のまま終わるぜ?」


乗ってはいけない。

相手は俺の出方を伺っているのだ。

俺も切り札を隠し持っていると、そう睨んでいるのだ。だからこそリュートの思惑通りに動いてはいけない。

それは用意された敗北への一本道だからだ。


とはいえこのままでは埒が明かない。

時間を稼ぎ援軍を待つというのも愚策だろう。

五の眼であるドゥーベも九割九分この国に侵入してきている。

となればこんなところに戦力を割くのは悪手もいいところだ。


仕掛けるべきだ。

炎系統の攻撃のみを使おう。

それでひとまず切り札は隠しておける。

俺の武器は【再生能力】だ。

限界まで追い詰められ、油断したところを突く……!


俺は炎の灯っている剣をスライムの方向に振り、空気を斬った。

そして小さくこう唱える。


「『飛べ』」


炎の斬撃はホロホロと幻想的な火花を散らしながら黒いスライムの元へ飛ばされた。

スライムはそれを弾こうと殴りかかる。

俺は続けて唱えた。


「『燃えろ』」


既に燃えやすいものは少ない体力の消耗で燃える。

逆説的に同じ量の消耗ならば更に強く炎が上がるのだ。


炎の斬撃はその場で燃え盛りスライムに燃え移った。

スライムはその場で溶け出し、抵抗もさせぬまま灰へと変化させた。

手から伸びていたスライムから引火するのを防ぐためか、リュートは手持ちのナイフでスライムを切り捨てる。


木材で出来た床に燃え移るのを防ぐ為にすぐに『消えろ』と唱えた。

少し焦げ臭い空気が漂う空間、スライムという障壁を失ったリュートが立っていた。

リュートは睨んでいた。

透を、目の前に立つ宿()()を。


「後はお前だけの様だな」


「調子に乗るな……!!」


リュートは再度手から黒いスライムを出し、人型を形成した。

だが腕の無い攻撃方法の無い人型だ。


あれはこいつの最も恐ろしく、速く、重い一撃……!


「『蘇烈黒粘突(ネクロス)』」


再生するその肩からは形成途中の右腕が見えた。

だが次に視えたその腕は完全に拳まで形成し、俺の眼前まで迫っていた。

反応速度上昇の効果で咄嗟に剣で防ぐも、下から跳ね上げるような拳の軌道に翻弄され、弾かれ、手元から離れてしまった。

金属音を鳴らし、俺の剣は少し離れた位置に落ちてしまった。

すぐに取りに行こうと向かおうとしたが、俺は気づいた。


ーーこれはリュートの仕込んだ罠だということに。


すぐにリュートの方へ視線を向けると、形成途中の左腕がスライムにある。

……ビンゴだ。

俺は即座に拳を握り肉薄した。

スライムの挙動に少しの迷い、戸惑いが見えた。

俺の動きを予測出来なかったのだろう。


「『燃えろ』そして『燃えるな』!!」


右腕の拳に炎を灯し、俺の腕が直接燃えないように保護する。

そして放つ。

俺の全身全霊の拳を、黒く光る禍々しいスライムへと。


「俺も技名欲しいなぁ!!」


考えろ!!

俺のこの一撃の名前を!!


ーー刹那、一つの言葉が浮かび上がる……!!


「いっけえええ!!『燃ゆる煌拳(ファイヤーパンチ)』!!」


小学生のセンスを存分に発揮したそのネーミングとは裏腹に、正義の光を孕んだその拳は命を刈る邪悪なスライムへと届く。

触れたと同時に炎が燃え盛り、スライムの粘性のある身体に捩じ込まれた。


「ガアァァァァァ!!!」


俺がその腕に更に尽力を注ぐと、その炎はスライムの体内で更に燃え滾り、埋め尽くした。

限界を迎えたその身体は爆散し、ヘドロの様な黒いスライムを撒き散らした。


「チッ……」


リュートは後退りをしている。

俺は剣を拾わずに肉薄する。


今ここで倒す……!!

絶対に逃さない……!!

その思い胸に俺は動く。

右腕を振り上げ拳を構える。


炎を灯す体力はもう残っていない。

だがこれで終わりだ。

異能に頼り切りな奴は痛い目を見る。


「これで……!!「終わりだと思ったか?」」


俺の言葉に被せてリュートが喋った。

自分が追い詰められている状況なのに笑ったのだ。


「この程度で俺が負けると、そう思ったんだな?」

「ーーッ!!」


「お前は勝機(チャンス)を見たんじゃない()()()()()()()()んだ。 お前は都合の良い餌に釣られた魚なんだよ!!」


リュートの右手が俺の鳩尾に照準を合わせた。

なぜ頭部を狙わないのか、それは簡単だ。

腹部のが簡単に狙えるのに殺傷能力が高いからだ。

わざわざ即死させる必要なんてない。

殺しさえすれば、死に方などどうでも良いのだ。


「死ねぇぇ!!」


脳が即座に危険信号を出す。

転散はネタが割れている以上対策されるだろう、剣で弾こうにも肝心の剣が無い。

俺は出来るだけ即死しないように簡素な木材の床に飛び込む。

だが勿論そんな事では逃れることは出来ない。


「『甦絶黒粘砲(カダヴェーレ)』」


瞬きの間すら許さないその洗練された一撃は体内のモーターを無惨にも踏み荒らし、貫通した。

欠損した内臓から、酸っぱく血生臭い液体が喉を逆流し駆け上がる。

口腔内の血反吐を吐き捨てようとしても押し出す空気が無い。

熱い、内臓が焼けるように痛い。


やがて黒いスライムは飽きたらしく俺をその一本の槍から引き抜き、地面に捨てた。

リュートが俺に唾を吐き捨て、ライナの方へ向かう。

俺は心の中で唱えた。


『治れ』


みるみるうちに身体は再生していく。

身体中から緑色の光を発しながら至る所を治してゆく。

万全の状態に戻った俺の身体は即座にリュートを探した。

そこには黒いスライムをゆっくり厭らしく近づけ、下衆な笑みを浮かべるリュートの姿があった。


殺意を感じ叫びそうになるも必死に声を抑え、剣を探す。

どうやらリュートは既に剣を通り越していた。

これは見せられた勝機(チャンス)ではない、慢心から生まれた(チャンス)なのだ。


音を立てないように忍び足で近づき、剣を拾う。

ほんの金属音も立ててはいけない。

相手はプロだ、プロなんだ。

もうこんなチャンスは無いかもしれない……。

ーーここしかないんだ。


剣を拾った俺はすぐに走り、リュートの背後を取る。

音で気づくも、もう遅い。

俺はリュートの目の前にいた。

そして俺の剣はリュートの鳩尾を突き、貫いていた。


「グハッ……」


黒いスライムは力を失い原型を保てなくなる。

リュートはその場に倒れた。

リュートは驚いた顔をしていた。

だって自分の手で仕留めたはずの人間が剣を自分の腹に突き立てていたのだから。

安心して力が抜けたのと同時に異能の影響で体力を失い俺もその場に倒れた。

リュートは血を吐きながら語りかける。


「……な……んで…………グフッ……」


「……俺の異能だよ」


「……クソ……が……」


リュートの方向に首を動かす。

左手で刺された部分を押さえるリュートの姿があった。

身体が動かない。

でも勝ったのだ、ひとまず自分の役割は終えられただろう。

じきにライナがアレフを助けに行くだろう。

もう俺の仕事は無い。


そうやって目を瞑ろうとした時、リュートに動きが見えた。

よく観察するとリュートが右腕からヒョロヒョロと短い紐を生み出している。

俺はそれが黒いスライムであることに気づいたが身体が動かない。

そのスライムが俺の方へ伸びているのが分かる。


「……お前の……負けだ……!」


リュートは最後の力を振り絞り少量のスライムを生み出したのだ。

そのスライムは俺の首へ着実に近づいていた。


ーーその時、足音が近づいているのが聞こえた。

カチャカチャと金属音のような音も聞こえる。

特徴的な音だ。

俺も聞き覚えがある。


「死ね、クズ野郎」


リュートは首に剣を突き立てられ、死亡した。

その剣の持ち主はライナだった。



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