皮肉屋 Joker
【笑いとは、地球上で一番苦しんでいる動物が発明したものである。】
フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ
ヨルペイアン大陸
旧フォレンス王国(現ヨルベイアン連合国参加国)
エイザルス地方・バエルグヘイム村
グール侵攻より五百数年前
村の司祭と村人数人の死体が中央噴水広場に転がっていた。
その枯れた噴水の上に宙に浮いている若い女がこの世と思えないほど激しい怒りの表情で動かない村人たちを見つめていた。
「貴様ら!!!全員死ぬがいいわ・・・私は何をしたというの・・・憎い!!」
若い女は恐怖を誘う金切り声で悲鳴を上げた。
「私はただ・・ただ・・・わからない能力を持って生まれただけなのに・・・それを貴様らが・・・私の家族を・・・あああ・・すべてが憎い・・・」
若い女の手から黒い炎のようなものが出ていた。
「暴れるのはそこまで魔女め!!」
白地に赤く教会のシンボルである飛び立つ赤い鳩とフルプレートアーマーを着た若い騎士が大剣を両手で握って、噴水広場の前に立った。
「貴様!!!私は魔女じゃない!!・・・私はただ・・・私はただ・・・ああ・・・憎い・・・貴様が憎い・・・」
「言い訳はいい・・・神の敵め!!この聖騎士、ローラン・レ・パシェーが貴様を葬る!!」
「私は何も悪いことしてない・・・私は悪くない・・・貴様ら教会が憎い・・・ああああ・・・誰か助けて・・・」
「神の慈悲を与えてやろう!!」
「貴様らの神の慈悲がいらん!!!貴様らが憎い・・・私の家族を・・・」
「救済された貴様の家族の元へ送ってやろう!!」
若い女が反応する前に聖騎士が飛んで、女の左肩から右脇腹までを一気に切った
「貴様・・・憎い貴様を呪う!!・・・私の命を奪った貴様が永遠に彷徨うように・・・貴様だけは絶対に死なん・・貴様だけは生き残る・・・貴様だけは永遠の時を歩き・・・ずっと一人でな・・・生き地獄だ・・・」
「馬鹿なことを抜かせ!!」
「ははははははは・・・貴様は老いることなく、この世が終わるまで生き続けるがいい・・この世が終わっても・・・貴様だけが残るわ・・・はははは・・・」
女の体が枯れた噴水に鈍い音と共に落ちた。恐ろしい笑顔のままで絶命していた。
滅亡した旧バネゾラ王国
モレカイポ湖沿い
世界最大魔石採掘場近辺。
最前線・連合軍モレカイポ基地
鮮血姫の到着より1日前。
公同正教会高速飛行船から最強の聖騎士であるローラン・レ・パシェーとその12代目の従者、黒髪の20代前半のベレモン司祭が降りてきた。
「ようこそ、レ・パシェー聖騎士殿、従者殿、私は司令官のペイン・バステオン大将です。」
「副司令官のシャナー・オーヴイル中将です。」
人間と魔族の司令官コンビが出迎えた。
「どうも・・・へええ・・驚いた・・最近まで犬猿の仲だったのはずのお二人は何で仲良しごっこしているのか?」
「いい加減にしてくださいよ・・・レ・パシェーさん・・・それと私は従者のジョアン・ベレモン司祭です、両司令官方、よろしくお願い致します・・・教皇聖下からも手紙を預かっております。」
従者のベレモン司祭が自己紹介がてらに騎士の止めに入った。
「いいえ、我々はその言葉を気にしてません・・今はこの世界の運命がかかっている戦い・・」
オーヴイル中将は無表情の顔で答えた。
「答えないならいいよ・・・取り合えず自殺願望者どもはどこにいる?」
「あなたと隊長になる方以外、司令塔で待機しています。」
バステオン大将は若干怒り気味に答えた。
「なんだ・・・隊長はまだ来てないのか?・・どう俺が隊長やろうか?!な?」
「黙っててくださいよ・・レ・パシェーさん・・・ここは教会じゃない・・・皆があなたの煽りの言葉に耐性を持ってないよ・・」
「教会内でも俺の言葉でなぜか切れる輩が多くてさ・・ベレモンちゃん、理由知ってる?」
「冗談はそこまで・・・あなたは副隊長になる・・・そしてコードネームは皮肉屋です。」
オーヴイル中将は珍しく軽蔑とも怒りとも受け取れる表情をしながら話した。
「案内せい!!聖騎士様の通りだ!!!」
聖騎士のくだらない発言を無視して、魔法自動車へ乗るのを促した後、司令塔へと出発した。
日本語未修正。
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