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85. ロストフォレスト

 アルタと共にロストフォレストに到着した俺たちは、森の入り口でドライアドのライアに出迎えられた。

 

 「楓様、アキラ様。お久しぶりです」

 「ライアさん!本当に神出鬼没ですね」

 「植物たちが教えてくれますから。それで、私に用とはなんでしょうか?」


 ライアさん、話が早すぎて怖い。


 「この前、日本酒を作ってもらったと思うんだけど、そこから蒸留酒を作れないかなと思って」

 「その蒸留酒というのはどのようなものなのですか?」

 「蒸留酒は水とアルコールの沸点の差を使ってアルコール濃度を高めたお酒なんだ。アルコールの沸点が78.3度、水の沸点が100度だから、80度くらいの温度でお酒を温めて、その蒸気を冷やして液体に戻すと作ることができるんだ」


 「それは美味しいのですか?」

 「正直、美味しい。そして、いろんな果物と砂糖で甘いお酒を作ったり、料理にも使えるんだ」

 「なるほど、それは作るしかないですね」


 「今回は日本酒の米麹からだから、米焼酎ができる。ブドウを発酵させて蒸留するとブランデー、麦芽から作るとウィスキー。保管する樽の木でも味も香りも変わるのでこだわり始めたら無限にこだわれる」

 「それはそれは、ふふ」


 ライアさんの目が怪しく光っている。この世界の長命種の方々はやることができると喜ぶ傾向があるな。


 「麦は里にあるから、後はホップがあればビールも作れると思う」

 「ホップとはなんでしょう?」

 「香りの良い植物なんだけど・・・流石にわからないな」


 俺の知識もそこまで深くない。でもビールがあると葉隠の里でも人気が出ると思う。ああ、この体が13歳じゃなければ俺も飲めるのに!俺がお酒を飲めないことに絶望を感じているところにメーティスさんが話しかけてくる。


 『マスター、材料・製法については私が答えることができます。ソラの分体をライアに渡し、直接会話する許可を頂ければ詳しく説明できます』


 なんということでしょう。メーティスさん愛してるぜ。


 『私もマスターのお役に立てて光栄です』


 ということで、ソラちゃんに分体を作ってもらい、ライアさんに渡した。


 「なるほど、そういう植物なのですね。湖の辺りに自生している気配を感じます。捜索隊を出しましょう。」

 「捜索隊?」


 「お集まりなさい」

 「「「「「チュー」」」」」」

 

 ライアさんの召集に応えて5匹のハツカネズミが現れた。ライアさんの指示でハツカネズミたちが捜索に旅立っていく。


 「ライアさん、この子たちは?」

 「チーズを盗もうとしたネズミたちです。今はチーズを報酬にさまざまな物を調達する捜索隊となっています」


 ハツカネズミたちもライアさんのチーズに手を出すとは恐れ知らずな・・・。まぁ、報酬でチーズをもらえるのでWinWinなのかもしれない。ハツカネズミたちがホップを探しに行っている間に蒸留装置を説明していく。


 「火で加熱が必要なのですか・・・トレントや私たちドライアドは火が苦手なのです」

 

 大変申し訳なさそうにライアさんが伝えてくる。火が使えないと蒸留ができな。


「それでは、蒸留はチカトで受け持とう」


 アルタが名乗り出てくれた。俺たちはライアさんから日本酒を受け取り、チカトへ戻った俺たちは、アルタの家の納屋で蒸留装置を作ることにした。大きな装置を作る前に試作器を作る。

 二つの鍋を用意し、鍋の蓋の中央にそれぞれ穴を開ける。魔素を操って使ったパイプをその間に取り付ける。ざっくりだが、これで完成だ。一方に日本酒を入れて火にかける。もう一方は日本酒を入れた鍋よりも下に設置して、パイプが滑り台のように空の鍋へつながるようにする。後は、パイプを冷やすために水遁でパイプの周りを冷やす。しばらくするとポタリポタリと液体が空の鍋に落ち始めた。

 

 「成功したみたいだね」

 「これが蒸留酒というやつなのじゃな」

 「そうだよ。飲んでみる?」

 

 俺以外皆成人(なんなら2000歳以上)なので、皆で味見することになった。少ないがコップに注いで皆で回し飲みする。もちろん俺は飲まない。


 「くぅ。喉が焼けるような酒精じゃな。米の香りも残っておる」

 「ふむ、これもうまいな。だが、我は日本酒の方が好きだな」

 「ふわぁ。おいひいれふね」


 ギアナはお酒に弱いようだ。こんなので商人をやっていけるんだろうか?


 「うまい・・・な」


 口数の少ないアルタが口を開くほどのお酒ができたようだ。アルタが、この蒸留器を元に、もっと大きなものを作ってくれるということになった。


 「あら、みなさんお帰りになったのね。これは何かしら」


 アマンダが帰ってきた俺たちを見つけえ近づいてきた。できた蒸留酒を飲んだアマンダは、美味しいと喜んでいた。


 「ねぇ、アキラくん。葉隠の里にはこれと同じくらい美味しいものがたくさんあるのかしら」

 「あるよ。チカトのミルクで作ったパンだったり、フルーツ牛乳だったり、チーズたっぷりのピザ、カレーに唐揚げ」

 「それは全部あなたが教えたって聞いたわ」

 

 アマンダがふふふと微笑む。ちょっと怖い。


 「それでお願いがあるんだけど、ミルクを使った料理を色々と教えてくれないかしら?」

 「そんなことならお安い御用さ。だけど、一つお願いがあるんだ。交換条件ってことでどうかな?」

 「お願い次第かしらね」


 さすが、チカトの村長。しっかりしている。俺のお願いは二つだ。


 「今後、チカトにも多くの観光客がくると思う。その時のために宿屋と食事屋をこの村に作って欲しいんだ。あと、ぶつぶつ交換ではなくてガウスでの支払いができるようにしてほしい」

 「葉隠の里が大きく変わろうとしているのを見てきました。それも活気のある里へと。それをチカトにもということかしら」

 「チカトのミルクのおいしさをもっと多くの人に知ってもらう良い機会だと思うんだけどどうかな?迷惑だったら強制はできないけど」

 「もちろん、やりますわ。村の皆も自分のお乳を飲んでもらえるのは嬉しいですからね」


 だから言葉のチョイス!とはいえ、アマンダの了承も得られたので、ここがサイクリングロードの休憩地点になりそうで嬉しい。であれば、全力でうまいものを作れるようにしなければ!俺は気合いを入れてミルクを使った料理を思い出すことにした。

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