8. ヴィリジアンヴィレッジ
8話目です。
意外と順調に書けている気がします。
回復の湧水から歩くこと約2時間。
俺たちは、ヴィリジアンヴィレッジの前までやってきた。
日の傾き加減から、4時くらいだろうか。
道中ゆっくりと景色を見ながら、歩いてきたため、それほど疲れてはいない。
途中に、一本の角をもつうさぎの魔物「ホーンラビット」が数匹見られた。
友好のスキルが効果を発揮したのか、襲われることはなかった。
主食が草なため、近づかなければ、積極的に襲ってこないと、メーティスが教えてくれた。
もちろん、写真を撮った。しかし、距離が離れているせいで、焦点距離40mmでは画面の中にちょこんといる程度だった。望遠レンズがあればよかったのだが、持っているのは20-40mmの広角よりのレンズだけ。
そうそう、レンズ交換式のカメラであるため、レンズの交換ができるはずと思って、調べたところ、
持っているレンズが20-40mm F2.8だけであるため、今は交換できない(取り外しもできない)ようだった。
この世界で、他のレンズが手に入ることなどあるのだろうか?
おいおい、調べていこうと思う。
撮影とスキルの検証を挟みながら、村まで辿り着いたわけだが、
村の入り口には、2人のエルフが立っており、こちらを見ていた。
2人とも簡素な貫頭衣とズボンではあるものの、そこはエルフ。とても美形でいらっしゃる。
そして1人は20代くらいの男性、もう1人は、60代くらいのナイスミドルだった。エルフだから実際の年齢はわからないけどね。
なんと話しかければ良いものやら。そもそも、言葉が通じるのだろうか?などと
考えていたところ、向こうから話しかけられた。
「カゲノ アキラ様ですね?お待ちしておりました」
なんと流暢な日本語ですこと。というか、俺の名前を知っている?
俺の驚いた様子がわかったのか、さらに2人目が言葉を続ける。
「巫女様より、三創神様の御使がこの村を訪れる。その名はカゲノ アキラ様である。丁重に本殿にお連れするようにと命じられております」
なるほど、本殿というところに、巫女様がいて、神託か何かで、俺が来ることを知っていると。
これは、ミコト様の計らいだろう。
みるからに怪しい人物が、エルフの村を訪ねて受け入れられるとも思えない。大抵のファンタジーでは、エルフは森と共にあり、他の種族と関わりを持ちたがらないはずだ。神託がなければ、捕まって監禁からの拷問、または、村に入る前に殺されていてもおかしくない。言葉が通じなければ尚更その可能性が高かったことだろう。
そうならななかったのは、ミコト様の根回しのおかげなのだろう。
言葉が通じるのは、メーティスのおかげだったりするのだろうか?
もしくは、ソラが翻訳機能持ってるとか?
『ガウスの言葉は、マスターの世界の言葉に酷似しています。三創神の言葉を元にしていると伝わっています。』
メーティスさんが解説してくれた。
なんと、神様が日本語で話していたから、この世界の公用語はほぼ日本語らしい。
ご都合主義というよりは、日本の異世界ものが大好きなミコト様のせいな気がする。
英語が苦手だった、俺にとってはありがたいことなんだが、異世界感がちょっと減った気がする。
ちなみに、このやり取りの間、ソラちゃんは右肩から左肩に移動して頭の上に登り、また右肩に降りてきていた。
どうも、意思を持ったことで、自分で動けるようになったのが嬉しいらしくぽにゅぽにゅと俺の体で遊んでいた。
かわゆいのぉ。
「それでは、巫女様のところへお連れ致しますので、一緒にきていただけますか?」
「わかりました。よろしくお願いします」
ちなみに、右のイケメンエルフが村長のドルフさん。
左のイケメンエルフが、村唯一の戦士のダーシュさんと言うらしい。
本殿に行くまでに、村について聞いてみたら、村の人口は約50人。平均年齢700歳とのこと。
エルフの平均寿命が800歳なので、かなり村の高齢化が進んでいるようだ。一番若いのがダーシュさんで、約600歳とのこと。人間で言うところ60歳くらいのイメージだろうか。村長は、まもなく800歳になるとのこと。
いやはや、エルフはすごいね。
村の中央の通りを通って、世界樹に近づいていくと、登り階段が見えてきた。
「マジかよ」
思わず口から漏れた。
本殿に続く階段が、長く続いていることよりも、その光景に驚いた。
階段の入口から、本殿まで、赤い鳥居がずっと続いていたのだ。
伏見稲荷大社の鳥居を思い浮かべてもらえるとわかると思う。
超巨大な大木である世界樹に続く赤い道。ちょうど左から夕日が射してきているため、幻想的な雰囲気がさらに増している。中腹あたりに、ソラちゃんを置いて撮影したら楽しそうだ。焦点距離20mmで、下から見上げるようにソラちゃんに寄って、後ろの鳥居をいれる。夕日によって少しだけ赤く輝くソラちゃんはとてつもなく絵になりそうだ。そんなことを妄想しつつ、今は本殿に向かっている最中なので、撮影は控えておいた。
「アキラぁ、ここ綺麗だねぇ」
ソラちゃん。わかってるねぇ。あとで撮影しにこようね。
【撮影のすゝめ】(注意:あくまでも作者の主観です)
伏見稲荷大社の鳥居は撮影しに行きたい場所の一つです。
鳥居が続いている光景を撮影する際に、広角レンズを使うと長く遠くまで続いているように撮ることができます。
(その分、鳥居と鳥居の間隔が広がって映るので、注意です。)
これは、広角レンズのもつパースペクティブ(遠近感)を強調する力です。
「広角レンズはパースがつくから上手く使わないと」とか言うと、なんか知ってる人っぽくみせることができます。
アキラが焦点距離20mmで撮影しようとしたのは、ソラちゃんが小さいためです。近づくと、背景が写りにくくなるので、できるだけ広角の20mmを選びました。たぶん、鳥居は3つくらいしか写らなさそうですw
女性のモデルさんだったら、長く続く赤い鳥居がとても映えるでしょうね。
余談ですが、このパースペクティブの対となる言葉が、「圧縮効果」です。
これは、望遠レンズを使ったときに使われる言葉です。
望遠レンズで遠くのものを撮ると、遠近感が少なくなります。
鳥居が続いている光景を撮影すると、鳥居と鳥居の間隔が狭くなったように映ります。
どちらがいい写真が撮れるかですって?
自分がいいと思ったらそれがいい写真です。撮りたいように撮るのが一番ですね。