68. 砂塵の墓所
俺たちは砂漠のダンジョンに向かって進んで行く。今回はガンザスはラクダに乗って移動する。俺に気を使わずラクダで移動してくれと頼んだからだ。ラクダの全速力は40km/hにもなる。ちなみに俺は師匠を背負ってダッシュ中である。
砂漠の夜は冷えると同時に魔物の活動時間でもある。
それ故、道中が順調だったかというとそうではなかった。
サンド=ラグに次ぐ会いたくない魔物のバジリスクに遭遇した。バジリスクは巨大な鶏に毒蛇の尾を持つ魔物だ。蛇部分の毒には石化の効果がある。強い魔物は、大抵の刃物を弾く。なので、ガンザスがバジリスクの正面で気を引き、俺はバジリスクを撮影する。
「おい!、その撮影ってやつはまだ終わらないのか!!」
「なかなかいい写真が撮れないんだよ」
「頼む、早くしてくれぇ〜」
アルティメットカウントを出したかったが、そう簡単に出せるものではないようだ。
実際、いい写真を撮るためには、野生動物の撮影と同じく、魔物の撮影も生態を把握した上で撮影ポイントを決めて待ち続ける必要があるのだろう。
もう少し粘りたかったがしょうがない。
「起動」
俺は忍者刀になった如月を構える。
「駿脚」
一気にバジリスクの尾である蛇の頭に肉薄して一閃。
ガンザスのロングソードでは擦り傷すらつかなかったバジリスクの鱗がゼリーを切るようにスパッと両断。蛇の頭がぽすっと砂地に埋まる。
ユニークスキル撮影者は、武器化するために撮影する必要があるが、武器化したレンズは必ず魔物にとっての有効打になる。撮影によって取り込んだ魔素を解析して刀身を最適化しているとメーティスさんが教えてくれた。
尾を失ったバジリスクが痛みで怒り狂っている。
ヘイトが俺に向いた。ガンザスから俺の方へ体を回して、両羽を大きく開いて威嚇してくるバジリスク。
そんな隙だらけの行動を見逃すわけもなく。
「悪いな。先を急いでるんだ」
バジリスクの首をスパッと切り抜ける。血が噴き出し血の雨が降り注ぐ。
俺は、如月を振り抜いた勢いのままバジリスクから離れる。
「バジリスクまであっけなく倒しちまった。サンド=ラグとバジリスク両方に遭遇するのも稀なことなんだが、その両方を1人で倒せるのはSランク以上の冒険者でも何人いることやら・・・アキラ、お前は本当にすごい奴だな。ラクダの全速力と並走できる時点で今更か・・・」
俺は、バジリスクの血が止まったところで、ソラちゃんの神空間へ収納。
「さあ、ダンジョンへ急ごうぜ」
師匠と桔梗からかけられている制限のせいで、今の俺の力は16分の1になっているってことは内緒にしておこう。
「俺たちが今目指しているダンジョンなんだけどな、砂塵の墓所と呼ばれている。2000年から3000年前の王の墓所らしいんだが、多くの魔物の棲家になっていて、冒険者でも近寄らない場所になっている」
「そんな場所になぜアラジンは向かったんだ?」
「わからねぇが、魔法のランプは砂塵の墓所で見つかったと聞いたことがある。それが関係あるのかも知れねぇな。もうそろそろ見えてくるはずだ」
ガンザスがいう通り、目の前に他の砂丘よりも二回り大きな砂丘が見えてきた。
よく見ると中央に周囲よりもより黒く見える部分がある。月の光の届かない入り口のようだ。砂塵の墓所の周りには岩場がちらほらあり、その中の一つの近くに拠点を作る。ラクダは連れていけないからこの場に置いていく。魔物から逃げることができるように繋いだりはしない。タープを張って日陰ができるようにし、多めに水と食べ物を与える。
俺たちも、バジリスクの肉を使って晩御飯を作る。
バジリスクはどう見ても鶏肉だ。であれば作る料理は決まっている。
一口大に切り分けたバジリスクのもも肉に塩・胡椒を振って揉み込む。そしてすりおろしたニンニクとパウダー状のクミンとターメリックをまぶして10分ほど味を染み込ませる。その間に、焚き火台を組み立て、炭に火をつける。贅沢に葉隠産のオリーブオイルをたぷり鍋に入れて180度まで加熱する。味の染みたバジリスクのもも肉に軽く小麦粉をまぶして、熱した油に投入する。じゅわ バチバチバチといういい音が響く。大喰らいな師匠がいるからどんどん揚げていく。
醤油がないのが残念だが、大豆さえ見つかればドライアドのライアさんが作ってくれるはずだ。などと思いながらソラちゃんの神空間から取り出したのは人によってはそのまま食べてしまうというほどの中毒性を持ったソース:マヨネーズだ。卵と米酢とオリーブオイルで作った一品だ。ライアさんが米酢の試作品ができたと聞いてフクさんに即作ってもらった。葉隠でも唐揚げにマヨネーズが常識になりつつある。マヨラーが現れるのもそう遠くない未来だと思う。
そうこうしていると、米が炊き上がり、唐揚げができた。千切りにしたキャベツを皿に敷いて、唐揚げを並べて端っこにマヨネーズを盛って完成だ。
バジリスクの唐揚げ定食
この世界、強い魔物ほどうまい。これは期待できる。
「「「いただきまーす」」なのじゃ」
「俺たち砂塵の墓所に挑むんだよな・・・そうだよな?」
「ガンザス。腹が減っては戦はできぬという諺があるんだ。ダンジョンは目の前にあるんだし、まずは腹ごしらえしようぜ」
まずは、そのままバジリスクの唐揚げを一口。ジュワッと肉汁が口の中に広がる。いい感じにスパイスとニンニクの香りが口いっぱいに広がり旨みが後から追いかけてくる。
「うま!」
その後、マヨネーズをつけてパクリ。
「うわ、最高」
その様子を見ていたガンザスも一口食べる。
「うまいな。白いご飯ともよく合う」
師匠とソラちゃんは無言で食べてるよ。
多めに作っておいてよかった。
「それでガンザス。ダンジョンの中はどうなっているんだ?」
「ほとんど情報がないんだ。魔物の巣窟になっているってことくらいだ」
「じゃあ、臨機応変ってことだな。ちゃんと休んで朝から突入するか」
「それがいいだろうな」
その夜はそれぞれ休むことになった。




