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65. サンド=ラグ 5

「楓、ソラたち食べられちゃったねぇ」

「そうじゃな」


 もちろん、わざと食べられたのじゃが・・・

 妾たちは今サンド=ラグの腹の中を歩いておる。


 ガンザスを保護するためじゃ。

 ガンザスのやつが喰われたのを放っておくと、ダンジョンとやらに案内してくれるものがいなくなるのでな。瀕死状態であれば妾にかかれば回復させるなど造作もないが、死んでおったらどうにもならぬ。


「さて、早く見つけねば溶けてしまうしの」

「ソラたち溶けちゃう?」


「安心せい。妾が魔素で保護しておる。妾たちが溶けることはない。がガンザスは別じゃ。早く見つけてやらねばの」

「うん。そうだね」


「しかし、こやつの腹の中は広いのぉ」


 サンド=ラグの体の構造がどうなっているかは知らんのじゃが、そこかしこに溶け残った冒険者の装備が落ちておる。しかし、今のところ消化液のようなものでてきておらぬ。はてさてどうなっておるのやら。



「楓」

「なんじゃ、ソラ」

「あそこで戦ってるのはガンザス?」


 戦っている。そうじゃな。つまりはそういうことじゃ。

 サンド=ラグには寄生しておる魔物がおるのじゃな。そして其奴らが丸呑みされた獲物を食べ、その排泄物がサンド=ラグの養分となる。そういう仕組みなのじゃろう。


「数が多くて面倒じゃな」


 葉隠流忍術は妾が里のものたちへ教えたものじゃ。エルフたちにも使えるように調整してある。そして妾が使うのはその元となる術じゃ。


「九尾秘奥 風花」


 桜の花びらが周囲に舞う。


 この体は尻尾が一つしかないので見せられぬが、本来はもっと妾の体が神々しく光るのじゃ。ちなみに、その光は演出であって術の威力にはなんら影響はないのじゃが。

 強者は演出にも手を抜かぬものなのじゃ。


 花びらの一枚が寄生魔物に触れる。

 瞬間ヒルのようなナマコのような寄生魔物が炎に包まれ消滅する。


「おい、おいおいおい。なんだこれ」

「ガンザスよ。よく生き延びておった」


「じょ、嬢ちゃん。なんでここに」

「お主を守りにきたのじゃ」


 舞い散る桜の花びらがガンザスを避けて寄生魔物たちへ降り注ぐ。


 シュバ、シュバ、シュバ


 一瞬の炎がわずかな音をたてて魔物を焼却していく。

 その炎の色は白か薄い桃色か、一瞬の炎が舞い散る花びらをさらに美しく彩る。


「やはり、この体では威力が落ちるのじゃな」


「・・・・・・・」(いやいや、何この魔法、普通にありえないだろ。)


「さて、そろそろ出口が開きそうじゃな」


 ガンザスを魔素で包む。魔素を見ることができないガンザスには何が起こっているのかわからないじゃろう。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『雷遁(ライディーン)一閃(ストラッシュ)』



 皐月(50mmF1.4)の武器化したロングソードによる斬撃は、サンド=ラグの分厚い皮膚を切り裂き、そして雷によってその切り口を焼き焦がす。これでサンド=ラグの再生能力も発動しない。忍者刀よりも長いその剣身は、皮膚の厚みを貫き奴の腹の大きな穴を開けた。


「遅いのじゃ」

「アキラ。ソラ楽しかったよぉ」

「・・・・・・・」


 なぜかガンザスが青い顔をしている。


「師匠、俺頑張ったんだよ?」

「こんな魔物に苦戦するようではまだまだじゃ」


「ソラはアキラ頑張ったと思うよ」

「ソラちゅぁ〜ん」


「で、ガンザスはなんであんな顔してるの?」

「知らぬ」


「おい、アキラ。このお嬢ちゃんはなんなんだ?あんな魔法見たことも聞いたこともないぜ。花びらが魔物を燃やし尽くすなんて・・・なぁ。おかしいよな?」


「あーーー、うん。ガンザス落ち着いてくれ」


「こちらは、俺の師匠。葉隠の里の奥にある九尾稲荷大社のさらに奥。世界樹の洞の中で世界を守っている九尾の狐である楓さま(の分体)だ」


「はぁぁぁぁ!?九尾の狐〜?この嬢ちゃんが、あの世界を滅ぼす魔獣と恐れられている九尾の狐だとぉ!」


「世界を滅ぼすとは失礼なやつじゃ。まぁ、そう呼ばれておったこともあるがの。それに、この体は分体じゃ。そして、こやつを鍛えておるのは妾じゃ」


「ああ、アキラがそんなに強いのに納得がいったぜ」

(それなら、魔法のランプの魔神も・・・いや流石にそれは無理だろう。)


 グォ


 そろそろ、雷遁の効果で麻痺していたサンド=ラグが起きそうだ。


「それじゃ、このデカブツにトドメを刺すとするか」


 モード α

 換装 睦月(20−40mm)

 起動(アクティベート)


 睦月は刃が出し入れできる手甲となる。


「葉隠流忍術 火遁」


「うわ、武器が急に現れて・・・燃えている?魔剣の類か?」

 ガンザスがいちいち驚く。


 俺は、雷遁一閃で開けた穴から奴の中に入る。

 短い剣でも体内から斬り裂けば大ダメージを与えられるのはこの世の道理。

 心臓も脳みそもどこにあるかわからない砂ミミズにトドメを刺すには内部からバラバラにするしかない。


「オラオラオラオラオラオラオラ」


 刃に魔素と炎を纏わせて切る切る切るキルキルキルキル。

 睦月は近接パワータイプ。


 内部からこれだけ切り裂き焦がされたらひとたまりもないだろう。

 サンド=ラグの最後の命の気配が消えた。


 最後のほう、ちょっとハイになり過ぎてしまったが、誰も見ていないのでセーフだ。


 そして、実はこの空間肉の焼けたうまそうな匂いで充満している。サンド=ラグは超高級食材らしいし、栄養の乏しい砂漠でこの巨体を維持するために栄養を死ぬほど溜め込んでいるので、脂の乗った肉になる。


 口から外に出て、ソラちゃんの神空間へ格納格納っと。


 ガンザスの目が点になっているが、知ったことではないのだ。

 しのぶものと書いて忍者。目立ってない。目立ってない!


 今日は疲れたから、食事にして休むことにしよう。

 サンド=ラグの肉を切り出し。塩・胡椒を揉み込む。

 そして、焚き火台を組み立てて、炭に火遁で火をつける。

 炭火でじっくり焼いていく。


「はぁ。もう驚き疲れたぜ。とにかく、助かった。ありがとう」

「ガンザス。いいってことさ、さぁ食おうぜ」


 サンド=ラグの肉は和牛のようにとろける柔らかい肉。

 豚肉と和牛の間のような味で旨味が強い。これは本当にうまいな。

 まあ、あの姿を見てなければもっとうまいと思えたかもな。


 俺たちはサンド=ラグの肉を堪能してテントを張って寝ることにした。


「そのテントってのいいな」

「ククルさんところで売る予定だから買ってくれよな」


 しっかりちゃんと宣伝しておいた。

 さて、明日に向けてしっかりと休むとしますか。

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