6. スキル確認
6話目です。
書いていて、綺麗な景色を見に行きたくなりました。
そして、自分の語彙力のなさに驚きました。
先生、語彙力が欲しいです。
カメラを構えた俺は、電子ビューファインダーを覗き、レリーズボタンを押してシャッターを切った。
カシャ。
こ気味良い音が響いたあと、背面の画面に撮影結果が表示される。
なるほど、スキルになっても、普通のカメラと同じように使えるみたいだ。
撮影した写真を確認する。
試しに撮っただけなので、画面が白く飛んでいるし、斜めに傾いているしでちゃんと撮れていなかった。
ちゃんと設定して撮ってみよう。
周りの景色は絶景だ。青く澄みわたり、太陽の光を受けてキラキラと輝く湖とその背後にそびえ立つ雄大な世界樹。地球では撮れないファンタジー感あふれる景色だ。テストだけでなく、ちゃんと記録しておきたいと思った。
湖と世界樹の全体を一枚に入れるために、ズームリングを回し、一番広く映る超広角の20mmに設定する。
先ほどの写真が白く飛んでいたということは、光が入りすぎているということ。そこで、カメラのダイアルを使ってF値を2.8から8まで絞る。超広角なので、わかりづらいが、絞ることで、ピントの合っている部分が増えるので、写真全体がきっちり写るようになる。
あとは、画面が傾かないように意識して、シャッターを切る。自分のくせだが、レリーズボタンを押す動作で右に傾くことが多い。そこも気をつけて何枚か撮影した。
空の青さと、世界樹の青々として雄大な緑、湖の青からエメラルドに移り変わるグラデーションが美しい。それが見事に1枚の写真に収まった。この満足感が写真を撮る醍醐味だ。自己満足なんだけどね。
撮影をしていて気がついた。写真を撮るたびに、自分の中に何かが溜まっていく感覚がある。
写真を再生しようとすると、目の前に画面が現れた。
画面の大きさは・・・、結構自由に変えられるみたいだ。これを他の人が見れるのかどうかは、まだわからない。周りにはひとっ子ひとりいないしね。
フォルダには「ヴィリジアンヴィレッジ」と表示されている。自動的に名前が着くのは非常にありがたい。
フォルダ意識を集中させると、フォルダが開いて、今撮った8枚の写真が現れた。
一番構図が決まっている一枚を選ぶ。
大きな画面に表示された。そして、右側にコントロールパネルが出てきた。
超有名な写真編集ソフトにそっくりだ。
その項目の中に、みたこともない「魔素」と書いてあるチェックボックスがあった。
「魔素」のチェックボックスをONにしてみる。
「うぉ!」
画面上に薄紫のもやのようなものが現れた。そこらの草木、石、全てのものにまとわりつくように見える。
中でも世界樹の周りは紫色が非常に濃く現れている。どうやら、色の濃さは魔素の濃さを表していて、対象によって変わるみたいだ。
スキル上で「魔素」が見れるということは、この世界では魔素が非常に重要なのだろう。
魔法なんかと関係がありそうだ。
「!!」
何かの気配を感じた。後方の林の先10mといったところか。どうやらこちらを見ている。
これは、気配察知のスキルが発動したということだろう。どうやら常に発動しているパッシブスキルのようだ。
あ、動き出した。結構な速度でこちらに近づいてくる。
5m離れたところで止まった。犬のような見た目だが、大きな牙が特徴的である。
確実に肉食獣だ。しかし、襲ってくる気配はない。
斥候の1匹なのだろう。仲間が集まるのを待っているのかもしれない。
あとで確認するために、素早く1枚撮影し、鞄を持った。
そして、次の瞬間、全力で村の方向に逃げ出した。
逃走のスキルが発動したようだ。このスキルは逃げ足を強化するスキルだ。
普段の3倍以上の速度が出ている。
隠密のスキルも合わせて発動している。
一瞬でも見失えば、見つけにくくなる上に、匂いでの追跡も振り切れる。
獣の追いかける速度よりも、俺の逃げ足の方が速い。
気配察知で距離が開いたことを確認し、岩陰に隠れた。
獣はこちらを見失ったようだ。林の方へ帰っていく。
「ふぅ、助かった」
逃走スキルのおかげで村までの距離も近づいた。
まだ、友好スキルの効果はわからないが、撮影者のスキルの確認とその他のスキルのことはわかった。
スキルの検証は完全ではないが、村に向かうことにした。
ヴィリジアンヴィレッジまでは、あと7、8kmというところだろうか。
水も食料もない。逃走による全力疾走のために、疲れもある。
暗くなる前に、村まで辿り着かないとアウトだろう。
幸い、太陽の高さ的に、正午を過ぎた頃だろうか。
村までの道のようなものも見つけられた。この道沿いに行けば到着できそうである。
念の為、隠密は発動させたまま、歩くこと1時間ほど。
スキルを使い続け、気配も探りつつの移動はかなり消耗する。
村までの道程は半分ほど残っている感じだ。
それにしても喉が渇いた。
先ほどから、左手には湖が広がっている。
とはいえ、その水をそのまま飲むほど迂闊ではない。
生水は非常に危険なのだ。
村に着くまで我慢できるとは思うが、
村についてすぐ水が手に入るとは限らない。
最悪、捕まるなどのケースも考えられる。
ここらで、水分の補給がしたいところだ。
湧水などがあれば、いいのだが・・・
そう思ったら、気配察知が反応した。
前方5m、道の左側に湧水の気配がある。
生き物以外にも適応されることに驚いた。
気配を感じたところに行ってみる。
草をかき分け、大きな岩の下の割れ目の部分に直径20cmほどの水たまりがあった。
よく観察すると、中央からポコポコと水が湧いており、湖に向けて細く流れ出ていた。
普通にしていたらまず見つけることはできなかっただろう。
「気配察知スキルはすごいな」
どうやら、生き物の気配は自動的に感じることができるが、その他のものは、思い浮かべると周囲を探索できるようだ。
さすが、神様のおすすめスキル。ミコト様、Good job!です。
ちょうどいいので、ここで休憩することにした。
近くの大きめの葉っぱをちぎり、丸めてコップ状にする。
そっと湧水を掬って飲む。
生き返る。そして、疲れが少し軽減された気がする。
「カメラ」
手元にカメラが現れる。焦点距離を40mmにして、湧水を撮影する。
フォルダに「回復の湧水:ヴィリジアンヴィレッジ南」と書いてある。俺がそう思ったから名前がついたのだろうか?
画面を開いて、「魔素」を見えるようにする。
すると、湧水には、大量の魔素が含まれていることがわかった。
これが、疲れが軽減した理由なのだろう。
いい場所を見つけることができたようだ。
ついでに犬に似た獣の写真も呼び出して確認する。
フォルダには「グレーウルフ:魔獣」とある。
これはどういうことだろうか?俺にはあの獣についての知識はない。
ということは、撮影したものの名前が自動的にフォルダに記載されるということなのか?
これって、「鑑定」に近い能力なのでは?
名前だけでもわかるのはありがたい。
グレーウルフの写真を表示し、「魔素」を見てみる。
濃いめの紫が全身を薄く覆っていた。
俺が敵う相手ではないのは確かだが、この魔素の量・色などで強さが表現されているのではないだろうか?
比較対象があれば、検証できるそうなのだが・・・
【撮影のすゝめ】(注意:あくまでも作者の主観です)
綺麗な景色は思わず写真を撮りたくなりますね。
風景を撮る際には、F8まで絞ると隅々までピントのあった写真が撮りやすくなります。
それ以上絞ると、「光の回折」の影響で解像感が減ることが多いです。
ここでも、設定は絞り優先のAモードで大丈夫です。
三脚を使うとより構図を意識した写真が撮りやすくなります。