51. 桔梗とミニ楓
結論から言おう。
俺はこの世界の真理に到達したのだ。
雰囲気に流されると痛い目を見る。
なぜなら、隣にいる美女に盛大にイジられているからだ。
「クアッハッハハ、まさか我に向かって「準備は整った。さぁ、ラストダンスの時間だ」キリ( ̄^ ̄)と言い放つとは、小僧、お主はなかなか面白い男だな」
お気づきだろうか?そうこの美女はブラックドラゴンさんです。
「のう、エルフの娘よ。かっこいいではないか。さぁ、ラストダン・・・スの時間・・く、ふは、ははははは。ひー、ふふふ。我に向かって、ふはっ。耐えられん」
あの戦いがどうなったかって?
俺があのセリフを言った途端。ブラックドラゴンが吹き出したのだ。
俺とギアナはポカーンとなっていた。いや、荷馬車の人たちもだ。
どうやら、逆鱗への攻撃でバーサーク状態になったが、撮影者の撮影で魔素を吸収されることでほぼ正気に戻りかけ、そこに、如月の一撃を受け、痛みで完全に正気に戻ったらしい。
正気に戻ったのだが、面白そうなので、もう少しバーサーク状態のフリをして遊ぼうと思っていたところに、あのセリフが飛んできた。
ある意味クリティカルヒット。笑いに耐えきれなくなったブラックドラゴンが吹き出した。
いきなり笑いだしたブラックドラゴンに呆然とする俺たちを前にみるみる美女に変身するブラックドラゴン。
そして、今に至る。
そりゃさ、第一制限解除なんていう少年漫画の胸熱展開を自分がやってるんだ。テンションがおかしくなってもしょうがないじゃないか。
「ほれ、もう一度言ってみるのだ。かっこよかったぞ?この千年でこれほどまで我の心を揺さぶった者はおらぬぞ。ヌフフ。ふは」
「もう許して・・・」
なんか、厨二病を拗らせていた頃の日記が姉に見つかって読み上げられるくらい恥ずかしい。姉なんていないけど。
「ふははは、お主は面白い。ついていけばもっと面白いものが見られそうだな」
「それって、拒否権は?」
「ない!・・・あーーーー、なんだったけか? 我が友達になってあげてもいいんだからね?」
あ、こいつ絶対ミコト様と繋がってるわ。
「使い方間違ってるぞ。それ。で、名前は?」
「ブラックドラゴンだが?」
「・・・いや、種族じゃなくて名前・・・」
「ブラックドラゴンは我しかおらぬ。ゆえに名前などはいらぬ」
「でも、ブラックドラゴンって呼びにくいし」
ブラックドラゴンは少し考え・・・
「では桔梗と呼ぶがいい」
「じゃあ、よろしく桔梗」
「うむ」
「ちょっとアキラくん、少しいいかな?」
真っ青な顔のギアナが少し離れたところから手招きしている。
「あの人ブラックドラゴンなんだよね?」
「そうだけど?」
「そうだけどじゃないよ。ブラックドラゴンは楓様と同じくらい強い神獣なんだよ」
「へー、そうなんだ。でも本人がついてくるって言ってるし」
「いやいやいやいや。急に襲ってきたりしたら大変だし、絶対勝てないんだよ?」
「聞こえておるぞ。エルフの娘よ」
「ひっ」
「お主も狐の眷属であろう。お主らを襲うなどそんな面倒なことはせぬ。狐のやつがうるさいからの」
急に後ろから声をかけられたギアナが腰を抜かしている。
そんなに怖いかな?
師匠とどっこいなので、あまり怖さを感じない。
「それで、アキラよ。狐のやつには連絡はできるのか」
「ああ、できるぞ。ソラちゃーんお願いできる?」
「いいよぉ」
「ほう、そのスライムはしゃべるのか!ついこの前間違って踏んでしまったスライムに似た気配だが、秘めたる魔素量が段違いだな」
そういえば、こっちに飛ばされる時に、ミコト様が魔改造スライム1号をブラックドラゴンの近くに置いたと言ってたっけ?やっぱり、ミコト様と繋がってるじゃん。
そうこうしている間に師匠に繋がった。
「遅いのじゃ。妾には頻繁に連絡せいと言っておったじゃろう」
師匠、まだ2日目しか経ってないです・・・。
「お主がおらぬとつまらぬのじゃ。早く帰ってくるのじゃ」
どれだけ暇なんですか!? そういや俺が来るまで暇すぎてほぼ寝てたな。あの人。
「よぉ。狐の。元気にしておったか?」
「その声は、黒いのか?なぜお主がアキラのそばにおる」
「いや、たまたま空を飛んでたら、お前の気配を纏った小僧がおったのでな。興味本意で話しかけて見たのよ。お前、弟子を取ったんだってな?珍妙なのを育ててるじゃないか。この小僧を気に入ったんでな、一緒に旅をすることにした」
「黒いの。それは許さぬ。許さぬのじゃ」
「見たところ、まだまだ鍛え甲斐がありそうじゃないか。ふふふ」
「ダメじゃ。アキラは妾の弟子なのじゃ」
なんかこの二人古くからの知り合いっぽい。そして桔梗が恐ろしいことを言ってる気がする。
「安心せい。取って食ったりはせんわ。じゃが味見くらいはするかも知れぬなぁ」
桔梗が師匠を煽り倒している。
今は美女の姿なので、ちょっとエロく聞こえるが、多分これガチで齧られる案件の匂いがする。
「・・・妾も、妾もアキラについて行くのじゃ」
師匠は世界樹を守らなければならないので、世界樹から離れられないはず・・・と思っていたら急にソラちゃんから黒い煙が噴き出し、そして、師匠が現れた。
「この2日、ただ暇をしていたわけではないのじゃ。ソラの分体生成を解析して、ソラの中にある妾の魔素を使って分体を作る術を身につけたのじゃ」
わー。さすがは神獣。さらっとすごいことを・・・
そこにシビれる。憧れるぅ。(現実逃避)
「・・・師匠、なんか縮んでない?」
「ふむ、ソラの中の魔素で維持するのでの、あまり大きいと維持が難しくなるのじゃ」
目の前には、8歳くらいの女の子になった師匠が立っている。
師匠のアイデンティティたる双丘は見る影もなく、つるぺただ。
「アキラよ。お主、なんだかとても失礼なことを考えておらぬか?」
「いや、全く」
「これなら、お主の旅についていけるのじゃ」
そう言って、師匠が抱きついてくる。
はたから見ると完全に事案だと思うが、相手は2000歳を超える神獣。これが合法ロリというやつか・・・。
俺はそっち側ではないので、どちらかといえば元の師匠の方がいいのです。そう、温泉とか!温泉とか!
というわけで、成り行きでこの世界の最強種2体が旅の道連れになりました。
先ほど助けた冒険者さんたちが遠くの方であわあわされています。
近づいても敵認定されない・・・・よね?
「とりあえず、王都に入って落ち着こうか」
「さ、賛成〜」
ギアナが震えているのは見なかったことにしよう。
慣れるしかないし。
「よいしょ、これでよしなのじゃ」
師匠が俺をよじ登って肩車。師匠の頭にソラちゃんがぴょんぴょん。
どこのブレーメンの音楽隊だよ!よじ登りムーブがナチュラルすぎて普通に受け入れた自分にびっくりだわ。
「よし、行くのじゃ。アキラ」
肩車状態で師匠がぴょんこぴょんこ跳ねる。
そういえば、師匠って2000年以上も神の頂から出たことなかったんだっけ。
外の世界が楽しみで仕方ない様子。まさに童心に帰るってね。
「まるで本物の童のようだな」
「黙れ、黒いの。弟子は師匠を大切にするものなのじゃ!」
「へーい。それじゃお客さん行きますよぉ」
「なんで君はそんなに平然としてるのよ!」
そりゃ、こっちは一回死んでファンタジー世界に飛ばされた身だ。
つまり、驚き疲れたのさ!




