46. 旅立ちの準備
ミコト様から依頼を受けてから 1ヶ月が経った。
ドルフさんに聞いたら、エルノスタ大洞窟は、神の頂から西北西の方角にあるエルノスタ大火山の麓にある洞窟ということだった。そこまでは、まず南にあるトリプレットデザートへ行き、その西にあるヘリアーレイク王国、そこから北西へ進みゾナーポートという港町へ行く。そして、海路で北上するとエルノスタ大火山に到着する。
順調に行って、3ヶ月はかかる道のりだという。
それはもう、入念な準備が必要だ。
街に着くまでは、魔物を警戒しながらの野宿。
食料は干し肉と硬いパン。資金は道中で調達が必要。移動は徒歩。
冗談じゃない。せめて野宿と干し肉オンリーは回避したい。
そこで、ダーシュとアズと共にキャンプ道具の開発をしていた。もちろん、修行は継続進行中である。
実は、俺はキャンプ道具には結構詳しいネットキャンパーだ。いつかキャンプに行きたいとキャンプ道具を調べてはため息をつくを繰り返し今に至る。そのため、道具の知識だけはある。道具の知識だけはある。大事なことなので2回言っておく。
俺にはソラちゃんの神空間収納があるので、ぶっちゃけ重量や容量を気にせずなんでも持っていける。しかし、一般の冒険者はそうはいかない。この世界のアイテムボックスの上限は 1個。大きさに関わらず一個である。それには抜け道もあり、カバンなどの中に入っていても、カバン一個としてカウントされるため、パッキングできれば、アイテムボックスで持ち運べる。さらにアイテムボックス持ちが希少というのであれば、ほとんどの冒険者は、自分で自分の荷物を運ぶことになる。
つまり、[軽量かつコンパクトを突き詰めつつも、快適さを担保できる最低限の荷物]が最上であるということ。
盗賊であるアズの意見を参考にしつつ、魔力を使うことを前提に、最小限の設備を考案していく。
まずは、テント。一番の大物だが、これをどうするかが重要だ。
2本のポールをクロスさせて貼るタイプの1.5kgを切るテントだ。
テントの素材は村の特産の絹とビッグボアの革。床部分はビッグボアの革を使い、
居室部分は絹を使うことで軽量化を図った。絹は目を荒くしており、通気性を確保している。出入り口は紐で縛るタイプにした。チャックなんてものがないので密閉度は下がるが、仕方ない。そして、床部分。ビッグボアの革を2重に使う。ポイントは、間にビッグボアの町を敷き詰めており、3カ所から空気を送り込むことで、エアマットになる点だ。野宿とは雲泥の差の快適さが確保できる。
そしてここで一工夫。フライシートがマント兼ポンチョとなっている。
二つ折りにして紐で固定することでマント兼ポンチョになる。
素材は、絹。蜜蝋を表面に塗布することで撥水性を持たせている。
特質すべきは、ダーシュの忍術によって、気配隠蔽効果と魔物避け(小)が付与されていることだ。
4本の鍛造ペグ(クナイ)でこのフライシートの四隅を固定することで、テント自体を固定できる仕組みになっている。大人1人と荷物を入れて寝るには十分なスペースがある。
次は寝具。ホーンラビットの毛皮の毛布。薄く軽いが暖かい。3つ折りにして、巻いて縄で縛ると非常にコンパクトにできる。
それから、調理道具。スタック式の長方形コッヘル。浅い鍋と中蓋、上蓋はフライパンとして使える。中に箸とスプーンが収納できる。
熱伝導率が高く軽いミスリル製という贅沢さ。
忘れてはいけないのが、焚き火台。異世界とはいえ、直火はいかん。木の根にダメージを与えたり、火の不始末が火災になったりする。焚き火台があると、コッヘルでの料理もできるしね。折りたたみ式でグリル用の網を載せれる仕様だ。こちらもミスリル製である。500g以下の超軽量だ。
他の装備はこんな感じだ。
ロープ。ミスリルの細い糸と麻紐をより合わせた細くても丈夫にできている。
サバイバルナイフ。刃渡が15cmで峰の部分が鋸状になっていて、鋸としても使える。ミスリル製。
忍者刀。短めの直刀。アダマンタイトを芯に使い、ミスリルの刃をもつ。魔力伝導率の高い武器。
忍び装束(着替え用)。師匠(楓)の毛を編み込んだ布で作った忍び装束。魔法に対して高い耐性を持つ。
ミスリルのインナー(着替え用)。ミスリルの細い糸と絹糸で編まれたミスリル布のシャツとパンツ。靱性が高く、柔軟性に富む。
ミスリルのタオル 2枚。ミスリル布のタオル。吸水性は若干悪いが、丈夫さを優先。
竹筒の水筒。竹の節から節を切り取り、片方に穴を開け、楔で栓をしたもの。
調味料:塩・オリーブオイル・乾燥ハーブ・砂糖・レモン汁・世界樹の雫
もちろん、世界樹の雫は回復薬も兼ねている。
これらを全部バックパックに入れていく。全部で5kg程度に収まった。
Aランク冒険者パーティの一員であった盗賊のアズが満足げに頷いている。
曰く、これは冒険者にとっての革命的な装備らしい。ソロで活動している場合、寝る際の警戒のため、熟睡はできない。しかし、気配隠蔽効果と魔物避けの効果をもつテントであれば、余程の地でない限り、襲われることはないと言っていい。
さらに、四方にロープを張り、竹の板を吊り下げておくと、魔物が来た場合も鳴子が教えてくれる。
そして、装備はこれだけではないのだ。
魔法士のグロスが研究の末完成させた超軽量折りたたみ自転車だ。
重量は驚愕の3.9kg。全てミスリル製。
なんとか、ゴムの木を探し出し、タイヤを作るのが一番大変だった。
構造は至ってシンプル。ペダルはあるが、チェーンもブレーキもない。
ポイントは、ミスリル製であることと、12インチという小さな車輪に刻まれた魔法陣になる。
ペダルを回すと魔力が魔法陣に流れる。その魔法陣が車輪を回転させる仕組みだ。
流す魔素の量でスピードが決まるので、俺の場合、時速60km以上は出すことができた。ギアチェンジ、ブレーキは全て魔力で操作する仕組みになっている。車輪の魔法陣は6段。ペダルの重さにも反映されるという手のこみ様だ。
そして折りたたむと、バックパックにちゃんと入る。
これだけの装備で合計8kg以下。
これもう車とか作れるんじゃない?って言ったら、車とは?とグロスに詰め寄られて、5、6時間ほど働く車について説明させられた。
数ヶ月後にはできてそうで怖い。
何はともあれ、旅立つ準備はできた。それでは、いざ下界へ!!




