115. カタハ村民
俺は西の林に逃れたシロウとカタハ村の人々と合流し、今後のことを話し合うことにした。
「初めまして、アキラと申します。さて、皆さんもすでにお分かりかと思いますが、この国は今ラーオウ皇子とトーキ皇子の間で戦争状態にあります。ラーオウ皇子は、首都クォフカの防衛強化・徴兵・士気向上のための奴隷を各地から集めています。あなたたちはその奴隷としてクォフカへ送られるところでした」
なぜ俺がこんなことを知っているかというと、ハートの屋敷から逃げる前にちょっと書斎へお邪魔して、奴隷献上の書状というやつを見つけたからだ。現場写真にダメおしの証拠。これをトーキ皇子陣営に渡すことで、ラーオウ皇子側への制裁を行ってもらおうということです。それは、奴隷狩りを減らすことにつながり、ラーオウ皇子側の戦力増強を防ぐ役割にもなる。ラーオウ皇子と敵対するトーキ皇子なら、村民を助けてくれるだろう。
「私は、村長のタカイチと申します。我らは、荒れた土地で枝豆とジャガイモを育て細々と暮らしておりました。痩せておりましたが、牛もおりましたので、農耕でしたらなんとか生活をしていたのです。これは、村の再興のために必死に隠し持った枝豆の種です。これさえあれば、なんとか食べていくことができるとです。おっと失礼。村の言葉が出てしまいました。」
枝豆の白く丸い種を掌の上に乗せて見せてくれるタカイチ村長。それにしても枝豆の種って大豆にそっくりだよな・・・・・・。
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大豆?これ大豆じゃん。そういえば、枝豆って大豆になる前の実を収穫したものじゃないか!酒場で枝豆を見た時になんか引っかかってたんだよ。
大豆があれば、醤油が、味噌が、豆腐が作れる。それに、牛!絶対に葉隠に持ち帰りたい。牛と醤油と砂糖に酒でスキヤキ作れるじゃん。醤油作りにどのくらいかかるかわからないけど、きっと作ってみせる!醤油があればラーメンも作れるんじゃないか?やばい夢が広がる。
「タカイチ村長。皆さんは元の村に戻りたいのでしょうか?もっと安全で肥沃な土地を紹介することもできるのですが」
「本当ですか?それは願ってもないことばい」
村長も興奮したら村の言葉が出るみたいですね。
「ただ、一つ条件があります」
「なんでしょう」
顔を引き攣らせて条件を待つタカイチ村長。
「我里、葉隠の里はエルフの里です。今、道の整備などを進めていますので、その手伝いもお願いしたい。それに、湖の対岸には牛鬼の村もあります。人以外の種族とも仲良く暮らすことができますか?そうすれば、皆さんを葉隠の里で受け入れましょう」
師匠には事後報告になるが、醤油がでにないって美味しいものが食べられるのであれば「良いのじゃ〜。くるしゅうないのじゃ〜」って言ってくれると思う。
「もちろんです。我村の者にできることであれば、協力は惜しみません。我らをアキラ様の葉隠の里へ連れて行ってください」
そう言って膝をつき俺に向かって首を垂れる村人さんたち。
「分かりました。少し相談しますので少々待ってくださいね」
さて、まずは師匠からだ。俺はソラちゃんを通した念話で師匠に通話する。
『師匠、聞こえますか』
『なんじゃ、アキラ』
『村人全員の救出完了です。そして、村人は大豆を持ってます。大豆があれば醤油が作れます。そしたら、今まで以上に美味しい料理を作ることが・・・。村人たちを葉隠の里に迎え入れようと思うんだけど、どうかな?』
『うまいものがくれるのか!良いのじゃ、良きに計らうのじゃ!』
ですよね〜。さすが師匠。うまいものは正義だよ。
次は、葉隠の里 村長のドルフさんと、里のおふくろフクさんにも連絡だ。30名の村人の受け入れを依頼すると、もっと早くに連絡をよこせと怒られた。なので、奴隷にされそうなところを助けて、いく当てがないということを伝えたら、なんでそれを先に言わないのかと怒られた。どうやら、トリプレットデザートからの観光客がかなり里に来ているらしく、ものすごく忙しいらしい。そういう意味で人手が増えるのは良かったかもしれない。
師匠とシロに戻ってくるように伝えて、村人たちを葉隠の里へ連れていく準備をすることにした。
「タカ爺、難しい話は終わったと?」
汚物は消毒だぁと言って火炎放射器をぶっ放しそうな格好のシロウがタカイチ村長に話しかける。
「リンの姿が見えんっちゃけど」
「・・・・シロウか。リンは奴隷を捉えた証拠として1人王都へ連れて行かれてしまったとよ」
そう言って肩を落とすタカイチ村長。どうやら、捕まった村人はこれで全員ではなかったようだ。
「そのリンっていうのは、誰なんだ?」
「ああ、アキラ。リンは俺の妹ばい。どうにかして助けださんと」
リンはシロウの妹で12歳になったばかりらしい。え?シロウって14歳なの?ケンは15歳ってもっと年上だと思ってたよ。この世界は15歳で成人だからそういうものかもしれないけど、ケンはめちゃくちゃしっかりした兄貴だった。
「アキラよ、待たせたのじゃ」
「ワン」
そうこうしていると、師匠とシロが帰ってきた。フォレストウルフやゴブリン、オークたちはどうしたのかというと、いずれも戦闘民族らしく、戦うのが大好きで撤退を言い渡してもやめなかったそうです。なのでいつでも逃げてO Kと言って任せてきたと。防壁があるとはいえ、街の兵士たちの方が劣勢だったので、ご愁傷様ですとしか言えないです。
村の娘リンの救出については後で考えるとして、俺たちは、葉隠の里に向かうことにした。




