10. 依頼
10話目です。
なんとか2桁に到達しました。
「おい、アキラよ。何を呆けておる」
「あ、いえなんでもないです」
慌てて、楓様の後を追う。
「そろそろ飯の時間でもある。一緒に飯を食べながら話そうぞ。依頼したいこともあるしの」
「依頼ですか?」
正直、今の俺が果たせる依頼などあるのだろうか?
隠れて逃げる&写真を撮るだけ。メーティスさんがいるから鑑定ができるとは言え、攻撃手段なしだとむりなのではないだろうか?
「あの、依頼を受けるのはやぶさかではないのですが、俺、いや、私はですね。逃げることと写真を撮ることしかできないのですが」
「喋りにくそうじゃな。妾に敬語はいらぬ」
「わかりました。じゃなくて、わかった」
「ソラもわかったよぉ」
ソラちゃんを見て楓様が驚いている。
「おお、そのスライムは喋るのかの。しかも、自分の意思があるとは、面白い存在じゃな」
「ソラ、面白いのぉ?」
「ソラちゃんが特別ってことだよぉ」
ソラの言葉遣いがうつった。
「ここが食事の間じゃ」
目の前に、豪奢な襖があり、中から開かれる。
中に入ると、エルフの中居さんが席まで案内してくれた。
美しいエルフの・・・・
いや、貫禄のあるエルフのおばちゃん。
エルフって美形ばかりだと思ってました。
「ほら、あんた。ぼーっとしてないでここに座りな」
ガシッと掴まれて席まで案内される。
「あたしゃフクって言うんだ。よろしくな」
「俺はアキラ。よろしくお願いします」
「あーははは。あんたみたいな小さな子にしては礼儀正しいね」
「ソラだよぉ」
「・・・。驚いた。このスライム喋るのかい!?まぁ、楓様のお客様だからね。そんなこともあるさね」
肝っ玉母さん登場です。
「座るが良い」
「わかった」
楓様と向かい合って座る。
「腹も空いておるじゃろう。まずは飯をいただくとするかの」
「いただきます」
「たーんと食べな」
フク母ちゃんがガハハと笑う。
食事は、麦飯のようなものと、焼き魚、大根のスープ、何かの実のようなものだった。
入っている器は美しく豪華だ。
一口食べてみると、薄い塩味。というか、素材の味そのまま。
空腹だから、なんでもありがたいのだが、この村の最高のおもてなしがこのレベルというのはどうなんだろうか。
味はともあれ、食べれる時に食べるのがサバイバル。
きっちり完食させていただきました。
ソラちゃんも麦飯をシュワシュワと食べている。
お皿と一緒に食べてしまったので、次からは気をつけるようにお願いした。
「さて、腹も膨れたじゃろう。本題に入るかの」
楓様からの依頼というやつか。
「まず、お主のことは、ミコト様より伺っておる。『撮影という不可思議なスキルを持っておる大賢者を使わす、村の窮状を救うように依頼せよ。』との啓示じゃ」
ミコト様の無茶振りが過ぎる。大賢者とか言われても、この世界のことなんてなにもわかってないんですけど。
「村の窮状・・・どいうことなんだ?」
「ふむ、ドルフたちからも聞いていたと思うが、この村は平均年齢が約700歳。50名ほどの村人しかおらぬ。この後、100年も経てば、村自体がなくなってもおかしくない。そうなると世界樹を守るという妾の役目も果たしにくくなるのでな。お主になんとかして欲しいのじゃ。せめて若い者が村に帰ってくるようにしてほしい。どうじゃ引き受けてくれぬか?」
どうやら村の過疎化が止まらないということのようだ。
個人的には、後100年もあると感じるが・・・楓様もエルフも長命種。100年が人間で言うところの10年みたいな感覚なのだろう。『10年後に東京が壊滅します。』と言われると確かに焦るだろう。対策を講じるのは当然だね。
それにしても、すごい魔物の討伐や他国との戦争なんかじゃなくてよかった。まぁ、戦力でなんとかなる案件は、楓様がいればなんとかなってしまいそうだ。
異世界で村興しか。メーティスさんもいるしなんとかできそうだな。
『善処します。』
おお、メーティスさんもやる気だ。
「楓様、その依頼受けようと思う。ただし、条件がある」
「うむ、言ってみるが良い」
「まずは、依頼中の衣食住の保証。それから依頼達成に向けての村の人たちの協力は必須だと思う。後は、この世界で生きていく力が欲しい」
「なんじゃ、そんなことか。良いであろう。まず、衣食住じゃが、ここに住むが良い。村人には、お主に協力するように指示しておこう。フク。すまぬがドルフに伝えておくれ」
「あいよ」
「最後に、この世界で生きていく力じゃが、妾がお主を鍛えてやろう。ふふふ、楽しみじゃの」
楓様が凶悪な顔で笑っているな。これはやらかしたかもしれない。
人外、それも神様と戦うような九尾の狐に修行してもらう。手加減を間違って死ぬなんてことが普通に起こりそうだ。
「今日は、もう遅い、部屋を用意させるゆえ、そちらで休め。ああ、この本殿の外には露天風呂がある。自由に使ってもかわわぬぞ。フク、部屋へ案内してやるのじゃ」
「よし、あんたついてきな」
「ああ、世話になる」
露天風呂があることには驚いたが、これだけ和風の世界だからな。
不思議じゃない。それに今日は疲れた。ゆっくりと風呂に入って、情報の整理をしよう。
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10話目にしてようやくやることが見えてきました。
異世界村興しスタートです。




