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雑感が堆積したもの。

今書いているものが行き詰まってきたので、思考を吐き出す。落書きである。



─机を挟んで人と話した時を思い出して─

 人がモノとして、或いは単なる役割として対峙するとき、お互いまともさの糖衣を被っている。これは当然な話で、それを外しても広がるものはやはり何もない。ただ、私はそれを経験的に知らない。つまり、人が人として、或いは単なる存在として対峙するとき、どんな反応を示すかを具体的に書けない。イメージすることはでき、そこにおいては常に混沌としており破滅と無に向かうと予想しているものの、どうしても生活の匂いは想定できない。

 ところで、美学や悲劇に拘泥する職人には、家がない。しかし、今では拘泥しないことも一つの職人の型としてみられる。「職人のつくるものは常に、否、極端なまでに私的に向けられている」、この考えは私を絶えず掣肘する。少なくとも、公的に向けられたものはもう職人の手にはない。それは同じ人物がつくったといえるが、しかし決して「職人としての」「この」人物がつくったとはいえない。


─螺旋的な堂々巡りを横目にしながら─

 ニヒリズムに対する処方箋は実に簡単だ。その人にニヒリズムが充満していること以上に大きな事実らしきものを提示すればいい。ニヒリズムが厄介なのはあらゆる価値を無価値にするという性質ではなく、なぜそれで自身が立ち行くのかといった反動の問いだ。それならば、こういえばいいのだろう。

 つまり、人間の意味づけや世界が仮にこの瞬間消えてなくなったとしても、自然と宇宙は人間の法則により明示化されずとも、無関係に続くのだ、という隘路だ。これはそもそも、「立ち行く」必要すら消去してしまうし、その選択を迫ることすら無くしてしまう。徹底的な矮小化のため、そんな事柄が擡頭することすら許さないし、事柄に係る論理的な要請も無効化してしまう。だから、「なぜお前はニヒリズムに浸りながら呑気に出来るのか」といわれれば、この思考を経て丸々回避しているだけなのだ。

 だが、これでもニヒリズムが気になるならば、その人はニヒリズムと結婚したのだ。ニヒリズムの容姿は知らないが、添い遂げるだけである。


─昔に物を盗まれたことを思い出して─

 本物を追いかける旅は疲れてしまうから──そしてその過程で自分の偽物具合と、自己欺瞞のすれっからしにうんざりしているから、本物に近いものを見ても、触ることすら憚るのだ。そこでただ、惰性に身を任せていると、心地よくて少し忘れられる。だが、そこでは決してしてはいけないことが一つある。それは眺めることだ。眺めてしまっては、その惰性のぬるま湯の流れから外れてしまうからだ。


─芝居臭い話し方をした時を思い出して─

 個人的に考えていることだ。厳密には、やっぱり知った上で引き受けて滅びるような、演技的なことは不可能だ。少なくともそう思ってしまう。フォルムというのはいつだって、構成や脚本の中に居たのではないのか。自身が演劇的な美になるとは、結末知っていることが不可欠ではないのか。しかし、死を知っているとはなんなのだろう。死の結末や場面は知らないが、その到来は知っている。

 盗賊ならば、自身の死に方もある程度実感を持って想像できるだろうか。牢獄に収監されるか、処刑台で死ぬか、はたまた野垂れ死ぬか。これらは可能性の散らばりを狭めることはできても、確定されない。となると、台本の人物はおろか、その文字すら知りえない。先で幾つかに分かれた、霞がかかった末路がありそうな気がするだけだ。それとも人間というのは、もっと楽観視できて、曼荼羅のように同じフォルムを、無意識のうちに選択できるのだろうか。


─夜中に反芻する人を訝しんで─

 あり得ない耽美な世界を妄想するのはなんでだろうか。それくらい、その人が危険や危機から隔離された生活を送ってきたからなのか。ただ、耽美なものは時間的なもの、続いていくもの、生活などをあまり重視せず、むしろそこに触れるからこそ腐っていくように考えがちだ。つまり、生活などをひっくり返した刹那に永遠を掴むし、その実感の中でピリオドを打つ。果たして、これで自身を劇的にできるのだろうか。それはわからないが、言いしれぬ快感があることは確かだ。こういうものも、冷たくこの場所の読み替えのヴァリエーションだと断言できそうであるが、単なる読み替えとは違って、読み替えてあらわれたものを絶対化する傾向はある。


これではなく、作品を書くべきである。そちらが私のしたい訓練に直結する。

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