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第八話 「怠惰」眠りの時間

ディシェウィキの夜は、街のネオンに染まり、喧騒を増していた。怠惰と崩壊は、裏路地を抜け、フックが教えてくれた地下へのエレベーターの近くまで忍び寄った。


その場所は、街の明るさとは対照的に暗く、冷たい空気が漂っていた。エレベーターの入り口は重厚な鉄の扉で覆われており、その前には何人もの警備員が立っている。さらに、周囲を巡回する機械ドラゴンの姿も確認できた。


「フックの話よりもずいぶん厳重だな。」

崩壊が低い声で呟いた。


「これじゃあ、簡単には突破できないね……どうする?」

怠惰は小声で問いかけるが、崩壊は鋭い目をしながら警備の動きを観察している。


その時、怠惰はあることを思い出した。自分が「怠惰」の力を持つwrodsのドラゴンであることだ。

ずっとだらけた生活をしていたばかりに忘れていた。


「ねえ、崩壊。もしかして、僕の力を使えばいけるかも。」


「お前の力?『怠惰』か……それでどうするつもりだ?」

崩壊が怪訝そうに尋ねると、怠惰は少し不安そうにしながらも、自信を振り絞ったように頷いた。


「ちょっと試してみる。もしこれでダメなら、その時は別の方法を考えよう。」


崩壊は短く頷き、怠惰に視線を送った。「やってみろ。ただし、失敗したらすぐに引くぞ。」


怠惰はエレベーターの周囲にいる警備員たちを見つめ、静かに目を閉じた。そして、自分の内側に眠る力に意識を集中する。


「怠惰よ……全てを包み込み、眠りへ誘え……。」


その声は小さく囁くようなものだったが、不思議と周囲の空気が変わったのが感じられた。


数秒後、警備員たちの様子が変わり始める。


「なんだか急に……眠く……」

一人の警備員が欠伸をし、次の瞬間、その場に座り込んでしまった。


「俺も……ちょっと一休み……」

別の警備員は壁にもたれかかると、そのまま眠り込む。そして、残りの警備員たちも、何かに抗えないかのように次々と力を失い、地面に倒れ込んでいった。


さらに、巡回していた機械ドラゴンまでもが動きを止め、その場で停止した。


「これは……」

崩壊は驚きの表情を見せながらも、すぐに怠惰の肩を叩いた。


「よくやった。今がチャンスだ。」


怠惰は頷き、崩壊と共にエレベーターの扉に向かう。そして、眠り込んだ警備員の一人から鍵を奪い取ると、重たい鉄の扉を静かに開けた。


エレベーターに乗り込み、地下へ向かう二匹。エレベーターは静かに降下し、金属の擦れる音だけが響いていた。


「さっきの力……すごかったな。」

崩壊が感心したように言うと、怠惰は照れくさそうに笑った。


「でも、あんな風に力を使ったのは初めてだったから、ちょっと怖かったよ。」


「お前の力は、敵を無力化するには最適だ。だが、過信するな。油断すれば、奴らも対策をしてくるだろう。」


崩壊の警告に、怠惰は真剣な表情で頷いた。


エレベーターが止まり、扉が開くと、そこには明るい光に照らされた長い廊下が広がっていた。無機質な白い壁が続き、奥にはいくつかの部屋が見える。だが、人の気配は一切ない。


「誰もいない……?」

怠惰が廊下に一歩踏み出しながら呟く。


「いや、そんなはずはない。」

崩壊が後に続きながら言う。


廊下の奥に進むたびに、冷たい空気が肌を刺すようだった。実験室の中にはガラスのケースが並び、奇妙な機械や試験管が所狭しと置かれている。しかし、それを操作する人間の姿はどこにもなかった。


「気味が悪いな……。」

怠惰が呟くと、崩壊は鋭い目で周囲を見渡しながら言った。


「静かすぎる。この施設、何かがおかしい。」


その時、廊下の奥から微かな音が聞こえてきた。二匹は緊張を高めながら、音のする方へと進んでいった。そこに何が待っているのかも分からないまま、怠惰と崩壊は次なる一歩を踏み出した――!

「怠惰」:対象を「怠惰」にさせることができる。させられた相手は急にやる気がなくなる。

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