第六話 喧騒と静寂
ついに怠惰と崩壊はディシェウィキの入り口に辿り着いた。
遠くからでも見えた大都市の喧騒は、二匹がその境界を越えるとさらに鮮明になった。さっきまでの出来事から暗い気分の怠惰と違い、コンクリートの広がる街道は多くの人間で賑わい、カラフルな看板が街を彩っている。カフェや服屋、雑貨店が並び、道端では音楽を奏でる者や笑い声を上げる子供たちの姿があった。
「なんだか、ここだけ別の世界みたいだね。」
怠惰は目を丸くしながら、明るい街の様子を見回しながら言った。
「平和な表情の裏に、どれだけの真実が隠れているか……。」
崩壊は低い声で答えた。彼の赤い目は注意深く周囲を見渡している。その視線がある一つの店の前で止まった。
そこには「D.P.」と書かれた看板が掲げられた店があった。店の中からは楽しそうな笑い声が聞こえ、子供たちが騒いでいるのが見える。煌びやかな商品が並び、平和そうな様子が伺える。
「D.P.company……ここにもその影響があるのか。」
崩壊の声には怒りと警戒が混じっていた。
「どうしてこんなところにまでお店を?」
怠惰は不思議そうに首を傾げる。
「単純だ。人々に信頼され、必要とされている存在に見せかけるためだ。」
崩壊が厳しい表情で言う。
「でも、それならD.P.companyが悪いことをしているって、ここにいる人たちは知らないんだろうね……。」
怠惰は複雑な気持ちで呟いた。
街を進む中で、二匹は注意深くD.P.companyの施設がどこにあるのかを探し始めた。崩壊が目を止めたのは、街の中心部にそびえる高い建物だった。
「おそらく、あれがD.P.companyの施設だろう。規模から見ても、ただの支店ではなさそうだ。」
一見しただけではただのビルに見える建物の前には、厳重な警備の姿が見える。スーツを着た人間の間を、機械仕掛けのドラゴンたちが巡回している。
「どうやって近づくつもり?」
怠惰が不安げに尋ねると、崩壊はしばらく考え込むようにしてから答えた。
「施設そのものに直接侵入するのは無謀だ。だが、入口はひとつではない。情報はこの街のどこかに隠れているはずだ。まずはそれを探す。」
「情報って、どこで探せばいいの?」
怠惰がさらに聞くと、崩壊は自慢げににやりと笑うように口の端を上げた。
「こういう街には、大抵そういう情報を扱う連中がいるものだ。」
二匹はその後、街外れの暗い裏通りへと足を踏み入れた。賑やかだった街の表情が一変し、影のように怪しげな雰囲気が漂う場所だった。じめじめとした路地を崩壊は自分の経験を頼りに、情報屋がいそうな場所を探し始める。
「ここからが本番だ。怠惰、気を抜くなよ。」
崩壊の言葉に、怠惰も小さく頷く。そして二匹は、D.P.companyの真実を探るべく、ディシェウィキの闇へと歩みを進めた――。
裏路地広いね
ビルは20階だて想定。