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第五十六話

ロスタルガに戻り、生と死の門の前につく。

あの戦いを受けても生と死の門は無傷でたたずんでいた。


「じゃあ、行こうか」


生と死の門をくぐった怠惰と崩壊が目にしたのは、一面に咲き乱れるアイリスの花々と、その中心にたたずむ白い光に包まれた美しい竜だった。その竜の姿は、これまで見たどの竜よりも神秘的で、純白の鱗が虹色の輝きを放ち、真珠のような瞳には穏やかな光が宿っていた。


竜は静かに二匹を見つめ、頭の中に直接響くような優しい声で語りかけてきた。


「ようこそ、怠惰、崩壊。私が『希望』です。これまであなたたちを導いてきたのも私です。」


その声は、これまで怠惰の頭に響いていた声と同じものだった。怠惰は驚きと戸惑いを隠せず、崩壊も目を見開いたままその場に立ち尽くしていた。


「あなたたちが滅びの力に立ち向かえるよう、私の力を託しました。怠惰、先ほどあなたの中からあふれ出た光は、私の力の一部。あなたにはその力を完全に受け継いでほしいのです。」


怠惰は困惑しながらも、言葉を絞り出した。


「僕に…希望の力を?でも、僕はそんな大それたことをできるような存在じゃない。ただ怠けたいだけの…」


竜は優しく微笑むように目を細めた。


「それでいいのです。あなたが『怠惰』であることに意味があります。怠惰とは、時に過剰な欲望を制し、静寂の中で心の均衡を保つ力でもあります。だからこそ、あなたに『希望』を託すのです。」


崩壊が腕を組み、不安げに竜に尋ねた。


「希望の力を受け継ぐのはいいとして…『ついでに死者の国を救え』ってどういうことだ?随分軽い言い方だな。」


竜は小さく笑いながら答えた。


「そうですね、少し冗談めいて聞こえたかもしれません。でも、これは本当に重要なことです。死者の国は今、滅びの影響で崩れつつあります。『滅びの光』を浄化したことでその影響は弱まりましたが、完全に元に戻るにはさらに大きな希望が必要です。」


「それが僕たちにできるのか?」怠惰が戸惑いを隠せずに聞き返す。


「できます。」竜は断言した。


「あなたたちにはすでに多くの困難を乗り越える力があります。怠惰、あなたが持つ希望の剣は、新たな未来を切り開く鍵です。崩壊、あなたが持つ力は、世界の再生を助ける礎です。」


竜はその大きな翼を広げ、二匹を包み込むように光を放った。その光の中で、怠惰と崩壊の疲れが癒され、心に新たな活力がみなぎるのを感じた。


「さあ、死者の国の中心へ進みなさい。そこには、『再生の光』が眠っています。それを解き放つことで、この地を本来の姿に戻すことができるでしょう。私は常にあなたたちと共にあります。」


竜は最後にそう告げると、再び光に包まれながら姿を消していった。アイリスの花々が優しく揺れる中、怠惰と崩壊はしばらくその場に立ち尽くしていた。


「…行くしかないみたいだな。」崩壊が肩をすくめながら言った。


怠惰は剣を握りしめ、小さくうなずいた。「うん。僕たちなら、きっとできるはずだ。」


二匹は改めて足を踏み出し、死者の国の中心を目指して歩き始めた。遠く、霧の向こうに不思議な輝きが見え始めていた。それが何を意味するのかは、まだ彼らには分からないままだった。

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