表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/56

第五十五話

「うぉぉぉぉぉぉ!」


闇竜を一太刀で真っ二つににすると、その希望の剣はディスペンサーへと向かう。


怠惰の剣がディスペンサーの胸を貫いた瞬間、死者の国全体が揺れるほどの衝撃が走った。闇を纏う大地が一瞬光に包まれ、辺りには静寂が訪れた。


怠惰は剣を引き抜き、息を切らしながらディスペンサーを睨んだ。「これで…終わったのか?」


崩壊が怠惰の隣に駆け寄り、疲れた笑みを浮かべる。


「やったな、怠惰。あの闇竜も消えたし、あいつもこれで――」


しかし、崩壊の言葉が途切れた。その視線の先で、倒れ込んだはずのディスペンサーが再び立ち上がったのだ。


「フフフ…ハハハハハ!!」ディスペンサーは狂ったように笑い出した。その胸には貫かれた跡が残っているが、血も出ず、致命傷を負った様子がまるでない。


「貴様ら、本当にここがどこだか分かっているのか?」ディスペンサーは杖を高く掲げ、周囲に溢れる闇を引き寄せながら叫んだ。


「ここは死者の国だぞ!!私はすでに死んで来た!死者は死ぬことはない!この私を滅ぼすなど、不可能だ!!」


その言葉に、怠惰と崩壊は思わず顔を見合わせた。


「おいおい、どうする怠惰?コイツ、本当に死なないみたいだぞ?」崩壊が苦い表情を浮かべて言う。


「そんなの…聞いてないよ!」怠惰は額に汗を滲ませながら剣を握り直す。


「いくらここが死者の国だからって、どうしてこんな…」


ディスペンサーの体から放たれる闇が再び周囲を覆い尽くしていく。その闇は地面に染み込み、大地から黒い兵士たちが次々と湧き出てきた。


「絶望するがいい!貴様らの希望など、この私には届かない!」


ディスペンサーは闇の杖を振りかざし、無数の影の刃を怠惰と崩壊に向かって放った。


「くそっ!」怠惰は剣を振るって刃を弾き飛ばしながら叫んだ。「こんなの、終わりがないじゃないか!」


「怠惰、何か考えろ!」崩壊も影の兵士たちを拳で叩き潰しながら叫ぶ。「力だけじゃどうにもならねえぞ!」


その時、再び怠惰の頭の中にあの優しい声が響いた。


「怠惰よ、希望とはただ敵を打ち倒す力ではありません。闇に囚われた者を解き放つ力です。ディスペンサーの心を照らし、滅びの呪縛を解くのです。」


「心を…照らす?」怠惰は呟いた。


「おい怠惰、何かあったのか?」崩壊が振り返りながら問いかけた。


「分からないけど、試してみる!」怠惰は剣を高く掲げ、その刃に希望の光を込めた。



ディスペンサーは怠惰の行動を嘲笑う。「またそれか!希望だの光だの、そんなものが私に通じると思うか?」


怠惰はディスペンサーを真っ直ぐに見つめながら、心の中で祈った。


『どうか、この光が…あなたの闇を打ち消しますように。』



開放(リバレーション)



剣から放たれた光が、ディスペンサーを包み込んでいく。その瞬間、ディスペンサーの笑いが止まり、彼の体が震え始めた。


「な…何だ、この光は…!私の中に入ってくるな!やめろ!」ディスペンサーは苦しげに叫び、杖を振り回して光を払おうとした。しかし、光は彼の闇を浄化するように、ゆっくりと彼の中に入り込んでいった。



「これは…何だ…?」ディスペンサーは震える声で呟いた。その目から一筋の涙が流れ落ちる。「私が…忘れていたもの…希望…?」


怠惰は剣を降ろし、慎重にディスペンサーを見つめた。「もしかして…」


光がディスペンサーの体を包み続ける中、彼の姿が少しずつ変化していった。

ディスペンサーの闇を浄化する光が完全に消えた時、彼の体は静かに崩れ、安らかな表情を浮かべながら消滅していった。その姿は、彼が抱えていた長い苦しみと絶望からようやく解放されたように見えた。


「…終わったのか?」怠惰は剣を地面に突き立て、荒い息を吐きながら呟いた。


崩壊は周囲を見渡し、周囲の闇が晴れていく様子に安堵の表情を浮かべた。


「ああ…終わったみたいだな。奴も、ようやく楽になれたのかもしれない。」


その瞬間、怠惰の体から白い輝きが静かに失われていき、竜人の姿だった彼の体は徐々に元の姿に戻っていった。鎧が消え、剣も再び小さな「希望の剣」へと形を戻す。


「これで…普通の僕に戻れたのかな?」

怠惰は自分の手を見下ろしながら苦笑した。


「お前、竜人の姿も似合ってたぞ?」崩壊はからかうように笑い、怠惰の肩を軽く叩いた。


「でも、お前のそのままの方がらしいな。」



辺りは静寂に包まれ、生と死の門も再び穏やかな光を放ち始めていた。ディスペンサーが消滅すると同時に、彼が作り出した影の兵士たちも姿を消し、死者の国は元の静けさを取り戻していた。


「さて…この後どうする?」崩壊は目の前の道を指差しながら尋ねた。「ロスタルガに戻るか?それとも、このまま死者の国を抜けるか?」


怠惰は少し考えた後、小さく頷いた。「ロスタルガに戻ろう。あの声の主が何か教えてくれるかもしれない。それに…あの都市にまだ何かある気がする。」


「了解だ。」崩壊は軽く肩をすくめた。「でも、帰り道は穏やかだといいな。もう戦闘は勘弁だぜ。」



ディスペンサーとの戦いが終わった今、怠惰と崩壊はロスタルガへと戻る道を歩き始めた。二匹が去った後、死者の国の空には柔らかな光が差し込み始めていた。死者たちの魂もまた、何かしらの変化を感じ取っているようだった。


次に待つのは、いよいよ死者の国の秘密に迫る時かもしれない――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ