第四十九話
ロスタルガに着いた怠惰と崩壊は、街の中を歩きながら「滅びの神殿」について聞き込みを始めた。この街は死者の国の中でも特に古い歴史を持つようで、魂の住人たちが静かに行き交い、霧が漂う石畳の道を冷たい光が淡く照らしていた。
「滅びの神殿…? ああ、それなら街の中央にある巨大な階段の上だ。だけど、あそこは危険だぞ。『滅びの光』が封じられているんだからな。」魂の一人が、怠惰の質問に答えた。
「滅びの光って?」怠惰は首をかしげる。
魂は静かに続けた。「滅びの光は、この死者の国を長年支配してきた恐ろしい力だ。その光はすべてを破壊し、存在そのものを無に帰すと言われている。神殿はその力を封じるための場所だが…誰も近づこうとはしないよ。」
「それを封じたままにしておくことが、この国の均衡を保つ鍵ってことか。」崩壊が腕を組みながらつぶやく。
魂は頷く。「そうだ。だが、最近になって神殿の封印が少しずつ弱まっているとも聞く。その原因は誰にも分からないが…神殿に足を踏み入れるなら、命を懸ける覚悟をしておくんだな。」
怠惰と崩壊はその言葉を聞き、しばらく黙り込んだ後、互いに視線を交わした。
「僕たちには『滅びの神殿』に行く理由がある。あの声に導かれるままに。」怠惰が意を決したように言った。
崩壊は軽く笑って、「だったら行くしかないだろう。だけど、気を抜くなよ。何が出てくるか分からないからな。」と応じた。
その頃、死者の国の入り口付近――。
D.P.companyのディスペンサーが、部下たちとともに不気味な霧の中に姿を現していた。彼は長身の男性で、鋭い目つきと冷笑をたたえ、手に持つ特殊な杖からは赤黒いオーラが漂っている。ディスペンサーは霧を一瞥すると、手元の装置に目をやった。
「どうやら奴らはロスタルガに向かったようだな。」ディスペンサーは装置に映る怠惰と崩壊の姿を見つめながら冷たく笑った。「手間をかけさせる…だが、ここまで来たからには逃がさない。」
部下の一人が問いかける。「奴らが向かっている滅びの神殿…何か特別なものがあるんですか?」
ディスペンサーは鼻で笑い、杖を振りながら答えた。「あの神殿には『滅びの光』が封じられている。もしその力をD.P.の手に収めれば、我々の計画は大きく進展する。奴らが無駄に神殿の封印を解いてくれるなら、それもまた利用できるというものだ。」
「ですが、彼らは強力です。メイカーを倒したと聞いていますが…」部下が恐る恐る口にした。
「心配するな。私がいる限り、奴らがどれほどの力を持とうと問題ではない。」ディスペンサーは杖を軽く振り、霧を一掃するように進み始めた。「さあ、奴らの足跡を追え。遅れるなよ。」
部下たちは緊張した面持ちで頷き、ディスペンサーの後に続いていった。死者の国の冷たい霧の中で、追撃の気配が濃厚に漂い始めていた。
一方、怠惰と崩壊はロスタルガの中央にそびえる巨大な階段の前に立っていた。その上に見えるのは、重厚で威圧的な造りの神殿。石柱には奇怪な紋様が彫られ、まるで生きているかのように冷たい空気を放っている。
「これが滅びの神殿か…」怠惰はその巨大さに圧倒されながらも、一歩を踏み出した。
「気をつけろよ。この雰囲気…中には何かが待ってるに違いない。」崩壊も警戒を強めながら怠惰の後に続いた。
二匹が神殿の入口に足を踏み入れると、冷たい風が背後から吹き抜けた。その瞬間、巨大な扉が重々しい音を立てて閉まり、辺りは闇に包まれた。
「これは…歓迎されてないみたいだね。」怠惰が少し苦笑いを浮かべる。
「だが、引き返すわけにはいかないだろう。」崩壊が剣を握り直しながら前を見据える。
奥からは低く響く音と共に、何かの気配が近づいてくる。二匹の行く手には、さらに多くの試練が待ち構えていた――。




