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第四十八話

怠惰と崩壊は、死者の国に続く暗い道を歩き続けていた。霧が薄くたなびき、道の両側には黒ずんだ木々が枯れ果てた姿で立ち並んでいる。その木々は風もないのに微妙に揺れ、まるで生きているように見えた。怠惰は不気味な雰囲気に思わず背筋を伸ばし、「なんかここ、嫌な感じだよね」とつぶやいた。


崩壊は無言で頷きながら、周囲を警戒するように目を光らせている。彼の重い足音が静寂の中で響き、怠惰はその音に少しだけ安心感を覚えた。しかし、道が進むにつれ、空気はますます冷たくなり、霧が濃くなってきた。


「これ、本当にロスタルガに続いてるのかな?」怠惰は剣を握り直しながら、不安げに周囲を見回した。


そのとき、霧の中からぼんやりと光が現れた。怠惰と崩壊は立ち止まり、光の方をじっと見つめる。やがて光が近づいてくると、それがランタンを持った人影であることに気づいた。


「誰だ?」崩壊が低い声で問いかける。


人影は立ち止まり、静かに答えた。「旅の者か。ここを通るとは珍しいな。」


現れたのは、長いフード付きの黒いマントを纏った老人だった。顔は深い皺に覆われ、目だけが妙に鋭く光っている。彼の持つランタンの光が揺らめき、周囲の霧をかき分けている。


「僕たち、ロスタルガに向かってるんだ。」怠惰が答えた。


老人は微笑むように口元を動かしながら、「ロスタルガへ行くとは、命知らずなことだな。しかし、この道を進むなら、いくつか忠告をしておこう。」と言った。


「忠告?」崩壊が腕を組みながら言葉を促す。


老人は頷き、「この先には『彷徨える亡者の道』がある。その道では、過去に縛られた者たちが現れるだろう。彼らの言葉に耳を貸すな。振り返ることなく進むのだ。そうしなければ、この地に囚われることになる。」と静かに語った。


怠惰は少し不安そうな顔をした。「過去に縛られた者…?」


老人はそれ以上何も言わず、ランタンを高く掲げると再び霧の中へと姿を消した。


「なんだったんだ、あの爺さん?」崩壊が訝しげに呟く。


「でも、言ってたこと、なんか重要そうだよね。過去に縛られた者…振り返るなって…。」怠惰は剣を握りしめながら、再び歩き出した。


その後、二匹はさらに進むと、辺りの景色が不思議に変わっていった。霧の中にぼんやりと人影が浮かび上がり、まるで幻のように怠惰たちをじっと見つめている。声が聞こえるような気がしたが、言葉ははっきりと聞き取れない。


「これが…亡者の道ってやつか?」崩壊が低い声で言った。


「たぶん…でも振り返るなって言われたし…」怠惰は必死に視線を前に向け続けた。


しかし、背後から誰かの声がはっきりと聞こえた。


「怠惰…お前は何をしているんだ。戻ってこい…」


その声は、どこか懐かしいものだった。怠惰は一瞬、足を止めそうになったが、老人の忠告を思い出し、ぎゅっと目を閉じた。


「振り返るな…振り返るな…!」怠惰は自分に言い聞かせながら、崩壊とともに前へと進んでいった。


背後の声がどんどん大きくなり、手を引かれるような感覚すらあったが、二匹は決して振り返らずに歩き続けた。


やがて声も消え、霧が晴れてきた。目の前には、巨大な黒い門が現れた。その上には「ロスタルガ」と刻まれている。


「着いたみたいだな…でも、ここからが本番だろうな。」崩壊が息を吐きながら言った。


怠惰は門を見上げながら、小さく頷いた。「うん…滅びの神殿、どんな場所なんだろう…」

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