第四十六話
もう原形のない怪物はこちらを襲ってくる。
その時、怠惰の頭の中にあの時、聞こえた声がした。
「力を貸しましょう。希望を抱くのです。」
怠惰の頭に響く声は、これまで感じたことのないほど穏やかで、力強いものだった。
「希望を抱くのです」というその言葉に従うように、怠惰の体には温かい光が満ち始めた。
白い光は怠惰の体全体を包み込み、剣を握る手には『希望』の力がさらに強まっていくのを感じた。その光が怪物に向けて放たれると、触れた瞬間に怪物の体は静かに溶け始め、骸骨の群れもすべて崩れ去っていった。
怠惰と崩壊は立ち尽くし、その光景を見守るしかなかった。怪物の原形を失った姿が完全に消え去るとともに、辺りの空気が変わっていくのが分かった。呪われたように不気味な村の雰囲気は消え去り、どこまでも静かな更地が広がっている。
「村が…消えた?」崩壊が呆然とした声を漏らした。
怠惰は剣を握ったまま、その場に座り込むようにして力を抜いた。
「あの声…あの力、一体なんなんだ?」
崩壊はため息をつきながらも、怠惰の肩を叩いた。
「今は分からないが…助けられたのは確かだな。それにしても、もともとここに村なんてなかったみたいだ。」
怠惰はその言葉に頷き、辺りを見回した。村の跡形は完全に消え去り、そこにはただの静かな山道が続いているだけだった。しかし、怠惰の中には確かな「希望」の力がまだ感じられた。
「きっとこの道の先で、あの声の正体に出会えるかもしれない。」
怠惰は剣を握り直しながら言った。
崩壊もその言葉に頷き、
「死者の国ってやつが何なのか、そろそろ分かりそうだな」と言いながら前を向いた。
二匹は再び歩き出した。その足元には、どこか清らかな風が吹き抜けていった。これが試練の終わりなのか、それとも始まりなのか。死者の国への道は、まだまだ続いている。




