第三十五話 山道
ベルンフェルで必要な物資を整えた怠惰と崩壊は、いよいよ死者の国へ向けて山道を進み始めた。その先には、いくつもの4000m級の山々が連なり、厳しい自然環境が待ち受けていた。
雪に覆われた山々は白銀の世界そのものであり、陽光が反射して美しく輝いている一方、空気は冷たく薄く、ひとたび風が吹けば肌を刺すような寒さが襲いかかる。
怠惰は周囲を見渡しながら口を開いた。
「これ、本当に行けるのかな…。流石に寒すぎるし、道も見えない。」
崩壊は雪を踏みしめながら慎重に進みつつ言った。
「簡単じゃないのはわかっていたが、予想以上だな。でも、あの声が言ったように、死者の国へ行かなければ真実に辿り着けない。」
深い雪に覆われた道は滑りやすく、しばしば凍り付いた川を越えなければならなかった。崩壊の力で足場を安定させることもできたが、無駄に力を使うわけにもいかず、二匹は慎重に進むしかなかった。
途中、怠惰はふと足を止めた。
「なんか、この辺…空気が違うような気がする。」
崩壊も周囲を見渡す。
「確かに。何かが潜んでいるのかもしれないな。気をつけろ。」
雪の中に微かに見える黒い影――それが山岳地帯の自然の一部なのか、それとも新たな敵なのかは、今のところわからなかった。しかし、この先に待ち受けているのは、ただの自然の試練だけではないような気配が漂っていた。
凍り付いた川を越えた先、二匹はついに山の中腹に差し掛かった。ここでは風がさらに強まり、雪が吹きすさぶ中、視界はほとんど遮られてしまう。
「どこまで続くんだろう。」怠惰が疲れた声で言う。
崩壊は足を止めて振り返り、怠惰を励ました。
「あと少し進んだら休もう。それに、何か気になるものが見えてきた。あの岩陰を確認してみよう。」
険しい山道の中、怠惰と崩壊は少しずつ目的地に近づいていく。




