第三話 行先
荒野を進む「怠惰」と「崩壊」の前に、小さな町の灯りが見えてきた。遠くからでも、いくつかの屋根が夕日に照らされているのがわかる。
「町だね。休憩するにはちょうどいいかも。」
「やっっと休憩できる~!」
ダラダラした日々から急に動いて疲れた怠惰は嬉しそうにしっぽを軽く振りながら歩調を緩めた。
「そうだな。食料も確保する必要がある。これからディスティランドまで行くには、計画を立てる必要があるからな。」
崩壊も頷きながら歩みを進める。
町の入り口に立つと、活気は少ないながらも、いくつかの店や人々が行き交う様子が目に入った。石畳の通りに並ぶ商店には、人間の旅人向けの食料や道具が並べられている。
「とりあえず、あの宿に入ろう。ここで話をすると目立つ。」
崩壊が低く囁き、怠惰もその提案に頷いた。
宿の一室に入った二匹は、それぞれ小さな畳の上に体を休めた。崩壊は自分の尾で小さな地図を広げ、怠惰は買ってきた果実をひとかじりしながら話を聞いていた。
「この近くにはディシェウィキという都市がある。D.P.campanyの施設の一つがそこに隠されている可能性が高い。」
崩壊の赤い目が地図を見つめながら語る。
「ディシェウィキ? なんか賑やかな都市っぽい名前だね。」
怠惰は軽く頭を傾けた。
「ああ、大都市だ。だが、賑やかだからこそ、D.P.campanyは人目を避けるためにそこで動いている。調査した記録では、施設の入り口はかなり巧妙に隠されているようだ。」
崩壊はそのまま、地図上のいくつかのポイントを指し示した。
「この町からディシェウィキまでは半日ほどかかる。道中の準備を整え、まずは現地で情報を集める必要がある。」
怠惰は崩壊の説明を聞きながら、ディスティランドに辿り着くまでの道のりが一筋縄ではいかないことを改めて実感していた。
「自由を助けるために、まずはディシェウィキに行って、D.P.campanyの情報を探すってことだね。」
彼は食べ終えた果実の芯をそっと置きながら言った。
崩壊は頷きつつも、険しい顔をして言葉を続けた。
「そうだ。そして、お前も覚悟しておけ。D.P.campanyは俺たちの存在を許さない。俺たちは奴らにとって邪魔者だ。それを忘れるな。」
「奴らと戦いになることもあるだろう。」
「うん。でも僕は諦めないよ。自由を救いたいし、君が教えてくれたことを無駄にしたくない。」
怠惰の青い瞳に宿る決意を見た崩壊は、少しだけその表情を和らげた。
「いいだろう。お前がその覚悟を持つ限り、俺もお前に力を貸そう。」
二匹は翌朝早く、町を後にした。ディシェウィキへの道は平坦ではない。だが、そこには新たな情報、新たな敵、そして新たな仲間との出会いが待っているかもしれない。
朝焼けに照らされた青い鱗と黒い鱗が並んで歩む姿は、これから訪れる大きな運命の始まりを予感させていた。
崩壊はお金を持っていないので宿代は全額怠惰負担。なんならご飯も怠惰がはらっているが本人は気にしていない。