第二十二話 食べちゃいたいぐらい
怠惰と崩壊がニアダフスクに向かって歩き始めてしばらくすると、どこからともなく叫び声が響いてきた。
「助けて!食べられちゃう!」
怠惰はその声に驚き、崩壊の方を振り向く。
「ねえ、崩壊!聞こえた?誰かが助けを求めてる!」
崩壊は周囲を見回しながら冷静にうなずいた。
「聞こえた。声の方向に向かおう。」
二匹は声を追いかけるようにして森の中を進んでいく。声がかすかに消えたと思ったころ、二匹は広大なアリの巣穴にたどり着いた。周囲には無数の巨大なアリがうごめき、その中心に緑色の葉のような姿をした小柄なドラゴンが絡め取られ、アリの巣の奥へと運ばれていくところだった。
「怠惰!あれを見ろ!」崩壊が叫ぶ。
「捕まってる!助けなきゃ!」怠惰は前に出ようとするが、巣から次々と50cmほどの巨大なアリが群れを成して押し寄せてきた。
怠惰はアリに囲まれながら苦々しくつぶやく。
「これ、どうやって全部倒せばいいの……?」
崩壊は力強く吠え、前脚を振り下ろすと「崩壊」の力で地面を揺るがせた。
「怠惰!考える時間はない!まず進むぞ!」
地面が揺れる衝撃で数匹のアリが吹き飛ぶが、アリたちはそれでも怯まずに群がってくる。怠惰は息を整え、心の中で力を集中させた。
「みんな、だらけちゃえ!」
怠惰の言葉が力となり、アリたちの動きが鈍る。中にはその場で動かなくなるものもいたが、巣穴から次々と新しいアリが湧き出してきた。
「キリがない!崩壊、このままじゃ押し切られる!」
崩壊は焦りを感じつつも、アリの進行を抑えるように立ち回る。
「早く彼女を助けるんだ!奥へ進め!」
二匹は無数のアリを蹴散らしながら巣穴の奥へと進んでいった。巣穴の中は薄暗く、どこまでも続く迷路のように入り組んでいる。怠惰は目を凝らしながら、小さな声で崩壊に呼びかけた。
「崩壊、あのドラゴンどこに連れて行かれたと思う?」
「おそらく、巣の中心部だ。あいつらは獲物をそこに運ぶ習性がある……。早くしないと危険だ!」
二匹はさらに奥へと進むが、アリの数は減るどころか増えていくばかりだった。巣穴の壁から新たなアリが湧き出し、さらに執拗に怠惰と崩壊を襲ってくる。
「怠惰、ここは持たない!大きな一撃でアリの進軍を止めるしかない!」崩壊が叫ぶ。
怠惰は深呼吸し、勇気を振り絞ると力を込めた声を放った。
「みんな、もっともっとだらけちゃえぇぇ!」
怠惰の力が巣全体に広がり、アリたちの動きが次第に止まり始めた。しかし、それでも巣の中心からはさらなる群れが押し寄せてくる。
「クソッ!まだ奥があるのか……!」崩壊が前脚でアリを弾き飛ばしながら叫ぶ。
その時、巣穴の奥から悲鳴が聞こえた。捕まっていた緑のドラゴンが完全に巣の中心部へと運ばれたのだろう。怠惰と崩壊は全力で奥へ進むが、アリの大群が行く手を阻む。
「負けるわけにはいかない!」
怠惰と崩壊は巣穴の最深部を目指し、戦い続ける――。
オオアゴアリ:体長40~60cm 女王は3mにもなる。
巣の大きさは地下40mにもなり、横にも広い。雑食で何でも食べるが、肉の方を好む。




