第十八話 地下の虹
フェニスキの谷の深部へと進む三匹。空気はさらに濃密な生気で満ち、自然の静けさがかえって不気味な緊張感を漂わせている。怠惰は目の前の景色に思わず息を飲んだ。
岩肌は生気を受けて虹色の光を放ち、その鮮やかさが周囲の霧を照らし出している。しかし、その美しさとは裏腹に、足元にはうごめく大量の人間の死骸が散らばっていた。骨と腐りかけた肉が擦れる不気味な音が響き、彼らの動きは一定ではなく、まるで何かに操られているようだった。
「ここは……まるで生者と死者の境目のようだ。」怠惰がつぶやく。
崩壊は険しい表情で前方を見据えた。「気を抜くな。少しでも気を取られたら、あいつらに飲み込まれるぞ。」
幻惑は一瞬振り返り、静かに口を開いた。「この先に見えるのがリバイバルオルターだ。『復活』はその中にいるが……私はここで待つ。」
「え? どうして?」怠惰が驚いて尋ねる。
幻惑は柔らかい口調で答えた。「私は『復活』の使いだ。彼に会えるのは選ばれた者だけ。私はここで、君たちが帰ってくるのを待っている。」
「選ばれた者……」怠惰は不安げに視線を下げた。
「気にするな。」崩壊が静かに言う。「俺たちが進むべき道はもう決まっている。先に進むだけだ。」
怠惰はその言葉に背中を押され、小さく頷いた。
三匹のうち二匹となった怠惰と崩壊は、慎重にリバイバルオルターへの最後の道を進んだ。虹色に輝く岩々が辺りを照らし出し、その光が幻のように揺らめくたびに、人間の死骸たちが蠢く影が浮かび上がる。
「どうやら奴らは直接襲ってくるわけではないようだな。」崩壊が低く呟く。
「それでも気味が悪いよ……早く通り抜けたい。」怠惰が苦笑いを浮かべながら答える。
二匹は死骸たちの隙間を縫うように進みながら、互いに声を掛け合い、その場を慎重に切り抜けた。
ついに、二匹はリバイバルオルターに到達した。目の前には巨大な岩に刻まれた円形の扉が立ちはだかり、その表面には何かの言葉が古代文字で刻まれていた。その扉から漏れ出す眩い虹色の光が、彼らを歓迎しているかのようだった。
「これがリバイバルオルターか……」怠惰が感嘆の声を漏らす。
崩壊はその扉を睨むように見つめ、ゆっくりと前に進んだ。「これを開けば『復活』に会えるのか?」
その瞬間、扉の表面が淡く輝き、周囲に響くような低い音が鳴り響いた。
扉の中には生気に侵されて最早元が何だったのかわからないような屍がうごめいている。
虹色に輝く屍たちはこちらに向かってくるが、怠惰が軽く尻尾ではたくと崩れた。
「きれいだ...」怠惰は気付くとつぶやいていた。
「試されているみたいだな。」崩壊が冷静に言った。「行くぞ、怠惰。」
怠惰は不安を抱えながらも、崩壊の後に続いた。扉の前に立つと、光が二匹を包み込むように輝きを増した。そして、ゆっくりと扉が開かれる音が響き、奥から強烈な生気が溢れ出した。
「……これが『復活』の力……」怠惰が言葉を詰まらせた。
二匹は光の中へ足を踏み入れる。その先には、リバイバルオルターの真の姿が待っているのだった――。




