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第十七話 生ける屍

崖沿いの道を慎重に進む怠惰、崩壊、幻惑の三匹は、足元から転げ落ちそうな険しい道に緊張を強いられていた。谷の底から吹き上がる風が冷たく肌を刺すが、その一方で、空気に満ちる何とも言えない力強いエネルギーが次第に彼らを包み込んでいく。


「なんだか、妙に元気が出てくる気がする。」怠惰が自分の足取りを確認しながら口を開く。


崩壊が険しい目つきで周囲を見渡しながら答える。「確かに……疲労感が消えたようだな。これが幻惑が言っていた『復活』の生気なのか?」


幻惑は静かに頷いた。「そうだ。このエリアに入ると、復活の泉から発せられる力が徐々に強くなる。身体が軽くなるのはその影響だ。ただし、その力が引き起こす影響は恩恵ばかりではない。」


「どういうこと?」怠惰が不安そうに問いかける。


幻惑は一瞬躊躇したが、続けた。「生気が過剰に与えられると、それを制御できない者が異常をきたすことがある。この道を進む者たちの中には、生気に溺れて命を失い、さらに異形となることさえあると聞いている。」


怠惰はごくりと唾を飲んだが、崩壊は無言のまま進み続けた。


さらに進むこと2時間。谷の深部へと近づくにつれ、道は一層狭くなり、生気の濃度がますます高まっていることが明白だった。気分が高揚し、身体は軽いのに、どこか気が抜けない感覚が彼らを包む。


「……あれは?」崩壊が前方の路上を指さした。


道の真ん中に倒れている人影が一つ。その姿は、まるで死体のように動かず、白骨化し始めた痕跡が見て取れた。怠惰は思わず足を止めた。


「こんなところで……でも、なぜ?」怠惰が言葉を漏らすと、幻惑が冷静に説明を始める。


「生気に呑まれ、命を失った者だろう。この地では珍しくない。しかし、注意しろ。彼らは単なる死骸ではないことがある。」


その言葉が終わるか終わらないかのうちに、その「死骸」はゆっくりと動き出した。骨とわずかな肉片が不気味に擦れる音が響き、空虚な目で三匹を見据える。


「くそ、まさか!」崩壊が唸ると、さらに周囲からガサリ、ガサリと同じような音が響き渡る。崖沿いの岩陰や草むらから、次々と人型の異形たちが姿を現した。


「生気の影響で動いているんだ!」幻惑が低く呟く。

怠惰は咄嗟に力を使おうとしたが、「怠惰」の言葉は生気に満ちた異形には効果を及ぼさなかった。彼らは生気に操られるかのように休むことなく動き続ける。崩壊が前に出て低い声で言った。


「ここは俺がやる。怠惰、幻惑、後ろに下がってろ。」


崩壊は鋭く息を吸い込み、黒い鱗がきしむ音を立てた。「崩壊」の言葉を展開すると、前方の異形たちが一瞬で粉砕された。しかし、次々と後方から現れる異形に対応しきれない。


「数が多い! このままじゃ無理だ!」崩壊が疲れた声を上げた。


幻惑が素早く判断を下す。「全員で一カ所に集中して突破する。ここで全員倒れるわけにはいかない。」


幻惑は「幻惑」の力を使い、周囲の景色を歪ませた。一瞬、異形たちが進む方向を見失い混乱する。その隙を突いて、怠惰、崩壊、幻惑の三匹は全力で駆け抜けた。

息を切らしながら三匹が進むと、背後の異形たちは霧の中に消えた。どうにか襲撃を振り切ったが、三匹の表情は安堵よりも疲労と警戒感が色濃い。


「……あの数は異常だったな。」崩壊が低く呟いた。


「この先も気を抜けない。」幻惑が周囲を見渡しながら言う。「復活の泉に近づけば近づくほど、生気は強まり、それに比例して異常も増えるだろう。」


怠惰は唇を引き結び、小さく頷いた。「自由を助けるためには進むしかない。どんなに怖くても。」


その瞳には、わずかに恐れを滲ませながらも、決意の光が宿っていた。


三匹は再び歩みを進める。彼らの目指す「リバイバルオルター」は、まだ谷のさらに深い場所で待っている。

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