第十六話 リブホーン
霧を抜けた怠惰、崩壊、幻惑の三匹がリブホーンにたどり着いたのは、夜の帳が降り始めたころだった。リブホーンは小さな山間の町で、石造りの建物がまばらに並んでおり、静かながらもどこか暖かみのある雰囲気を漂わせていた。町の中央には小さな広場があり、焚火の周りで町の住人たちが談笑している姿が見える。
「ここがリブホーンか……なんだか落ち着く場所だね。」怠惰が周囲を見渡しながら言った。
崩壊は疲れた様子で首を振った。「ようやく休めそうだ。幻惑、明日への準備が必要なら教えてくれ。」
幻惑は静かに頷き、「リバイバルオルター、復活の泉がある場所は、フェニスキの谷の最深部にある。その地は非常に生気に満ちており、訪れる者に祝福を与えるとも、試練を与えるとも言われている。」と語り始めた。
「試練……?」怠惰が不安げな表情で問い返す。
幻惑は怠惰の目をじっと見据えた。「そうだ。その道中は険しく、泉を目指した多くの者が命を落としたという記録が残っている。明日には出発するが、今夜はしっかりと休息を取り、心身を整えることが重要だ。」
三匹は町の宿屋に足を踏み入れた。簡素ながら清潔な部屋が用意されており、久しぶりに安心して休める空間に怠惰はほっとした表情を浮かべた。
「ここまで来られたのも幻惑のおかげだね。ありがとう。」怠惰が感謝を伝えると、幻惑は淡い笑みを浮かべた。
「私は任務を果たしているだけだ。それより、あなたたちがしっかり力を蓄えることが重要だ。」幻惑の声はいつものように穏やかだった。
崩壊は壁にもたれかかり、目を閉じた。「……明日からが本当の試練だろうな。だが、親友を救うためだ。どんな困難も乗り越えるしかない。」
怠惰はその言葉に深く頷きつつも、不安げな表情を隠せなかった。それでも、親友「自由」を救うという決意は揺らがない。束の間の安全に感謝しながら、怠惰と崩壊はそれぞれ眠りについた。
その頃、遠く離れたD.P.companyの本部では、怠惰と崩壊の行方を追う動きが進んでいた。部屋の中央には巨大なモニターが並び、複数のスクリーンにはドラゴンの捕獲作戦や目撃情報が映し出されている。
「怠惰と崩壊の行方はつかめたのか?」鋭い声が響く。アンメット社長が椅子に深く座り、部下たちを睨みつけている。
「現在、彼らがフェニスキの谷付近に向かっている可能性が高いと判明しました。しかし、幻惑が行動を共にしているようで、追跡は困難です。」部下の一人が報告する。
アンメットは冷たい笑みを浮かべた。「幻惑もか……興味深い。復活の泉を目指しているのなら、必ず捕らえろ。怠惰と崩壊はもちろん、幻惑も我々の研究に必要だ。」
「必ず捕えるため、あいつらを向かわせろ。」
「はっ!」部下たちは一斉に応え、動き出した。
夜が明ける頃、リブホーンの静かな町にも少しずつ光が差し込み始めた。怠惰と崩壊は早朝の冷たい空気を吸い込みながら出発の準備を整えた。
「いよいよ谷の最深部か……どんな試練が待っているかわからないけど、頑張るよ。」怠惰は自分に言い聞かせるように呟いた。
「その意気だ。道は険しいが、お前の力と覚悟なら乗り越えられる。」崩壊が力強く答えた。
三匹はフェニスキの谷の奥深くにある「リバイバルオルター」を目指し、再び歩みを進める。その背後では、D.P.companyの追手が静かに迫りつつあった。




