表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/56

第十三話 ひと時の平和

怠惰と崩壊は、森の中のフェニスキの谷へ続く道を進んでいた。森には様々な動植物が生息しており、木々の間から差し込む陽光が揺れるたびに、心なしか温かさを感じられた。二匹のドラゴンの足音が落ち葉を踏みしめる音が続く。


「なんだか、この森って落ち着くね。」怠惰がぽつりと言った。


崩壊はその声に少しだけ振り返り、赤い瞳を細めた。「そうか。俺にはただの森にしか見えないがな。」


怠惰は笑った。「崩壊って、いつもそうだよね。もっとリラックスしたら?」


「お前がリラックスしすぎなんだ。」崩壊は軽くため息をつくが、その声には少しだけ柔らかさが混じっていた。


日が西に傾き始めると、森の中も少しずつ暗くなり始めた。太陽の光が弱まるにつれて、森は静寂に包まれ、小さな虫たちの声だけが響いていた。


怠惰が立ち止まり、空を見上げる。「そろそろ日が暮れてきたね。」


崩壊はその言葉を聞いて、背中の荷物から地図を取り出した。広げた地図をじっと見つめながら、低い声で言う。「近くに町はないな。野宿しかない。」


怠惰は少しだけ不安そうに眉を寄せたが、すぐに笑顔を作った。「まあ、野宿も悪くないかも。星が見えるし。」


「吞気だな、まあ星を見る余裕があるなら、それでいい。」崩壊は優しく笑い地図を畳むと、歩みを再開した。


二匹は森の中で適当な場所を見つけ、野宿の準備を始めた。崩壊が乾いた枝を集めて火を起こすと、暖かい光が辺りを照らした。怠惰は荷物から食べ物を取り出し、簡単な食事を済ませる。


「静かだね……」怠惰が呟くように言った。


崩壊は火の炎をじっと見つめたまま、短く頷く。「森の中では、夜はこんなものだ。」


「でも、こういう静けさって嫌いじゃないな。なんだか安心するっていうか。」


「それはお前が平和ボケしてるからだ。」崩壊は口元を少しだけ緩めたが、その視線は鋭さを失っていなかった。「だが、安心しすぎるな。ここはまだD.P.companyの目が届かないとは限らない。」


怠惰はその言葉に小さく頷き、少しだけ火に近寄る。「分かってるよ。でも、少しくらい休ませてよ。明日からまた進むんだからさ。」


崩壊は深く息を吐き、身体を横たえた。「お前がそう言うなら、今夜は休め。ただし、すぐに眠り込むなよ。」


「うん、分かってる。」

「君もケガが酷いんだから休みなよ。」

怠惰は小さく笑うと、炎を見つめた。


「ああ。」崩壊は答えた。


夜が更けるにつれて、森の中はますます静かになっていった。火の明かりだけが二匹を包み込み、森の暗闇がすぐ近くまで迫ってくるようだった。


怠惰は眠るために丸くなると、崩壊の方をちらりと見た。「崩壊はすぐに眠れるの?」


「俺はいつでも眠れる。」崩壊はそう言って目を閉じたが、その言葉の裏には何かを警戒している様子が感じられた。


「じゃあ、おやすみ……」怠惰は静かに目を閉じた。


火の炎が小さくはぜる音が響く。二匹はそれぞれ疲れた身体を休め、明日に備えていた。森の中の空気は冷たかったが、火の温かさがそれを和らげてくれていた。


遠くに、夜行性の動物たちの小さな鳴き声が響く。星空は木々の隙間から僅かに見えるだけだったが、それでも怠惰はその空の下で少しだけ心が安らぐのを感じていた。


フェニスキの谷まではまだ距離がある。しかし、二匹の旅は着実に進んでいた。森の夜の静けさが、次に待つ新たな試練の前触れであるかのように感じられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ