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第14話 【専属メイドを魔術師に仕立て上げる】

 

 朝、目が覚めたら……。


「すぅ~、すぅ~」


 俺の腕の中には静かに寝息を立てる裸のティーナがいた。


 やはりティーナは魔女の俺ほどではないが、かなりの美少女だ。


「んあ?」


 そのままティーナを抱きしめたままお尻なんかを撫でていると、ティーナが寝ぼけ眼で目を覚まさした。


「おはよ」


「…………」


 俺が挨拶をするとティーナは意識が覚醒していないのかボンヤリと俺を見ている。


「あ」


 だが、やっと俺を認識したのかハッと我に返ってティーナは自分の現状を確認して――慌てて毛布で身体を隠した。


「お、おはようございましゅ」


 そして恥ずかしそうに頬を赤く染めて俯き加減で挨拶を返して来た。


 うん。可愛い。


「身体は大丈夫か?」


「だ、大丈夫……だと思います。こう見えても意外と頑丈ですから」


 ティーナが頑丈かどうかは疑問だが、女の身体というのは《出来る》ように出来ているわけだから恐らくは大丈夫だろう。


「立てそうか?」


「えっと……」


 ティーナは身体に毛布を巻きつけたままベッドから起き上がり……。


「ん。なんか、まだ何かが挟まっているような感じが……」


 グッとくる台詞を言ってくれる。


 まさに初めてを経験した翌朝の女の子が言いそうな台詞である。


「あの、旦那様? 私の下着は何処でしょう?」


「おっと」


 ティーナが昨日付けていた下着は色々あって汚れてしまったのでアイテムボックスに放り込んでしまったが、メイド服を用意した時に魔女の俺が代わりの下着を用意してあるので新しい下着をアイテムボックスの中から取り出して渡した。


「最初はガーターベルトから身に着けるんだぞ~」


「わ、分かっています」


 恥ずかしそうに俺の前で着替え始めたティーナにアドバイスを送ったが、それくらいの知識は持ち合わせていたらしい。


 今日はピンクの下着を身に着けたティーナはいそいそとメイド服に袖を通し始めた。






 今日から午前中は薬師の仕事を中断してティーナの授業を行うことにした。


 もう薬師ギルドで俺でなければ出来ないことってあんまりないし、緊急の用事でもない限りはティーナの授業に専念出来るだろう。


 そうして俺はティーナに魔術の基礎を教え始めたのだが……。


「むぅ。上手く出来ません」


「どうやら自然力と魔力が混じっているから魔力の制御が上手くいかないみたいだな」


 最初の魔力制御の訓練で躓くことになってしまった。


 これに関しては自然力の制御も同時に出来るようにならなければいけないということなのだが、俺は自然力の制御の仕方なんて知らないのだ。


「……ちょっと出掛けるか」


「あ、はい」


 現時点で分からないのなら、分かるようになればいいのだ。






 そういう訳で転移魔術で森の人気(ひとけ)のない場所に移動してから……。


「それじゃ授業を再開するわよ」


 私は魔女に変身してからティーナの授業を開始する。


「えっと。旦那様……じゃなくて」


「この姿の時は、お嬢様と呼びなさい」


「は、はい、お嬢様」


 自慢のサラサラの金髪を手で払うと、キラキラ輝いて美しく舞う。


 うん。相変わらずの超絶美少女である。


「さて。それじゃ自然力の制御法だけど、ちょっと見本を見せるわね」


 そう言いつつ私はティーナの身体に触れて、ティーナの体内にある自然力を外から制御して動かしてみせる。


「わ。わわ!」


 それを感じるのかティーナは未知の感覚に戸惑っていた。


「分かる? あなたの身体の中で自然力が動いているのが」


「これが……自然力」


 自然力はエルフやドワーフが持つ独自のエネルギーだが、魔女である私からすれば制御するのは容易だ。


「これを自分の意思で動かせるようになりなさい。同時に魔力も動かさなければならないから難易度は高いかもしれないわね」


 ティーナの体内にあるのは自然力と魔力が混じり合ったエネルギーだ。


(確かにこれをエルフが感じ取ったなら気持ち悪く感じるでしょうね)


 人間には感じ取れないが、自然力に敏感なエルフなら容易に感知して――その不気味さに気分を害するだろう。


 そのくらい自然力と魔力の混じり合ったエネルギーというのは不自然な代物だった。


 それからじっくりと時間を掛けて私はティーナの体内のエネルギーを制御する感覚を教え込んでいった。


 うん。こんなの魔女にしか出来ないわ。






 午後からは再び男に偽装してから冒険者ギルドへと向かい、ティーナの依頼に付き合った。


「これって、お前が狩ったゴブリンだよな? 横着させんな」


「ウチの可愛いティーナに野蛮なゴブリンの相手なんかさせられるか!」


「……なんで冒険者にしたんだよ」


 それは確かにその通り。


「1人で冒険者するの飽きた」


「普通にパーティメンバーを募集しろ」


「今更、有象無象となんか組みたくない」


「そうかよ」


 その他大勢と組むくらいなら、今からティーナを育てた方がマシだわ。


「まぁ、心配しなくてもティーナには俺が教えているから直ぐに戦力になってくれるはずだ」


「が、がんばります」


 ティーナは例の混合エネルギーのせいで術の習得難易度が高いが、上手く制御出来るようになればエルフや人間よりも将来性を期待出来る。


「後は自衛出来るだけの最低限の護身術も必要かな」


「見た目が弱そうだし、それは必要だな」


 美少女ハーフエルフメイドのティーナは絡まれやすそうだし、時間がある時に護身術も教えるとしよう。


「やることがいっぱいだなぁ」


「暇を持て余すよりはいいだろ」


「そらそうだ」


 やることがあるというのは悪いことではない。


 それがティーナのような美少女の教育というのなら、猶更だ。






 それから薬師ギルドに帰って食堂で夕食を食べ、部屋に戻ってクリーンの魔術で身体と服を綺麗にして……。


「…………」


「…………」


 今日も俺の部屋には緊張感が漂っていた。


 既に一線を越えた俺とティーナだが、2回目のメイクラブのお誘いは初めてより緊張するものなのだ。


 とは言っても、ここでへたれて何もしないなんて選択肢を取れば今後のティーナとの性生活に支障をきたす。


 ティーナと並んでベッドに座っていた俺は手を伸ばしてティーナの肩を掴んで抱き寄せた。


「あう」


 ティーナは恥ずかしそうに身を固くしたが、今日もすると覚悟を決めていたのか拒否する意思は感じられない。


 俺はそのままティーナをベッドの上に押し倒して――昨日よりも上手く出来たと自負しておこうと思う。




 ◇◇◇




 俺とティーナのルーティーンが定まって来た。


 まぁ、単純に午前中は森で魔女に戻ってティーナに授業を施し、午後からは男に偽装してから冒険者ギルドで依頼を受けるという流れだ。


 そして夜はティーナとベッドでチョメチョメする。


 大雑把に言えば、それが俺とティーナの1日の流れだ。






「もうちょっと声を抑えてよ。近くの部屋の住人から苦情が来てるよ」


「……サーセン」


 だがセラから苦情が来ていることを教えられた。


 基本的に毎晩しているので、慣れたティーナが快楽に我を忘れて大きな声を出すようになったしね。


 俺にはそれが楽しかったのだが、付近の部屋の住人には迷惑になっていたようだ。


(防音の魔術は偽装した状態だと使えないんだよなぁ)


 魔女なら防音結界を張れるのだが、人間に偽装している身で使える術ではない。


「汎用魔術で防音魔術でも開発してみるかなぁ」


「声を抑えるって発想にはならないのね」


「…………」


 だって楽しいんだもん。


 美少女が俺の手によって快楽に我を忘れて声を上げる様は見ていて非常に楽しい。


「あなたって見た目に反してドSだよねぇ」


「……そんなことねぇし」


 俺はちゃんと優しい筈だ。


「ティーナちゃんはどうしたの?」


「……まだ寝てる」


「普段、早起きな子が起きて来れないくらいに快楽攻めにしてるじゃない」


「……偶々だよ」


 ティーナも悦んでいたし、なんの問題もない筈だ。


 最後には白目を剥いて身体をビックンビックン痙攣させていたが、とても幸せそうだったし。


「いずれティーナちゃんは淫乱に調教されそうね」


「…………」


 そうなったらそうなったで俺は一向に構わん。


「妊娠させたら、ちゃんと責任を取ってあげなさいね」


「……大丈夫だよ」


 俺はあくまで男に偽装しているだけで正体は魔女だから、女を妊娠させる能力は……。


(あれ? なかったっけ?)


 最初に設定した時、どういうふうにイメージしたのか覚えていない。


 前世の自分をイメージしたことは覚えているが、そうだとすれば妊娠能力は――あるかもしれない。


「まぁ、エルフは簡単に妊娠しない筈だけど、気を付けなさいよ」


「へい」


 とは言われても避妊なんてする気はないんだけどね。






 今日は寝坊したティーナだが、予定通り午前中は森に行って授業を行った。


「そろそろ初歩の魔術くらいは使えそうね」


「本当ですか?」


 ティーナは魔術が使えることが嬉しいのかワクワクした顔で聞いて来る。


 混合エネルギーの制御は困難だが、使える魔術の幅は人間よりも遥かに大きそうだ。


「それじゃ今日はティーナの属性を調べてみましょうか」


「属性、ですか?」


「個人の魔力には適した属性があって、その属性に付随した魔術しか使えないのが普通なのよ」


「お嬢様は?」


「魔女は世界力を行使出来る権限を持つから、あらゆる術の行使が許されるわ」


「……ずるい」


 まぁ、魔女の存在そのものが反則だしね。


 ともあれ、早速ティーナの魔力属性を調べてみたのだが……。


「火と風と水? 随分と多い属性ね。自然力が混じっているからかしら?」


 なんとティーナは3属性持ちだった。


 普通の人間の属性は多くても2種類くらいで3属性を持つ者なんて滅多にいない筈だが、どうやら混合エネルギーのせいで多くの属性を持っているらしい。


「それって凄いんですか?」


「まぁ、単純に考えれば使える魔術が3倍だからね。代わりに習得難易度も3倍だけど」


「……それは駄目なのでは?」


 そうね。普通に考えたら魔術師としては致命的な欠陥ね。


「大丈夫よ。ティーナには私が憑いているわ」


「……なんか取り憑くって意味の憑いているに聞こえるんですけど」


「気のせいヨ♪」


 笑って誤魔化しておいた。






 午後からは冒険者ギルドに寄ってから森でゴブリン相手にティーナの初級魔術を試させてみた。


 その際、ティーナは俺が教えた通りに歌うように詠唱を行い、踊るように振り付けをして魔術を行使した。


「うんうん。良い感じだな」


 当初は――人間に偽装した直後は魔女の魔法と人間の魔術の落差に詠唱を面倒と思っていた俺だが、使っている内に詠唱についての印象が変わって来た。


 魔術の詠唱というのは過去の偉大な魔術師が組み上げた天才的な芸術品だ。


 最近の魔術師の主流として無詠唱や詠唱破棄が流行っているようだが、そんなのは俺から言わせれば美学に欠ける行為だ。


 分かりやすく言えば――エレガントじゃない。


「ですが旦那様。戦闘中に長々と詠唱を行うのは隙が大きくて危ないのではありませんか?」


 そんな俺の主張にティーナが疑問を挟んで来る。


「戦闘中に詠唱するのが危険だ、なんて考える時点で間違いだ。戦闘中であっても余裕を持って詠唱出来るように立ち回るのが基本だし、詠唱する余裕がないというのなら、そうなっている時点で戦闘を続行するのではなく撤退するべきだ」


 世の中には《まだ大丈夫は危険信号》という言葉があるが、戦闘中に詠唱する余裕を失くした時点で魔術師は撤退を開始するべきだ。


「そういう余裕のない状態でも無理矢理に戦闘を続行する為に開発されたのが無詠唱と詠唱破棄だ。こんなことをしているから魔術師の死亡率が上がるんだ」


 本来なら魔術師は最優先で護られるべき存在であり、魔術師が殿を務めるような状況は愚の骨頂と言っても良い。


「そもそも、ちゃんと詠唱を行わないと魔術は未完成なまま発動して完全な効果を発揮しない。そういう未完成は術は暴発しやすいし、必要な時に不発になったら目も当てられない」


「はぇ~。旦那様って凄い拘りを持っているんですね」


「魔術師として持っていて当然の心得だ」


 まぁ、詠唱の素晴らしさに気付いてから持った心得だけど。


 その為にも俺は前衛としてティーナを護り、ゴブリンの接近を許さなかった。






 討伐証明であるゴブリンの左耳を持って冒険者ギルドに戻り、受付に座っていたおっさんに提出したら……。


「これで嬢ちゃんはEランクに昇格だな」


 至極あっさりとティーナはEランクに昇格した。


「うむうむ。流石はティーナだ」


「……やり方はどうかと思うがな」


 今日はティーナが魔術で数匹のゴブリンを倒したが、今まで提出したゴブリンの左耳は大半が俺が倒した奴だしな。


「良いんだよ。ティーナはずっと俺と組むんだから」


 どの道、俺はティーナを1人で活動させる気がないのだから、少しくらいズルをしても問題にならない。


「過保護過ぎだろ」


 まぁ、それは俺もそう思うけど。




 ◇◇◇




 改めて、この世界の魔術師について考えてみる。


 俺は魔女の力を使って容易にティーナを魔術師に仕立て上げたが、本来は長い勉強と修練の末に魔術を習得して魔術師を名乗れるのだ。


 故に冒険者の中に魔術が使える奴というのは滅多にいない。


 居たとしてもAランクとかBランクの相当上位な高位冒険者の中だけだ。


 だからCランクの現在に至るまで魔術師と敵対するということがなかった。


「例のBランクの5人組が馬鹿をやらかしやがった」


「…………」


 ところが今回の相手は5人組の魔術師だった。


「具体的に言うと、増長した馬鹿5人が商人ギルド所属の馬車を襲って金品を強奪。その上で馬車に乗っていた商人を皆殺しにして証拠隠滅を図った」


「よく発覚したな」


「馬車の中に隠れていた生き残りが居た。そいつが命辛々ギルドに駆けこんで来て報告したことで発覚した。手口から考えて初犯ではなさそうだ」


「だろうな」


 明らかに慣れたやり口だ。


 無理に辺境に留められた鬱憤を晴らす為か、商人を襲って金品を奪って利益を得ていた。


 そしてBランクの信用があったからか今まで発覚することなく隠し通せてきたわけだ。


「これって悪いのは奴らだろうけど、そいつらを無理に引き留めたギルドにも責任があるんじゃね?」


「……耳の痛い話だ」


 ギルドマスターであるおっさんも責任を感じているのか苦い顔をしている。


「それで、そいつらは今どうしているわけ?」


「……逃げた」


「おいおい」


 そりゃBランクの5人組とか無理に留めることは出来ないだろうが、もうちょっと頭を使って拘束してくれよ。


「その際に職員が8名殺された」


「マジかぁ~」


 商人殺しも重罪だが、ギルドの職員を殺せば完全に取り返しがつかなくなる。


「そいつら状況分かってんの? 商人を殺すのも駄目だろうが、職員を殺したら完全アウトだろ」


 ギルドは面子に掛けて、そいつらを始末する為に動く筈だ。


「お察しの通り既に指名手配された」


「そらそうだろ」


 別のところから高位冒険者が派遣されて、そいつらがお縄になるのも時間の問題だ。


「だが奴らには土地勘がある。いつまでも逃げ切れんだろうが、そう簡単に捕まるとも思えん」


「……凄く面倒な予感がする」


「捕まえて来てくれ。出来れば生かしたまま」


 そんなこったろうと思ったよ。


「俺だって土地勘があるってわけじぇねぇぞ。何処にいるのか分からねぇよ」


「奴らが塒にしていた拠点が各地に存在する。恐らく奴らはそのどれかに居る」


「それを派遣される冒険者に教えてやれよ」


「そうなると、奴らは確実に殺される」


「…………」


 以前におっさんは俺のことを過保護だと言っていたが、おっさんだって十分に身内贔屓で過保護だよ。


「その依頼を達成すれば俺はBランクに昇格か?」


「Bランク5人を相手に生かして捕らえる実力があることを証明出来るからな」


「確実に生かして捕らえるとは保証しないぞ。そいつらがどんな状況で、どんな手段に出るか分からないからな」


「……分かっている」


 本当に分かっているのかねぇ。


 生かして捕らえるとしても五体無事とは限らないというのに。






「旦那様。旦那様は旦那様のまま依頼を実行するつもりですか?」


 ギルドからの帰り道、黙って話を聞いていたティーナが質問して来た。


「俺は俺のままでもAランク上位の実力があると保証されている。Bランク5人くらいなら問題なく制圧出来るさ」


 ティーナとしては俺に偽装を解いて魔女になって依頼を解決するのではないかと思っていたのだろう。


 この程度の案件で魔女に戻る必要性は感じないけど。


 俺はティーナの授業の為に気軽に魔女に戻っているが、本来は先生のところに帰る時以外はずっと偽装していても良いくらいなのだ。


「気を付けてくださいね」


「絶対に大丈夫だから心配するな」


 心配するティーナに無事を保証したが――なんかフラグを建てたみたいになってしまった。


 なんも起こらないと良いけど。




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