第13話 【専属メイドになった美少女を美味しくいただく】
森で拾ったハーフエルフの美少女、ティーナを俺のメイドさんにした。
「お~い。そろそろ正気に返れ~」
「あ」
色々と調整した魔女のことで呆然としていたティーナがハッと我に返る。
「これからティーナは俺の専属メイドだ。今後は俺の身の周りの世話をしてもらうつもりだから、よろしくな」
「は、はい! こちらこそ、よろしくお願いします!」
俺の正体が魔女だと知った影響か、ティーナはガチガチに緊張していた。
「さっきのことは2人だけの秘密だからな。誰にも言っちゃ駄目だぞ」
「も、勿論です」
口止め完了。
これでティーナから俺の正体が漏れることはないだろう。
本当にただの口約束だから強制効果はないが、裏切られても俺が悲しくなるだけだ。
「それより身体の調子はどうだ? 調整して良好な健康状態にしたが違和感はないか?」
「あ、はい。凄く身体の調子が良くて、逆に良過ぎて自分の身体じゃないみたいです」
「それが自然な状態だからな。直ぐに慣れるさ」
「あ」
俺がティーナを抱き寄せて頭を撫でると、ティーナは自然に身体から力を抜いて俺に身を任せ、うっとりした表情で心地良さそうにして素直に撫でられている。
うん。なんとなくティーナからはチョロインの素質を感じる。
俺はティーナを連れて街へと帰る。
流石に冒険者でもないティーナに長距離を歩かせるのは忍びなかったので転移魔術で街の近くまで移動してから街の中に入った。
「そろそろ日が暮れそうだな」
「そうですね。もう、こんな時間だったんですね」
色々あってティーナを受け入れるかどうか判断するのに時間を掛けたからな。
もう手放す気はないけど。
そうして俺はティーナを薬師ギルドの自室へと連れ帰ろうとした訳だが……。
「おかえり~。どうしたの、その子?」
目敏いセラが早速ティーナを見つけて絡んで来た。
「俺の専属メイドだ。今日から俺の部屋に住まわせて俺の身の周りの世話をしてもらうことにした」
「てぃ、ティーナです。よろしくお願いします」
「へぇ~」
セラは紹介したティーナをジロジロと眺める。
「あなたって、こういう子が好みだったの?」
「うん。こういう子が好みだったんだ」
「顔が良くて胸の大きい子が好みってこと?」
「そうそう。顔が良くて胸の大きな子が大好きだ」
ティーナはまだ成長段階だし、調整はしても栄養状態が完全に改善されたわけではないが、それでも服の上から分かるくらいには胸が大きかった。
「この子を同じ部屋に住まわせるって言ったけど、夜のお世話もさせるつもり?」
「当然だ。夜はお楽しみの時間だ」
「っ!」
俺が断言したらセラではなく隣にいたティーナの顔が耳まで真っ赤に染まって恥ずかしそうに俯いてしまった。
「この子、凄い初心な子じゃない?」
「バリバリの処女だからな」
本人がさっきそう言ってた。
とは言っても実際には、まだ栄養状態が完全ではないティーナに今夜手を出す気はなかった。
いつまでも手を出さずに放置する気もないけど
「ん? その耳で灰色の髪ってことはハーフエルフかな?」
「分かるのか?」
話を変えたセラがティーナを早々にハーフエルフと看破したことに驚いた。
「ある意味有名だからね。人間には関係ないけど、エルフは混血を嫌っているからハーフを毛嫌いしているんだよ。なんか気持ち悪いんだって」
「あ。それはエルフの里でもよく言われました。魔力が気持ち悪いって」
「む」
ティーナの言葉で、そういえばエルフは自然力を扱う種族なのだということを思い出す。
「そうか。エルフは自然力を司る種族だから、人間の血が入って魔力が混じったハーフの自然力には本能的な忌避感を覚えるんだな」
どうしてエルフが混血を嫌うのかという理由が分かった気がする。
「そうだったのですか?」
「多分、な」
これはもうエルフという種族の特性であって、本人達にはどうしようもない問題だ。
その後、セラと別れた俺はティーナを連れて俺の部屋に入り2人きりになる。
「あ、あの、不束者ですが、よろしくお願い致します」
「いや。健康状態は改善したが、まだ栄養状態が完全じゃないから今夜は手を出さないぞ」
「そ、そうなのですか」
いきなり三つ指ついて初夜に入ろうとしたティーナを止めたが、覚悟が完了していたなら手を出しても良かったかもしれん。
「だから今日のところはお預けだ」
「あう。はい」
再びティーナを抱きしめて頭を撫でたら心地良さそうに夢心地の返事を返して来た。
「それより、そろそろ夕食の時間だな」
「あ。それなら私が……」
「いや、見れば分かると思うけど、この部屋には台所がないから料理は無理だ」
「そういえば見当たりませんね」
ここは薬師ギルドの居住区の一室なのだから、寝泊りするだけで料理が出来るようには出来ていない。
「という訳で、食事の際は食堂に行く必要がある。案内するから一緒に行くぞ」
「あ、はい」
そうして俺はティーナを連れて食堂へと移動した。
お金を払って料理を注文する時、ティーナは恐縮していたが、これからも食堂は利用するつもりだから慣れてもらわないと困る。
それから食事を終えた俺は再びティーナを連れて部屋に戻って来たわけだが……。
「さて。見れば分かると思うが、直近で解決しなければいけない問題がある」
「なんでしょう?」
「ベッドが1つしかない」
うん。この部屋には俺用のベッドが1つあるだけで、ティーナが寝る場所が存在しないのだ。
「あ、それなら大丈夫です。私は慣れているので床の上でも寝られますから」
「それは却下だ」
「駄目、ですか?」
「絶対に駄目」
考えてみて欲しいのだが、美少女を床で寝させて1人でベッドでグースカ寝る男――絵面が最悪だ。
「でも旦那様を床で寝させるわけには参りません」
「いや、どっちかが床で寝るって発想を辞めようよ」
慣れていても身体を傷めるし、下手をすれば風邪をひく。
「それなら、どうすれば……」
「一緒にベッドで寝ればいいだろ」
「…………」
俺が当然の提案をしたらティーナは固まって沈黙した。
「せ、狭くありませんか?」
「どうせ直ぐに2人で寝ることになるし、今から慣れておいた方がいい」
「そ、そうでしゅね」
ティーナは再び耳まで真っ赤になって俯いた。
「そういう訳で寝場所に関しては解決なんだが……」
「が?」
「こっちは本気で忘れていたが、そもそもティーナの寝巻がない」
「あ」
現在のティーナはメイド服を着用しており、とてもではないが寝巻き替わりにはならない。
「ど、どうしましょう? このままだとシワになってしまいます」
「まぁ、今日のところは脱ぐしかないだろう」
幸い、この部屋にはハンガーがあるから、それで部屋干しするのが良い。
「わ、私、裸で寝るんですか?」
「流石にそこまで脱がんでいい」
俺は顔を赤くして混乱するティーナを捕まえて丁寧にメイド服を脱がせていく。
(次は着たままベッドに押し倒して着衣プレイするけどな)
そんなことを決意しつつ、俺はティーナからエプロンドレスとワンピースを脱がせ、頭のカチューシャを外して靴を脱がせた。
結果、見事な下着姿のティーナの出来上がりだ。
「こ、この下着、なんだかエッチじゃありませんか?」
「素晴らしい」
用意した俺が見ても見惚れる美しさだ。
「うぅ。旦那様ってエッチな人なのですか?」
「覚えておけ。男は基本的にエッチな生き物なんだ」
「……男?」
ティーナが何に引っかかったのかは分かるが……。
「そこは深く考えるのは止めておけ」
「は、はひっ!」
どうせ正体は魔女なのに男なのか? とか考えたのだろう。
だが今は完璧に男に偽装しているのだから男で良いのだ。
「さ。こっちにおいて」
「……はい」
俺が先にベッドに入ってティーナを呼ぶと小声で返事をしながら素直にベッドに入って来る。
「あ」
そうして俺は下着姿のティーナを腕の中に抱き締めながら――意識が落ちるまで理性と本能の戦いを繰り広げることになった。
だって、ティーナは緊張していたが疲れていたのか早々に寝息を立てて寝てしまったので、残ったのは下着姿の美少女を抱きしめている俺という構図なのだ。
こんなの素直に寝られるか!
(恰好を付けて今夜は手を出さないなんて宣言するんじゃなかった)
その夜、俺は悶々として無駄に我慢を強いられる羽目になったのだった。
◇◇◇
翌朝。
少々寝不足気味で目を覚ました俺は……。
「お、おはようございます」
腕の中でアワアワしている下着姿のティーナを発見した。
「おはよ。起きるの早いな」
「……習慣ですから」
それはエルフの習慣なのか、奴隷の習慣なのか、どっちだろう?
ともあれ、俺は部屋に干してあったメイド服を四苦八苦しながら着ていくティーナの姿をじっくりと堪能することが出来て満足だ。
ティーナには俺の身の周りの世話をしてもらうと言ったが、ティーナに出来るお世話はあまり多くなかった。
料理、洗濯、掃除。
基本的なことだが、ハーフエルフとしてエルフの里で迫害されていたティーナには誰も教えてくれなかったらしい。
「うぅ。申し訳ありません、旦那様」
ティーナは涙目で謝るが、それはそれでそそる姿だった。
「大丈夫。俺がちゃんと教えてやるからな」
「は、はい」
頭を撫でると子犬のように喜ぶティーナ。
ちなみにティーナが俺を旦那様と呼ぶのは、ケイさん、ケイ様、御主人様、旦那様の内、好きに呼べと言ったら――旦那様を選んだからだ。
(将来、結婚することも視野に入れているのかな?)
夫婦なら夫を旦那様と呼ぶのも不自然ではない。
俺はまずティーナに掃除の仕方を教え、それを実践するティーナを後ろから監督していたのだが……。
(これはこれでそそるなぁ)
緊張気味に一生懸命掃除を頑張るティーナの姿にグッと来た。
続いて洗濯を教えることになったのだが……。
「あんまり洗濯物、ありませんね」
「クリーンの魔術があるからな」
普通に洗濯するよりクリーンの魔術を使った方が綺麗になるので、あまり洗濯物は出ないのだ。
「そのクリーンの魔術って私にも使えますか?」
「ふむ」
言われてみればメイドであるティーナにこそ相応しい魔術なのだが……。
「ティーナって魔術の基礎的な知識はあるのか?」
「……ありません」
クリーンはそれなりに難易度が高い魔術なので習って直ぐに使えるようにはならない。
「エルフの自然力を使った術は?」
「……それも教えてもらえませんでした」
「むぅ」
流石に何の基礎知識もない奴に高難易度の魔術を使えるようにするのは難しい。
「それなら、これから俺がじっくり教えていこう」
だから俺が本格的に、基礎の基礎から教えていくことした。
「よろしいのですか?」
「これから長い付き合いになるんだ。出来ることが増えて困ることはない」
「は、はい!」
ティーナはハーフエルフなので300年は生きるし、俺に関して正体が魔女なので不老不死だ。
とはいえ、まずは今日の予定として午前中は薬師ギルドで錬金術師として仕事をして、午後からは冒険者として冒険者ギルドへと出掛けた。
ギルドに入ったら今日も今日とて暇そうなおっさんが受付に座っていた。
「おう。来たな」
おっさんは俺に適当に挨拶して来たが――直ぐに後ろに控えているティーナに気付く。
「誰だ?」
「昨日、森で拾った俺の専属メイドだ。これからは俺の片腕として頑張ってもらう」
「が、頑張ります」
俺が紹介したらティーナは可愛くガッツポーズして決意表明していた。可愛い。
「いや、拾った奴を専属メイドっておかしいだろ。犬猫でもあるまいし」
「行く当てもないって言うし、俺が拾ったんだから俺の専属にしても構わんだろ」
「そうかよ」
おっさんは呆れたような目で俺を見ていたが、直ぐにティーナに視線を向けて――気付いたようだ。
「ちなみに昨日の時点で商人ギルドからハーフエルフの奴隷が行方不明になったという届け出が出ているが、何か知らんか?」
「っ!」
おっさんの言葉にティーナがあからさまに動揺するが、俺は欠片も表情を変えなかった。
「お前にはティーナが奴隷にでも見えるのか?」
「……見えねぇな」
既に奴隷の象徴である奴隷の首輪は撤去してあるので誰もティーナを奴隷であると認定することは出来ないのだ。
「そもそも、その届け出は正式な依頼として出されているのか?」
「いや。見つけたら極秘で知らせろって知らせが来ただけだ」
そりゃ、ティーナは明らかに違法に捕まえた奴隷だったのだから表立って探すことなど出来る訳がない。
「それなら問題ないだろ。この子は俺の専属メイドだ」
「わぁ~ったよ」
おっさんは根負けしたのか肩を竦めて呆れた顔をしていた。
「お前って、こういうのが好きだったんだな」
「そうだよ。こういうのが好きだったんだよ」
改めてティーナを見てみるが、見た目は15歳前後に見えるが身長は150センチくらいあるし、髪は長く灰色で腰まで伸びており、瞳は緑色――というか翡翠色だ。
体付きは全体的に細身だが、胸は大きく現時点でDカップはある。
(そういや、俺も15歳の時点でDカップだったな)
ティーナの将来性に期待しつつ、俺はおっさんに向き直って話を続ける。
「それで、なんか依頼はあるのか?」
「まだ選別中だ。一発でBランクになれるような依頼が早々転がっているわけねぇだろ」
「そらそうだ」
そんな依頼がホイホイ来たら街が大ピンチってことになるし。
「お前に頼みたい輸送依頼なら何件か来ているがな」
「まだ商人になる気はねぇよ」
儲かるのだろうが、そればっかりやらされる人生は御免だ。
「そういや、そっちの子は冒険者にならないのか?」
「わ、私ですか?」
「ふむ」
そういえばティーナはもう奴隷じゃないし、冒険者になっても構わないのか。
「人間じゃないけど登録出来るのか?」
「それが駄目だとは法に記載されていないな」
「それなら……折角だから登録だけでもしておくか」
「はいよ」
そう言っておっさんは登録用紙を渡してくる。
「ティーナは文字が書けるか?」
「……すみません。書けませんし読めません」
まぁ、誰も教えてくれない環境で育ったなら仕方ないだろう。
「後で俺が教えてやるから落ち込むな」
「……はい」
ティーナは現時点で自分が何も出来ないことを思い知ったのか普通に落ち込んでいる。
俺はティーナの代わりに用紙に必要事項を書き込んでおっさんに提出する。
「それじゃ、その嬢ちゃんは今日からGランクの冒険者だ」
「ちっ。俺の専属メイドなんだからサービスでDランクからにならんのか?」
「無茶言うな」
まぁ、自分でも無茶を言った自覚はある。
「それなら今日中にティーナをFランクに上げてしまうか」
「言っておくが、本来ならお前が手伝うのも駄目なんだからな」
「硬いこと言うな」
「やれやれ」
おっさんは肩を竦めて呆れていたが、ティーナにGランクの重労働などさせるつもりはない。
結局、その日は適当な仕事をティーナと2人で終わらせてFランクに昇格させて終わった。
薬師ギルドに帰って来て、食堂で夕食を食べ、それからクリーンの魔術で身体と服を綺麗にした後は――部屋に緊張が漂っていた。
ティーナだけでなく俺も緊張している。
必死に平静を装っていたが、俺だって今世では初めてなのだ。
当然、緊張だってするし不安にもなる。
「ティーナ。こっちにおいで」
「は、はい!」
とは言ってもリードする俺が弱気は見せられない。
俺がベッドに誘うとティーナはメイド服のまま寄って来て……。
「あ」
気付いて慌ててメイド服を脱ごうとしたので――そのままベッドの中に引き入れた。
それを脱がしてしまうなんてとんでもない。
「あ、あの……旦那様」
「ん?」
「私、本当に初めてなんです。だから、優しくしてくださいね?」
「…………」
本人に自覚はないだろうが、めっちゃそそられる言動だった。
その夜、俺が優しく出来たのかは――秘密である。




