その3
※ルールについては、前回のお話をご参照ください。
「なるほどなるほど! とにかく、どんどんぬいぐるみを作って贈ればいいということじゃな」
何度もうなずくジェラードを、じいやは心配そうに見ています。ルージュはふふっと笑ってうなずきました。
「ええ。でも、ぬいぐるみを作るためには、お金もやっぱり必要ってことも押さえておいてくださいね」
「心配無用じゃ! わらわの城の宝物庫には、たんまりと金が入っておるからな」
「ジェラード様、ゲームは別ですぞ」
あきれたように言うじいやと、あっけらかんと笑うジェラードを、ルージュはほほえましそうに見ていました。
――なんだか面白そうかも――
さぁ、それではゲームスタートです!
まずはキャラクター決めでしたが、ルージュはシャルル、ジェラードはフランソワ、じいやはセザールになりました。
「わたしのシャルルは、製作費もぬいぐるみの質も平均的ね。ジェラードさんのフランソワは、豪華なぬいぐるみを作るのが得意だけれど、それだけお金も必要になっちゃうわ。そしてじいやさんのセザールは、製作費を押さえることで、お金をたくさん得られる代わりに、あんまり凝ったぬいぐるみは作れないのが欠点ね」
「なんだ、じいやのキャラはずいぶんとみすぼらしいのう。わらわのようにゴージャスでなければ。これは勝負あったな」
「それはどうでございますかな?」
三人とも最初の素材とお金を受けとり(ちなみにジェラードのフランソワだけは、素材とお金も豪華なものをもらえていました)、とうとうゲーム開始です。
「それでは、わらわからするぞ! まずはシルクの生地を購入して、天使のぬいぐるみを作り、それをこの令嬢『マリアンヌ』に贈るぞ!」
「ジェラードさん、それはダメよ。手番にできることは1アクションまで、それを時計回りに交代で行っていかないと」
「王女……コホンッ、ジェラード様、ルージュ様の言う通りでございますぞ」
ルージュとじいやにたしなめられて、ジェラードはしぶしぶ、白いシルクの生地を購入するだけになりました。ルージュもシルクの生地を購入し、じいやは少し考えたあと、もともと持っていた素材から、小さなネコのぬいぐるみを作りました(ちなみに、ネコのぬいぐるみもコンポーネントがあるのです。かわいいですよ♪)。
「むむむ、じいや、なぜおぬしだけぬいぐるみを作っているのじゃ!」
「手元に素材がありましたからな。さて、それでは2回目のアクションに参りましょうか」
2回目は、公平になるように順番が入れ替わります。まずはルージュが先ほど購入したシルク(ブラウン)から、クマのぬいぐるみを作りました(もちろんクマもコンポーネントがあります)。そしてじいやは……。
「なんと、売るのか!」
じいやは先ほど作ったネコのぬいぐるみを、すぐに市場に出してしまったのです。けっこうな金額を受けとっていましたが、ジェラードはあきれたように肩をすくめました。
「じいやよ、おぬしは先ほどのルージュの話を聞いておったのか? このゲーム、令嬢にぬいぐるみを贈らねば得点にはならんのだぞ」
「もちろん、存じておりますよ、ジェラード様」
不敵に笑うじいやを見て、ジェラードは口をとがらせました。ですが、すぐに切り替えて、天使のぬいぐるみを作ります。
「白雪の天使じゃ。どうじゃ、なんとも美しいじゃろう?」
確かに天使のコンポーネントは、他のぬいぐるみよりも美しく、まるで宝石のようでした。ですが、ルージュはなるほどと軽くうなずいて考えをめぐらせました。
――ジェラードさんは、まだこのゲームのポイントに気づいていないみたいね。反対に、じいやさんは完璧に戦略を立ててきてるわ。でも、ボドゲカフェの店長なら、ここは――
意気揚々と次の番をむかえるジェラードに、ルージュはこっそり耳打ちしました。
「その天使、今贈ってもあんまり得点にはならないと思うわよ」