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セントラルよいとこ一度はおいで

「到着です。ここが最下層ですよー・・・ってわたしも初めて来たですけどね」


セントラルの転移でやってきた最下層。

みんなも来てるかな? ・・・うん、大丈夫そう。


「じゃあ早速ダンジョンコアを設置するですよー」


そう言ったラルが見てる先にあるのは、すっごく荘厳な感じの・・・祭壇?


「もしかしてここに設置するの?」

「ですです、そうですー。さすがカルアお兄ちゃん、ダンジョンコアの置き場が、置き場ってレベルじゃないですよ! これはそう・・・装置! 『根幹の魔力』への接続装置です!!」

「装置?」

「そうです! これはまるで、ダンジョンに効率よく『根幹の魔力』を取り込むための装置です! コアを設置する場所にもう『根幹の魔力』が届いてるです! コアをここに置くだけで『根幹の魔力』に直接アクセス出来るですよ!!」


それってそんなに凄いことなの?


『ちょっと! そんなの私だって見てみたいよぉーーーっ!! 声だけなんてヤダヤダヤダ!! 誰か何とかしてえーーーっ!!』


何とかって言ってもねえ。


「ダンジョンの壁で魔力が遮られちゃうから、魔法でっていうのは無理だろうし・・・セカンがここに来れればいいんだけど・・・」

『それが出来るんだったら、私が自分でセントラルを探してたわよ』

「だよねえ・・・」


あと他に何か・・・あ。


「ねえセカン、ダンジョンの壁を魔力を通すように出来ない?」

『うーん、出来なくはないんだけど・・・それやるとダンジョンが外からの攻撃に無防備になっちゃうし、魔力干渉とか起きたらダンジョンが暴走しちゃう可能性もあるし・・・あ、でも管理者の魔力だけなら普段から通してるわよ。今のこの会話もそんな感じだし』


管理者の魔力だけなら通せるのか・・・あれ? でもそれだけじゃあ・・・


「それってさ、例えば他のダンジョンの管理者の魔力も通してるって事?」

『んーーー、そっか。言われてみればそうよね。じゃなきゃ他のダンジョンにいるあなたたちと通信出来てないはずだものね。うん、多分他の管理者のも通してると思う』


魔力が通せる・・・

なら、こちらに受け皿さえ用意してあげれば・・・

必要な情報は、視覚と聴覚・・・あれ? 以前にこんな話をしたことがあったっけ。あれって確か・・・ああそうだ。行った事の無い場所への転移を試した時だっけ。遠見の情報を増やしてあげればって・・・そうか、それなら出来そう・・・あ、でも操作はどうしたら・・・ん? 操作? 今何かひっかか・・・あ、土人形!


魔力は・・・よし、これくらい回復してれば大丈夫!

ってこれ、前よりも魔力の回復速くなってない? ありがたいけど。

「ちょっとセカンのとこに行ってくる!」


ダンジョンの出口まで転移したら、徒歩でダンジョンを出てからセカンケイブダンジョンの前に転移、それからカードで中に入って、そこからコアの間に転移。

面倒だけど、ダンジョン越しだと直接転移が出来ないからね。


「セカン、ちょっといい?」

「早っ! もう来た。・・・で、急にどうしたのよ」

「うん、もしかしたら何とか出来るかもしれないんだ。ちょっと待ってて」


戸惑ったセカンの視線と、興味津々って感じのモリスさんの視線。

見られてるとちょっと緊張するけど、さて、思い付いた通りになってくれるかな。


まずは家から魔石を取り寄せて、その魔石でセカンそっくりの人形を作る。

その人形に五感の送受信と受信したイメージに会わせて体を動かす機能を付与。

あともちろんセカンと同じ色もつけて、と。

目指せ完全コピーってね・・・よし出来た!


「セカン、この人形に魔力を繋いでみて。この人形は、セカンのイメージ通りに動いて、セカンの声でしゃべって、見たり聞いたりした内容や触れた感じもセカンに伝えるんだ。あと臭いとかもね。ちょっと試してみて」

「う、うん・・・」


どうだろう、上手く行くといいな。


「ええっと・・・こんな感じ? あ、見えた。それに・・・わ、凄い! 思い通りにちゃんと動くし、目を閉じるとまるで自分の体がそこにあるみたいな感じ。これってまさか・・・操化身(アバター)!?」


操化身(アバター)?」

って何?


「ええっとね、これは精霊に伝わる言い伝えよ。すっごく昔、この世界を作った神様が、自分の世界を見てみたくなったの。でも神様は自分の世界に降り立つ事が出来ない。それは、神様の持つ強大な神力が世界を壊してしまうから。そこで神様は考えたの。自分の分身の人形を作って、その人形で世界を見て回ろうって。神様が作ったその人形の名前が操化身(アバター)っていうの」

「へええ、神様の言い伝えかあ・・・」


「ははは・・・カルア君ってば、今度は神話の魔道具を作っちゃったよ・・・どうしよ」


モリスさん大袈裟すぎじゃない?

だってこれ、今までやってきたのを組み合わせただけだよ?


「じゃあこれ、セントラルダンジョンに持ってくからね。向こうでもちゃんと繋がるといいけど・・・」


って事でラルのところに転移!


「ただいまー」

「お兄ちゃんおかえりなさいです。あれ? 手に持ってるのはセカンお姉ちゃんです? まさか連れてきちゃったです? セカンケイブダンジョン崩壊の危機です!?」


え? ダンジョンの精霊を連れ出すとダンジョンが崩壊するの!?

何それ怖い。


「セカン、どう?」

「うん、大丈夫みたい。ちゃんと見えるしそっちの声も聞こえるわよ。体も・・・うん、何の違和感もなく動かせるわね。まるで自分の体みたい」


「え? セカンお姉ちゃん? セカンお姉ちゃんだけど・・・セカンお姉ちゃんじゃないです? 一体どういう事です?」

「セントラル、落ち着いて聞きなさい。この非常識(カルア)がね、言い伝えにあった操化身(アバター)を作っちゃったの。今あなたの目の前にいるのは、私の操化身(アバター)よ」


「ええっ!? 嘘です!? 神様でもないのに、そんなの作れるです!?」

「それを・・・作っちゃったのよ・・・さっき私の目の前で、あっという間に・・・」

「カルアお兄ちゃん・・・わたし、お兄ちゃんの事を尊敬すればいいのかドン引きすればいいのか・・・今その境界線上でふらふらしてるですよ・・・」


ええっ、僕ドン引きされちゃうの・・・?


「ふふんっ! よく分からないけど、要するに『精霊から見てもカルアは非常識』って事ねっ!」


だからアーシュは何故そんなに自慢気なのさ・・・

しかも全然嬉しくない内容だし・・・



「まあでもおかげでこうしてセントラルの顔も見れたし・・・ってホントに大きくなったわね。顔も大人っぽくなってるし、それに身長なんて人間と変わらない大きさじゃないの」

「はいです。だからカルアお兄ちゃんと並んで立っても、ちゃんと兄妹に見えるですよ」

「むう、そう言われると何だかちょっと羨ましく思えるわね。私もアーシュ姉さまと並びたいかも。あ、でもそしたらこんな事出来なくなっちゃう」


そう言ってセカンがふわっと飛んで、アーシュの背中にぶら下がった。

「もう何よ急に。まあでも軽いからいいけどね。・・・まったく姉妹で何を張り合ってるんだか」


はは、アーシュはもうすっかりお姉ちゃんだね。

何だか嬉しそうだし。


「むむぅ、それはそれで羨ましいです。カルアお兄ちゃん、こちらも負けてられないですよ」

「いや、勝ち負けとかじゃないからね? それにセカン、ダンジョンコアを置くところが見たかったんでしょ? ほら、あれがそうだよ?」

「ん? コア? ええっと・・・あーあーあー・・・そういえばそうだったわ。もう衝撃展開過ぎてすっかり頭から抜けてたよ」


やれやれ、やっともとの話に戻ったよ。


「それで、アレがそうなのね。・・・うん、やっぱり非常識(カルア)。さすが非常識(カルア)。もうホント信じられない非常識(カルア)ね。どうやったら『根幹の魔力』への直結回路なんて作れるのよ」

「ええ・・・そんなの作ろうとか思ってなかったし、どうやって作ったかなんて知らないよ? だって僕、ダンジョンコアに魔力を注いだだけだからね?」


「それ本当かしら・・・セントラル、ちょっとコア見せて」

そう言ってセカンはラルのダンジョンコアに向かってじっと目を凝らし・・・


「あ、これだ」

何かを見つけたみたい。


「ダンジョンコアの性質に干渉を受けた形跡がある。これは・・・まさか付与? ・・・ふむふむ、ああなるほど、つまりそういう事かぁ」

あ、何か分かったみたい。


「分かったわ。これってね、カルアの『大きくなあれ』がダンジョンコアの性質に干渉、影響したのよ。ダンジョンコアがカルアに言われた通りダンジョンを大きくしようとして、そのエネルギー源となる『根幹の魔力』を効率よく受け入れる為にこの『接続装置』を用意したって訳ね。つまり・・・」


つまり?


「無意識か知らないけど、ダンジョンコアの性質を変化させるような『付与』を掛けちゃったのが、今回のすべての原因って事よ。つまり、非常識(カルア)って事」


非常識って・・・


「ダンジョンコアに『付与』なんて、神様だって想定してなかったんじゃない? きっと神様がこれ見てたら『想定外だー』って叫んでるわよ」


神様の想定外って・・・


何だろう、だんだん言われる内容がひどい事に・・・

でもあれが付与になっちゃったって言うのなら、それはやっぱり僕がやっちゃったって事だし・・・


「まあでも、『大きくなあれ』くらいでよかったわ。もしこれが『我に従え』とかだったら・・・」

「それって管理者とは違うの?」

「全然違うわよ。管理者はあくまで本来のダンジョンコアの機能にあるコマンドを実行するだけだもの。ダンジョンコアのすべての力を従わせるようなものじゃないわ」

「なるほど」


「まあそもそも、あんな『付与』のやり方そのものが神様の想定外なのかもね。これって私の知ってる『付与』とは全然違う技術だし」


つまりロベリーさんも想定外って事か・・・やった、仲間仲間!


ここでセカンがものすごい真剣な表情で、

「いい? ダンジョンコアに『付与』が掛けられるなんて事が知られたら大変な事になるわよ。だからここにいる全員、この事は絶対に口外しちゃダメ。これは私達だけの秘密よ。そしてこれは精霊との約束よ。精霊との約束は命を懸けて守ってもらうわ。いいわね?」


みんな、すっごく真剣な表情で頷いてる。

もちろん僕も。


「あ、それとカルア、あなたにもうひとつお願いが出来たわ。まああなたにとっては簡単なお願いよ。あのね、他の姉妹の操化身(アバター)も作って欲しいの。そしてそれをこの場所に連れてきて欲しい。そうすればセントラルのいるここで姉妹に会えるのよ。声だけじゃない、自分のダンジョンにいながら直接みんなに会う事が出来る。自分のダンジョンから出る事の出来ない私達にとって、それってまるで夢のようだわ」


そんな事言われたら・・・


「分かったよセカン。モリスさん達が結界の改良をする時に一緒に行って作ってくるよ」


何とかしてあげたくなるに決まってるよ!


「あっありがとうカルア! でも無理はしないでね。時間が掛かっても構わない。私待ってるから」

「うん、任せといて!」


という事で、近いうちに他のダンジョンにもいかなきゃね!




「それでセカンお姉ちゃん、わたしちょっと相談があるですよ」

「ん? 何かしらセントラル。お姉ちゃん、何だって相談に乗っちゃうわよ」

「ありがとうです。相談っていうのは、このダンジョンをどんなダンジョンにしたらいいかって事なんです。お姉ちゃんのダンジョンはどんなダンジョンです? セカンお姉ちゃんのダンジョンなんだから、きっとお客さんがたくさん来る素敵なダンジョンですよね?」

「うっ!?」


あ、セカンが固まった・・・

まあせっかく妹が相談してくれたのに、その相談が自分の弱点だった(・・・)んだから無理もないか。


「ふふんっ! セカンのダンジョンは凄いわよ! 入り口を入ったら大きな森になってるの。たくさんの階層をぶち抜いた高くて広い天井、そして疑似太陽が燦々と輝く、まるで本物の森にいるような素敵なダンジョンなのよ!」


おおっ、アーシュ、ナイスフォロー!

さっすがセカンのお姉さま!


「おおっ! 凄いです! ダンジョンなのに敢えてダンジョンらしさを排除したですか。これならアウトドア派もインドア派も大満足って事ですね!? さっすがセカンお姉ちゃん、森の精霊に憧れてたのは伊達じゃないですっ!!」


あ、やっぱり憧れてたんだ・・・


「しかも森の魔物に加えて建築資材となる良質な木材も用意してるから、もう大変な事になっちゃうわ。あれはもう、地域密着型ダンジョンのお手本といってもいいわね」

「さっすがセカンお姉ちゃんですー!!」

「まっ、まあそれほどでもないけどね。あははははは・・・」


「そんな大人気ダンジョンを運営するお姉ちゃんに、このダンジョンについて是非相談にのって欲しいです!」

「そっ、それは・・・・・・ええっと・・・・・・あ、そうだ! ほら、せっかく冒険者が来てるんだから、彼らに聞いてみたらどうかしら。私もね、実はそれで成功したのよ」


「なるほどぉ! 直接ユーザーの声を聞くのが大事って事ですね。さすがお姉ちゃんです。危ないところだったです。取り敢えずゴブリンとかをたくさん用意すればいいのかな、なんて思ってたです! うっかり大失敗を犯すところだったですぅ!!」

「ぐふうっ!!」


あ、直撃・・・


「そうだね。一般的に冒険者っていうのは、利益を求めてダンジョンに行くんだ。もちろん冒険者だから『冒険をしたい』っていうのもあるんだけど、仕事として素材とか食べ物とかの採取を依頼されるんだよ。だからね、冒険者に『ここのダンジョンは儲かる』って思わせる事が大事なんだ」


おおっ、さすがノルト! 見も蓋も無いけど、なんて的確な意見!!


「そうね。セカンケイブダンジョンがあるフタツメの街はね、付近に森が無くって森の魔物や植物が手に入りにくいのよ。そこでダンジョンを森にする事で冒険者を呼び寄せたって訳ね。じゃあここはどうかっていうと、人口の多い王都がすぐそばにあって、ダンジョンの入り口は森の中にあるわけよね。そこで求められるのは何かっていうと・・・」


すかさずアーシュが話を進める。ナイスコンビネーション!!


「王都には各地から食べ物とかが集まってくるけど、人もどんどん増えてる。だからやっぱり食べ物は欲しいところよね。あと魔道具作りとかも盛んだから、それらの素材も喜ばれると思うわよ。それに金属なんかも需要が高いんじゃない? ノルトはどう思う?」


「うん、そのあたりは固いだろうね。あとは冒険者目線で考えると、ダンジョン産の武器や防具なんかが手に入れられたら嬉しいと思うよ。特にこのダンジョンは規模が大きいからさ、より深い場所ではより良いアイテムが手に入るようにしつつ、稀に浅い階層にも良いものを置いておいたりすれば、射幸性アップ間違いなしじゃないかな」


「なるほどです。つまりこのダンジョンの方向性は・・・」

「「本格派ダンジョン!」」


なるほど・・・


「まあ難易度とかは状況を見ながら調整していけばいいと思うよ。あとは簡単に踏破されないように、時々マップが変わっちゃう階層を作ったりしてね」

「おお! それは面白そうです! カルアお兄ちゃんのおかげでダンジョンの魔力にはまったく問題はないですよ。強大な資本にモノを言わせてやりたい放題やってやるです!」


あ、でも・・・


「ちょっと待って。1階層目だけはすっごく簡単な階層にしてくれないかな。迷路とかじゃなくって広くて見晴らしのいい場所で、罠とか強い魔物とかが出なくって、良質な薬草とかがたくさん生えてるような」

「カルア、それって・・・」

「うん、親がいないとかやむ無い事情で冒険者になるような子供もいるからね。そんな子供でも暮らしていけるようにしてあげたいんだ。特にこのあたりの森って、薬草とか採り尽くされちゃってるからさ」

「「「「・・・・・・」」」」


「うん、分かったです! 第1階層はサービス階層にするですよ。それで浅い階層は初心者向けのチュートリアル階層で育成モードにするです! いいお客さんは自らの手で作り上げるですよ!!」

「ははは・・・ありがとうラル!」

「まったく、優しいお兄ちゃんに付き合う妹は苦労するです!」


「さて、それじゃあ私はこれから気合い入れて今日中にダンジョンを作り上げるですよ! セカンお姉ちゃんはどうするです?」

「私は一旦帰るわ。結界を解除してくれた人を待たせちゃってるしね。結界の改良が終わったらまた来るからね。あっそうそう、危ないからこの最下層は当分誰も入れないように閉じときなさい。カルア達だったら転移で来れるからね」

「分かったです。今日はありがとうです、セカンお姉ちゃん!」



うん、セントラルダンジョンの探索ミッションはこれで完了かな。


「それで、カルアお兄ちゃん達には記念すべきお客さん第一号になって欲しいです! 明日の朝、攻略をお待ちしてるですよ!!」



ははっ、じゃあ予定通り明日また来なきゃ。

僕の妹に会いに・・・ね。

年末年始は毎日更新!!

この下から作者に【お☆玉】をお願いします。

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