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僕に妹ができました。ってあれ?

「取り敢えず中に入ってみるわよ・・・『いいわよね、セカン?』・・・え? ちょっ・・・」

『あーーあーー、みんな聞こえる? セカンだよー。今アーシュ姉さまを通じてあなた達に呼び掛けています』


アーシュがセカンに問いかけたら、セカンの声が頭に響いてきた。


「これって、もしかしなくてもセカンの声だよね? みんなにも聞こえてる?」

「ああ、聞こえるな」

「うん、僕にも聞こえてるよ」

「バリ5。これ、あの感じ。ダンジョンの時の」


そう、何だかセカンケイブダンジョンでボス達が使った話し方みたいだ。

じゃあ、あれもセカンの力でやってたって事、なのかな?


『よかった、ちゃんと聞こえてるみたいね。このままセントラルにも話しかけてみるから、みんな中に入るのはちょっと待っててね』


ああそっか、そのほうが絶対話が通じやすいよね。


『もしもーし、私よ私、私私。私あなたのお姉ちゃんよ。セントラル聞こえる?』

『ええっ、うそ!? この声、もしかしてセカンお姉ちゃんなんです?』

『そうよー、セカンお姉ちゃんよー。久しぶりねセントラル。元気にダンジョンしてる?』


もしかして、ダンジョンの精霊って「ダンジョンしてる?」ってのが挨拶なの?

って言うか、セントラルって警戒心無さすぎない?

なんだかいつか誰かに騙されちゃいそうで心配なんだけど。


『それがまだ全然なんですー。コアが育たなくって、ちっともダンジョンになってくれないですー』

『やっぱりそうかあ。最初の魔力を溜めるのって大変だものね。でも安心してセントラル。私ね、この間そこにいるひと達にすっごくお世話になったのよ。で、その時にあなたのコアに魔力を注いでくれるようお願いしたの。きっと小規模な地下3階層くらいまでのダンジョン化だったら出来ると思うから、そこから始めればすぐに大きく出来ると思うよ』

『やったぁ! ・・・です』


今の間・・・最後の「です」は無理して付けてる疑惑?


『まあそんな訳だから、そのひと達を中に入れてあげてくれる? 私もそのひと達を経由してあなたに話しかけてるし』

『うん、分かったよお姉ちゃん。皆さんこちらへどうぞです』


取り敢えず話がついたみたい。

って事でみんなでダンジョン・・・っていうか洞穴? の中へ入ろうとしたんだけど、

「狭いわね。これじゃふたり入るのが精一杯じゃない?」


うん、それに高さもぎりぎり。何とか頭をぶつけなくて済むくらいな感じかな。


「まずはあたしとカルアのふたりで入るわ。みんなはちょっと外で待ってて」

「「「了解」」」


アーシュとふたりで中に入ると、中には小さな女の子の姿をした小さな精霊がいた。

それは、4~5才くらいの女の子の姿をした、身長50センチくらいの精霊。

その子が自分の頭よりも大きな水晶みたいなのを抱えて、こっちを見てる。

あれってきっとダンジョンコアだよね? 今にも落としそうで怖いんだけど。


「ええと、みなさんこんにちは。わたし、セントラルです。セカンお姉ちゃんの妹で、ダンジョンの精霊をやってるです。ダンジョンコアに魔力を入れてくれるってお姉ちゃんが言ってたけど、ホントに入れてくれるです?」


今度は頭の中にじゃなくって普通に話しかけてきた。


「うん、僕達そのために来たんだ。セカンに頼まれてね」

「ふふん、あたし達にまかせなさい。あなたのダンジョンコア、魔力で満タンにしてあげるわ。このカルアがね」


何故か得意げなアーシュ。

やるのは僕なんだけどな・・・


「ありがとう、です。じゃあ早速ハイオク満タン一括でお願いするです」


何だかよくわからない事を言ってるけど、魔力を注げばいいんだよね?

あ、そうだ。


「ダンジョンコアを借りていい? 手に持ってやったほうがやりやすそうだからさ」

「はい、どうぞです。わたしとダンジョンコアは繋がってるから、直接わたしが持ってなくても大丈夫なの。・・・です」


「えっと・・・話しづらければ無理に『です』を付けなくても大丈夫だよ?」

「それはダメですー! そんな誘惑には乗らないですよ。ダンジョンが出来上がるまでは下手に出るように言われてるです。丁寧語は苦手だけど、取り敢えず語尾に『です』を付けとけば大丈夫だって、フィラストお姉ちゃんに教えてもらったです」


「ええっと・・・セカン?」

『うんうん、私も小さい頃はそうだったなあ。フィラスト姉さんによく言われてたっけ。『人間には気をつけなさい。特にエルフには注意するように。取り敢えず相手を刺激しないように下手に出て、それでも相手が本性を現したらすぐに逃げなさい』ってね』


フィラストさんとエルフの過去に一体何が!?


『まあそんな訳だから、この子の喋り方は気にしないでおいてあげて。世の中、あなた達みたいないいひとばかりじゃないもの』


って事で、セントラルからダンジョンコアを受け取って・・・って結構重いなこれ。セントラルって実は力持ち?


「セカン、これってどれくらい魔力を入れたらいいの?」

『入れられるだけ入れちゃって。最初のうちは入れたそばからどんどんダンジョンの拡張に使われるから。その後も、容量の限界を越えちゃった分はそのままダンジョンのリソースに回るようになってるし。まあそんな状態になる量の魔力なんて普通あり得ないから、する必要が無い心配なんだけどね』

「了解。じゃあ持ってる魔力を全部入れとくね」


まず最初は循環しない状態で、と・・・


「おおぉぉ、すごい勢いでコアに魔力が溜まって・・・あっ、ダンジョンの構築が始まったです!」

『えっ、もう!?』


「あれ? さっきより部屋が広くなったわね。カルア、ちょっとストップ。せっかくだから先にみんなを中に入れるわよ」

そう言ってアーシュは外に出て、みんなに状況を説明しながら戻ってきた。


「で、そんな訳で今カルアがダンジョンコアに魔力を注いでるんだけど、それでダンジョンの構築が始まってここも広がったわけなのよ。・・・お待たせカルア、じゃあ続きをやっちゃって」


取り敢えず今くらいの勢いでも全然問題なさそう。じゃあそろそろ魔力循環した状態での全力注入を始めようかな。あ、付与の時みたいに額に翳したらやりやすいかも。

やっぱり慣れた姿勢のほうがやりやすいと思うんだよね。


って事で、まずは循環してっと。


「うなっ!? 突然でっかい魔力です!?」

「あんた相変わらず非常識ねカルア。視ようとしてないのに魔力を感じさせるとか、ホント意味分かんないんだけど」

『ええっ、なになに? どうしたの? こっちからだと何が起きてるのか全然わからないんだけど?』

「セカンお姉ちゃん、このひととんでもない魔力オバケです!?」

『え? 普通に多いくらいじゃなかった?』


ダンジョンコアを額に翳して魔力注入!

僕の魔力、全部君にあげるよ!

大きくなぁーーれっ!!


「うわわわわわっ!? どんどん深くなってくです!? 3階層、4階層、5階層・・・全然止まらないですぅ!?」

『ええっ!? 嘘でしょ? だってこの前見た魔力だと狭い3階層くらいしか作れないはず・・・』

「このひと、さっきいきなり魔力量が10倍以上に膨れ上がったです! ガチの魔力オバケです!!」

『10倍以上って・・・それじゃあまるで大精霊クラスじゃない! 一体どういう事!?』

「そんなの、わたしにも分からないですよぉーーーっ!!」



うーん、空っぽ。久し振りに魔力を一度に使い切ったよ。

今夜は魔力トレーニングが捗りそう、っていうか今から始めようかな、石ころに大回復で。


「はいこれ。取り敢えず僕の魔力は全部入ったみたいだけど、これでどう?」


セントラルにダンジョンコアを返して、状況を聞いたんだけど、

「あれ? あれ? あれれれ?」

セントラルが何か困ってる?

「どうしたの?」

「ダンジョンコアが反応しないです。壊れてないですよね? あれー? わたしと繋がってるはずなのに、存在を感じられなくって・・・あれ? これもしかして繋がってないって事です?」


えっと・・・もしかして・・・


「ねえセントラル、ダンジョンコアと繋がってる時って、どんな感じなの?」

「ダンジョンコアと繋がってると、コアと離れてても、意識の中にダンジョンコアが感じられるようになるですよ。頭の中にコアが見えてるっていうか・・・それでダンジョンの様子を見たりコアを操作できるです。だけど、今はコアが感じられないですよ。緊急事態です!」


やっぱり・・・


「うっわあぁあん! わたしのアイデンティティがピンチですー! ダンジョンコアから見放されたダンジョンの精霊なんて・・・ただの精霊ですぅーーっ!! ってあれ? それってわたし自由って事? 何にだってなれるさ、って事です!?」

『しっかりしてセントラル! 司るものが無い精霊なんて聞いたこと無いわよ!?』

「やっぱり・・・ううぅセカンお姉ちゃああん」


「えっと・・・ちょっといいかな? 何ていうか、僕ダンジョンコアと繋がっちゃってる、みたいなんだけど・・・」


セントラルが言ったみたいに、さっきから意識の中にダンジョンコアが見えてる。

これって多分繋がってるって事だよね?


「おっ、お姉ちゃん!? こんなとこに乗っ取り犯がいやがったです! 善意のフリしてダンジョン持ってかれたですぅ!!」

「いや人聞き悪いよ!? 乗っ取ってないから・・・いや乗っ取っちゃったみたいだけど、返す気満々だからね!?」


だってダンジョンとかいらないし!


「今すぐ返すですぅ!」

「だから返すって言ってんじゃん!」


僕の話聞いて!?


「ほら、返すからそのやり方を教えてよ。どうすればいいの?」

「ううーー、仕方がないです。じゃあダンジョンコアの操作を教えるから、絶対に返すですよ? 悪用厳禁ですよ?」

「もうっ、そんな事しないよ!」


悪用とか、そんな事するつもりなんて無いからね?

だからみんなもそんなワクワクした顔でこっち見るのやめてくれないかな・・・


「いいですか? 意識の中のダンジョンコアに対して指示を送るですよ。まずは『コマンドリスト』です」

「うん、やってみる。・・・『コマンドリスト』」


おお、なんか出てきた。

ファイル、編集、操作、表示、オプション・・・


「慣れてくれば直接ショートカットで操作出来るですが、初心者はこのリストから選択するです。[オプション]を選んで、その中の[権限]を選択するです」


[オプション]から[権限]ね。よし。


「その中の[管理者の設定]を選択すると、一覧の中にわたしの名前があるですから、それを選択して[管理者に設定する]をポチっとするです」


ポチっと。うん、出来た。


「お!? よおおおっっし! 戻ってきたですぅ! わたしの中にダンジョンコアが感じられるですよーっ!!」


やった、ちゃんと出来たみたい。


「じゃあ早速細かい権限周りとか色々と元に戻して・・・あとはカルアの管理者権限を・・・あ、一応管理者からは外さなきゃだけど、サブとして登録しとくです。トラブル対応とかに便利に使ってやるです」


なにか黒いセリフが聞こえてきたような?


「これでよし。あとは最後にダンジョンコアとわたしの再同期です。こいつをやらなきゃ始まらないです! えいっ!!」


お? セントラルが光りだした?


「よし、再同期オッヶ――うにゃああああぁぁぁああ!? なにこれ!? とんでもない魔力が逆流してきたです!? 多いです! 濃いです! 粘っこいです! ・・・まだ止まらないです!? こんなの無理! 溢れちゃうですぅ!!」

『ど、どうしたのセントラル?』

「おっお姉ち――うなああぁぁぁ、まだこんなに出て・・・ううっ!? わたしの中も外も、こいつのネバネバしたので汚されちゃうですぅ! このままじゃ、わたしがわたしじゃなくなっちゃうですぅーーーっ!!」


「ちょっとちょっと! これ何が起きてるのよ? カルア、あんた一体何したわけ!?」

「ええっ、なんにもしてないよ? ダンジョンコアに魔力を注いで、セントラルに言われた通りに操作しただけだよ!?」


他に何かあったかな・・・うん、やっぱり何もしてないよ。


「むーー、取り敢えず収まるまで待つしかないか・・・『セカン、どうする?』」

『ええ。待つしかなさそうね・・・でも一体何があったのかしら? 聞いてる限りおかしな点は何も無かったと思うけど・・・』


という事で、暫くセントラルの様子を見守ってたら、

「うにゃあぁぁあああっ!?」


一際大きな叫び声を上げて、セントラルから強い光が溢れ出し・・・

「眩しっ!!」



そして光が収まった。




「ふううううぅぅぅぅーーーー・・・」

やがてセントラルの長い息が聞こえてきて・・・

目を開けてそっちを見ると・・・

え!?


「全く、酷い目にあったですよ。どう責任とってくれるですか、カルアお兄ちゃん(・・・・・)


そこには、僕よりちょっと年下くらい、大体12歳くらいかな? の女の子の姿が。


「え? あれ? えっと・・・君、セントラル・・・なの?」

「もう、急に何言ってるです、お兄ちゃん?」

「いやだってその姿・・・それに背も高くなってるし・・・ってお兄ちゃんって何?」

「姿? あれ? そういえばちょっと大きくなったような? わたしいきなり成長期? ・・・あ、そうか。きっと、お兄ちゃんの魔力で大きくなっちゃったです」

「え? 僕の・・・魔力で?」

「うん、多分そうです。だって魔力に溺れてる時に『大きくなぁーーれっ!!』ってお兄ちゃんの声が聞こえたですよ」

「え? それって・・・」


ダンジョンコアに魔力を入れる時にそんな事言ったような・・・


「じゃあ『お兄ちゃん』っていうのは?」

「わたしの魔力、ほとんどがお兄ちゃんの魔力に染められちゃったです。これって、わたしの中身ほとんどお兄ちゃんって事ですよ? つまり血縁関係ならぬ魔力縁関係ってやつです。だから、セントラルはセカンお姉ちゃん達の妹だけど、それとは別にカルアお兄ちゃんの妹になっちゃったですよ」

「セントラル・・・」

「お兄ちゃん、わたしの事は『ラル』って呼んで欲しいです。だって兄妹だから。兄妹だから!」

『ううっ、セントラルってば・・・そんなかわいいこと、私にだって言った事ないのにぃ・・・』


セカンが遠くでいじけてる・・・

そしてセントラル・・・いきなりだから実感みたいなのは全然ないけど、言いたい事はなんとなく理解できた気がする。

それに、アーシュだってセカンの『お姉さま』だしね。

だから・・・


「分かったよ・・・じゃあラル、今日から君は僕の『妹』だ。頼りないお兄ちゃんかもしれないけど、よろしくね」

「ハイです! こちらこそフツツカモノですが、どうぞ末永くよろしくお願いするです! って事で、お兄ちゃんっ!!」


うわっ、急にラルが抱きついてきた!?


「さあ家族のハグをするですよー。お兄ちゃんが出来てラルは嬉しいですぅ! ふふふ、スリスリ、ハグハグ・・・」

「ちょっ!? セントラルあんたねぇ・・・ってまあ今はしょうがないか」


はは、こんな無防備で幸せそうな笑顔を見たら、アーシュも何も言えないか・・・


『ううっ、セントラルぅ・・・』

ハンカチ噛んで嘆いてる姿が目に浮かびそうなセカンの声。


「すりすりすりすりぎゅうぅぅぅぅっ・・・ふぅ、満喫したです。取り敢えず今日のところはこれくらいにしとくです」


そう言ってラルが僕の胸から顔を離して僕の顔を見上げてきたから、

「うん、自分の意志で止められてラルはえらいね」

って思わず頭を撫で・・・あ。


「ふにゃあぁぁ・・・ぎゅうぅぅぅ・・・すりすりすりすり・・・お兄ちゃああん・・・」

「カルア・・・あんたねえ、せっかく鎮火したところに燃料を投下してどうすんのよ・・・はぁ」



・・・5分後。

「さあ、それじゃあ最下層にダンジョンコアを設置しに行くですよ」

ラル、再起動。


「さて、それでセントラル、結局このダンジョンって今何階層になったわけ?」


ああ、そう言えば。


「ええっとですね、地上はこの部屋だけです。あの扉の先が地下への階段になってて、その先地下が30階層あるです」

「「「「「さっ、30階層!?」」」」」

『30階層!? って嘘でしょ!?』

「嘘じゃないですよ。カルアお兄ちゃんの魔力全力投球で一気に広がったです」

「「「「「・・・・・・」」」」」


「カーールーーアーー?」


ははは・・・


「ええっと・・・だってほら、『入れられるだけ入れちゃって』って・・・」

「そうだけど・・・そうだけど!!」


始めての事だから、加減だって分からないし。


「まあいいわ。でも30階層も踏破しなきゃいけないなんて、一体どれだけ時間がかかるのよ・・・」

「あ、それだったら大丈夫ですよー。って事で、全員まとめて『転移』ですぅ!」



そしてあっさり景色が変わる。

できたばかりのダンジョンの最下層へ・・・

年末年始は毎日更新!!

この下から作者に【お☆玉】をお願いします。

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