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スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました  作者: 東束 末木


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ボスの間で僕達を待っていたのは

ピノが「真なる最下層」に突入したのを見届け、クーラはモリスとともに不安定となったボスの間の復元作業を始めた。


「いいかい、今からダンジョンコアの結界を解除するけど、そうするとしばらくの間、コアから溢れ出た魔力が嵐みたいに吹き荒れるそうなんだよ。僕のほうは今にも崩壊しそうなこの部屋を支えるので精一杯になるから、君は設置されてる魔道具類と僕を守っていてよ」

「んーー、空っぽの魔力は少しずつ回復してるけど・・・足りるかどうか。でもまあ、泣き言は言ってられないわね!」

と、クーラが気合いを入れたところで、

「よし、じゃあいっくよぉーー!」


モリスは結界越しに結界具に魔力を注ぎ、そして結界具にその停止を命じる。

モリスの魔力を受けた結界具は機能を停止、これによりダンジョンコアを包む結界は解除された。


「さあ、来るよ!」

身構えるモリスとクーラ。

そしてダンジョンコアは強く光り輝き、その周囲に魔力を・・・

「ん? あれ?」

そよ風程度に撒き散らした。



「ええっと・・・この程度? いえ、何事も無いのなら凄くありがたいけど」

「あれえ? 使いきれない余剰魔力が少しずつ蓄積されてて、それが一気にって話だけど・・・あ!? もしかして・・・」

「何か心当たりが?」

「うん、アレにその魔力を使ってたのかも」


そう言ってモリスが指差したのは、床に空いた大穴、の底。

「そっか・・・余剰魔力でこの下にダンジョンを作ったのなら・・・」

「じゃないかなあ。しかも出来上がっちゃった後は維持するだけになって消費量が減るはず。未だに蓄積されていないって事はつまり・・・」

「まだ拡大中、もしくはリソースを必要とする状態・・・」



ちなみにこの時、カルア達はアニキゴブリンを討伐し、休息を終えて第9層に降りようとしていた。彼らによって大量に殲滅された2階層分のゴブリンや奪われた武器などの再構築に、ダンジョンはリソースを廻している最中である。



「うん、そういう事だったら今のこの状況も納得出来るかな。それに・・・どうやらこの部屋の修繕も始まったみたいだよ?」


床に空いた大穴は徐々に縮小し、落ちてくる天井の欠片も少なくなっていく。


「これだったらもう少しで僕の支えも要らなくなるかな。やれやれ、しかし何て言うかこの状況、喜んでいいのやら悪いのやら・・・」


コアに余剰魔力が無い事で、思いの外簡単に修繕が終わりそうなのは喜ぶべき事。しかしその余剰魔力は、カルア達が落とされてしまったダンジョンの作成に使われていたのだから。


やがて床の穴は塞がり部屋全体も安定、以前の静けさを取り戻した。

辺りを見回してほっと一息ついたモリスが部屋を支える結界を解除し、

「じゃあそろそろダンジョンコアの結界を再稼働させようか」

と話した、まさにその時!


第9層でノルトとカルアによる床と壁の引き剥がしが始まり、


『痛アアアアアァァァァーーーーーーーーイッ!!!!』

耳を(つんざ)くような悲鳴?が、部屋中に響き渡った。


「うわっ!!」

「何!?」

頭の中を掻き回されるかのような大きな音に、モリスとクーラは思わず耳を押さえてその場にしゃがみ込む。


そのふたりの前でダンジョンコアは真っ赤に輝き、そして、

『イヤアアアアアァァァァーーーーーーーーッ!!!!』


部屋中を魔力の嵐が吹き荒れた!



「これは一体・・・って、まずい!」

急いでこの部屋に設置されたギルドの設備と自分達を結界で守るモリス。

どうやらギリギリ間に合ったようで、設備に破損した様子はない。


「ちょっとコレどういう事? 一体何が起きたの!?」

クーラが問いかけるが、当然モリスにも分からない。

「うーーん、ダンジョンに何かが起きた、っていう事なのかなあ・・・分からないけど」


響き続ける騒音に顔をしかめながら、

「これって悲鳴? まさかだけど、ダンジョンが悲鳴を上げてるとか?」

「うーん、ダンジョンが意思を持っているなんて学説は昔からあるけど、今まで誰も証明できてない、()わば『トンデモ学説』扱いされてたんだよなあ・・・」

「なら試しに話し掛けてみる? もし勘違いだったとしても、他に誰も見てないから恥ずかしくないし」


そう言ってクーラは、

「ねえ! あなたここのダンジョンなの!? 『痛い』ってどこが痛いの!? 『嫌』って何が嫌なの!?」

ダンジョンコアに向かってそう叫んだ。


『ちょま痛い痛い痛いィィィィィィィィィィィィィーーーーッ!!! ヤーーーメーーーテーーーーーーッ!!!』


「・・・」

「これもう間違いなく悲鳴だよねえ。ていうかしゃべってるよねえ。『痛い』って・・・」

「ええ、もう確定ね・・・だけど、このダンジョンに一体何が・・・」

「うーん、それは僕にも分からないけど・・・そんな分からない事をしちゃいそうな容疑者には・・・大いに心当たりがあるんだよねえ」

「ああ、あの子達なら・・・」


そしてふたりは、

「「はあぁぁ・・・・・・」」

深い溜め息を吐き、

これは、あの子達が戻ってくるのを待つしかなさそうだなあ・・・

と、その場に座り込むのだった。




それから約1時間後。

ダンジョンからと思われる悲鳴が聞こえなくなり、それからしばらく経ってようやく魔力の嵐は収まった。

赤く光っていたダンジョンコアは、今は薄ピンク色の弱い光がゆっくりと明滅している。

息も絶え絶え、といった様子で。


「やれやれ。どうにか収まってくれたみたいだねえ。」

「よかった・・・じゃああの子達もそろそろ帰ってくるって事なのかしら」

結界を解除してそんな話をしていると、部屋の奥の壁の一部が光り、そこに扉が現れた。

「お、あれってもしかして。勇者達の帰還、ってやつかな」

「あの子達にはいろいろと聞かせてもらいましょ。ああそうだ、ピノ先生だけど、自分が助けに来たって事を秘密にして欲しいって。だからちゃんを口裏を会わせてよ?」


「りょーかーい。理由としては弟の成長を願う姉心ってところかな。ま、あのふたりの関係って何ていうか、見ていて微笑ましいっていうか、もどかしいっていうか・・・・・・でもまあ、そこもまた面白いんだよねえ」

「そうね、しっかしピノ先生も・・・積極的なんだか消極的なんだか」

「あれ? でもちょっと待って。ピノ君って彼らと一緒にあそこから出てくるんだよね? 多分変装か何かしてるんだろうけど、僕達はピノ君の事を何て呼べばいいんだろう?」

「ああ、そういえば・・・」


ロベリーに隠蔽のサンプルを渡したモリスだが、彼女からメタルピノスーツやそれに関する話は聞いていない。

そして一方のクーラも、

「確か、『気付かれないように変身していく』って・・・ん? 変身?」

呼び名などの話はピノから一切聞いていない。



やがて、ふたりが見守るなか扉は開き、

「ただいまぁ!! ここって・・・やっぱりボスの間だ! あ、クーラせんせーーい! と、あれ? モリスさん?」

「ほらカルア、後ろがつかえてんだから早く進みなさいよ! ああ、やっと帰って来れたわ!」

「セカンケイブよ、わたしは帰ってきた」

「ああ! 全員無事に帰ってこれてよかったな」

「本当だよね。まったく、一時はどうなるかと思ったよ」

カルア達が帰ってきた。


「よかった!! あなた達!! 本当によかった!!」

彼らの顔を見た瞬間胸が一杯になり、これ以上の言葉が出てこないクーラ。

そして、

「うんうん、いやあ本当によかったよ。最初に知らせを聞いた時は本当にビックリしたからねえ」

そう言いながらも、その時の焦った様子は彼らに微塵も感じさせないモリス。


そしてそのふたりの前に、カルア達に続き、

「!? 銀っ!?」

「っぶふぅ!?」

ルピノスが現れたのである。


(ねえちょっとクーラ君どうしよう、きっと『アレ』がピノ君だよね?)

(ええ、状況的にも間違いないと思うけど・・・銀・・・っていうかメタルなヒーロー?)

(ちょっと僕の想像を越えてきたよ? っていうか気を緩めたら笑い転げちゃいそう)

(ちょっと! それはやめてよ!? でもどうしよう、どうコンタクトを取れば・・・)

(うーん、これはもう、流れに身を任せるしかないんじゃないかな?)

(う・・・そうね。ピノ先生かあの子達が名前を呼ぶような流れに、何とか・・・)


彼らが小声で必死に打ち合わせる中、カルアからのスーパーアシストが炸裂する。

「クーラ先生ありがとうございました。クーラ先生がルピノスさんに依頼してくれたお陰で、僕たち何とか無事に帰ってくる事が出来ました!」


「え、ええ! 良かっタワー。ルピノスよねルピノス! エエ、ありがとうルピノス!」

「うんうんそうそう、ルピノス君だヨネー。やっぱりルピノス君に頼んで正解だっタヨー」

思わず棒読み片言で返事を返すふたり。


今にもボロを出しそうなその様子を見て、心の中で溜め息を吐くルピノスの中の人。

これはダメだ、すぐにこの場を去らなきゃ! と判断し、

「・・・ええ。何とか間に合いました。では私はこれで。後はお任せします」

急いでその場を去る流れに持っていった。


「ええっ!? もう行ってしまわれるのですか、ルピノス様!?」

名残惜しそうなアーシュ。しかし、

「君達はもう大丈夫だ。 だが今こうしている間にも、何処かで誰かが助けを求めているかもしれない。だから私は・・・行かなければならないんだっ!」


・・・助けを求めているのはパルムである。



アーシュにそう答えたルピノス。その言葉に

「ぶふっ」

「ぷっ」

吹き出しかけたふたりをキッと睨み、

「ではさらばだっ!!」

ルピノスはその場を逃げるように・・・いや、「颯爽と!」転移で去っていった。


「・・・主に愛の戦士ルピノス様、ありがとうございました」

「「「「ありがとうございました!」」」」


「「ブフウゥゥゥゥゥッ!!!!」」

(おっ、おもに愛の戦士!? ピノ先生自分でそう名乗ったの!?)

(「主に」? 愛のあたりを「主に」? って愛以外にも何か担当が!? てかそんなフワッとした・・・ああダメ、もう僕我慢の限界が・・・プッ)

(ダメよ! 最後まで我慢しなさい! ああでも私ももう・・・ブグッ)


新人冒険者パーティ「オーディナリーダ」のピンチに駆けつけ、見事救ったルピノス。

たった今までルピノスが立っていた場所から視線を離さず別れに()(こら)える子供達、そして後ろを向いて肩を震わせ必死で何か(・・)(こら)える大人ふたりを残し、颯爽と去っていったのである。


ありがとう、主に愛の戦士ルピノス!

さようなら、主に愛の戦士ルピノス!

がんばれ! 主に愛の戦士ルピノス!!




「さて、みんな落ち着いたところで、そろそろ転移してからの事を聞かせてもらえる?」

その衝撃の余韻を何とか乗り切ったクーラが、カルア達に問いかけた。

「あ、はい! でもその前にひとつ訊いていいですか?」

「ええ。どうしたの?」

「あの・・・ダンジョンコア、一体どうしたんですか?」


カルアが指差した先には、薄ピンク色の弱々しい光がゆっくりと明滅する、疲れて果てた様子のダンジョンコア。

「ええ、あれについてもあなた達に訊きたかったのよ。どうもあのダンジョンコア、あなた達の何かの行動が切っ掛けで、ああなっちゃったみたいなのよね・・・」



転移させられてからこれまで、自分達の身に起きた事を話し始めるカルア達。


「ふーん、じゃあ第7層はしゃべる雑魚ばっかりで、特に良いものも無かったと」

「そうなのよ! おまけに隠しダンジョンにしては階層ボスみたいなのもいなかったし、ホント意味が分からない階層だったわ」

「うーん、作りかけ(・・・・)だったのかしらね。・・・それであなた達、その階段を降りたのよね?」


第8階層の話を終えると、

「アニキゴブリンねえ・・・他のもだけど、そいつもやっぱり聞いた事のないゴブリンね。で、あなた達の作戦が見事にハマったわけか。うん、私もいい作戦だったと思うわよ。もしかしたら私でも初見だと引っ掛かるかもね。で、そのアニキゴブリンの強さはどれくらいだったの、ネッガー?」

「最初は師匠の1段階めを少し上回る程度、怒りによるパワーアップでそこから更に強くなりました」

「成る程・・・通常のゴブリンからは考えられない強さね」


そして第9階層の話が始まり、

「それだわっ!!」

クーラが叫んだ。

「あなたたち、第9階層に入ってからずっと、ダンジョンの壁とか床なんかの構造物を引き剥がしながら進んだ訳よね? 結構な長時間にわたって」


そして、ダンジョンコアも同意、そして責めるかのように激しく点滅を繰り返した。

それを見たクーラは、

「ほら、ダンジョンもそうだって・・・言って・・・はぁ!?」


『まったく非常識にも程があるわよ! 戦闘で破損とかならまだともかく、1階層分すべての床とか壁を剥がして持って帰るなんて普通やる!? あれってどれくらい痛いか知ってるの? ねえ!? 試しにあなた達の髪の毛、1本ずつ全部むしり取ってあげようか!?』


カルア達に向かってそう捲し立てているのは、ダンジョンコアの上に座る小さな女の子。いや、身長は小さな子くらいだがその姿形は16~17才くらいに見える。


「ええっと・・・あなた、誰?」

クーラが問いかけると、

『私? 見たら分かると思うけど私は精霊よ。このダンジョンコアに住んでいるの。このダンジョンの管理をやってるから、ダンジョンの精霊って事になるわね』

「「「「「せっ、精霊!?」」」」

最大級の爆弾発言が炸裂した。



「精霊って・・・お伽噺だけのものかと思ってた。ホントにいたんだ・・・」

そう絶句するカルア。

そのカルアを「何言ってんのコイツ?」という目で見て、

『あなた何で精霊がいないなんて思ってるのよ!? あなただって――』


と、ここでモリス乱入。

「いやいやいや、ちょっと待っておくれよ! 精霊!? 精霊だって!? 精霊ってあれだろ? すべての魔法の力を司る存在って言われてる・・・」

『あなたもそんなハードル上げないでくれる!? 魔法なんて人間だって普通に使えるじゃない! と・に・か・く! 私はこのダンジョンの管理者! 階層の管理をしたり、魔物を産み出したりとか――』


「あああああーーーーーっ!!」

そこで突然アーシュが叫んだ。

「じゃあ・・・じゃああんたがゴブリン達が言ってた『母』ってやつ!?」


それを聞いた精霊は、

『ふっふーーー、その通りよ! 私はこのダンジョンの管理者にして魔物達の母! さあ、分かったのならこの私を敬いなさい!』

そう言って胸を張る。だが!


「ふざっけんじゃないわよーーーー!!」

それがアーシュの逆鱗に触れる事となった。

『ひうっ!?』


「つまり、あんたがゴブリン達に命令してあたし達を『真なる最下層』とやらに転送させたって事よね? そこであたし達が死にそうになったのも、それもつまり、あんたのせい、って事なわけよね?」

『う・・・』


「そのくせ『痛い』だの『髪の毛むしり取る』だの・・・あんた舐めてんの?」

『え・・・ええっと・・・』

「あんたちょっと降りてきなさい」

『え?』

「今すぐここに来なさい! で、正座! ここに、せ・い・ざ!!」

『はっ、はいぃーーっ!!』


その勢いに押され、アーシュの前に正座するダンジョンの精霊。

彼女の行為は、ダンジョンの管理者としては至極まっとうなものなのだが・・・


「大体あんたね、何でこんな事を始めたわけ? それにあいつらが言ってた『地上大侵攻』って何よ? 人間を滅ぼしてあんたに何の得があるわけ!?」

『え、ええっと・・・それはですね、人間を滅ぼしたい訳じゃなくって――』


そして彼女は話し始めた。


『私たち5人姉妹は、それぞれダンジョンの管理をやってるんだけど、ある時ダンジョンコアが結界に囲まれちゃって、それから姉妹同士の連絡が取れなくなっちゃったの』

「5人姉妹?」

『そう。一番上の『フィラスト』姉さん、そして私『セカンケイブ』、で『サーケイブ』『フォーケイブ』『セントラル』の3人の妹達』


「え? その名前って・・・」

「うん、『セントラル』は分からないけど、あとは全部ダンジョンの名前だ」

「それって、精霊の名前がダンジョンの名前になったって事?」

「そうなるのかな・・・?」


『だから私、一番近くにいる末の妹の『セントラル』を探すために可愛いゴブリン達を彼女のダンジョンがある森に行かせたの。ほら昔からよく言うでしょ、『可愛いゴブには旅をさせよ』って』

「言うっけ?」

「しっ! 突っ込みは後にしなさい」


『だから、ゴブリーダーと彼のゴブラット、それにゴブリン達を行かせたんだけど、『セントラル』はまだ生まれたばっかりで小さいから、入り口が見つけられなくって・・・それでゴブラットを増やして探させる事にしたんだけど、この間あの子達、全滅しちゃったみたいなの』


「あれ? 何だかその組み合わせに覚えが・・・」

「ちなみに、その森ってどの辺り?」

『ここを真っ直ぐ南に向かった辺りかな。ゴブリーダーの子は最後に強い子に進化したんだけどダメだったみたい。あの子達には人間に襲われないように『人間は襲っちゃダメ』って言ってあったんだけど、野生のゴブリンと間違えられちゃったのかなあ・・・』


その精霊の話に、クーラとカルア達はこそこそと相談する。

(どうしよう、もの凄く心当たりがあるんだけど)

(クーラ先生、これってやっぱり、アレよね?)

(だと思うわよ。でもそれじゃあどっちかと言うと悪いのって・・・)

と、少しモヤっとした気分になりかけたが、モリスが発した、

(いいんだよ。それが人間と魔物の関係なんだから。それは彼女だって承知の上さ)

という言葉に全員納得し、開き直る事にした。


「じゃあさ、その森にまだ未発見のダンジョンがあるって事だよね?」

『ええ。と言っても、今はまだ広げてる最中のただの穴だと思うけどね』

「なるほど・・・それじゃあもうひとつ。ダンジョンコアの結界は、悪い奴が手出しできないように守るためのものだから外すわけにはいかないんだ。でも多分だけど、君たち姉妹の通信を遮断しないように改良する事だったら出来ると思う。そうなれば『地上大侵攻』はもうやらないって事でいいのかい?」


セカンケイブはそれを聞き、

『もちろん。だって私は他の姉妹の無事を確認したいだけなんだもの。人間がダンジョンに来てくれなくなっちゃったら私たちも困っちゃうしね。でも私のダンジョン、ちっとも人間が来てくれないのよね。こんなに可愛いゴブリン達を用意してるのに、どうしてかしら?』

と首をかしげた。



どうやら、人間の価値観とダンジョンの精霊の価値観には大きな隔たりがあるようだ。

ここから彼らの話し合いは、セカンケイブダンジョンを「賑わいダンジョン」にするための作戦会議へと突入していったのである。



もちろん正座は解除してから。

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