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スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました  作者: 東束 末木


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まるで一夜の夢の様な再会でした

「ちょっとカルア! あたしのお母様に『母さん』ってどういう事よ!?」


そんなアーシュの声が、なんだか凄く遠くに聞こえて。


アーシュのお母さん?


僕はじっとその人を見つめて・・・


「母さんじゃ・・・ない・・・」


「当たり前よっ!!」




「ちょいとカルア、どういう事か聞かせてくれるかい?」


ちょっと真面目な顔のベルベルさん。

ってそれはそうだよ! どうしよう、すっごく失礼な事言っちゃった!!


「すっ、すみません! あの、アーシュのお母さんの顔が僕のお母さんと似てたから、凄くびっくりして、つい・・・」

あわてて謝ったら、アーシュのお母さんが、

「まあ。誰かのお母さんに間違えられるなんて初めてだからちょっとビックリだけど、そんなの全然構わないわよ。でもそんなに似てるのかしら?」

「あっはい。顔も似てるけど雰囲気とかも何処となく・・・」

似てたんだ。


「カルア、あんたの母親って確か・・・」

「はい。4年前に・・・。だから絶対そんなはず無いのに、どうして僕・・・」


ああっ・・・せっかくのパーティなのに僕のせいで場がしんみりしちゃった。

どうしよう! 誰か助けて・・・誰でもいいから・・・



ヒュンッ 「え!?」


「ねえちょっとカルア、あなたお母さんの顔を間違えるなんてあんまりじゃない!? ずっと出てくタイミングを伺ってた私のこの気持ち、一体どうしてくれるの!!」


「えええぇぇーーーっ!? 母さんっ!? 今度は本当の!?」

ちょっと待ってちょっと待って、いろいろ追いつかない!!


「うんうん、やっぱりこうでなくっちゃ。さあ飛び込んでいらっしゃいカルア、あなたのお母さんとの奇跡の再会よっ!!」



突然目の前に現れた・・・母さん?

ああ、確かに母さん・・・だ! なんだけど、なぜここに? いや、なぜ生きてるの? じゃあ今までどこに? それにここで何してるの? それに、それに・・・



「おいこらリアベル! あんたまたいきなり帰ってきたと思ったらカルアの母親だって!? 一体どういう事なのか、きっちり説明してもらおうじゃあないか!! ええっ!?」

「あ、あれ? お母様お久しぶり、何年ぶりくらいかしら。・・・って、ええっと、もしかしてひょっとすると、何かものすごーーく怒ってたりします?」

「当然だね。むしろ何故怒られないなんて思えるのか、そっちの方が不思議だよ。ったく・・・あの様子じゃ、カルアは暫く使いもんにならなそうだね。リアベル、まずはあたしに説明おし! 始めっから何もかも全部だ!!」



ええっと、母さんが生きててでも死んだはずでここにいるはずなんてないしでもこれどう見ても母さんだしどうしてここに、あれ?ここってどこだっけ・・・さっきまで僕何してたんだっけ・・・えっと・・・ええっと・・・・・・・・・





焦点の定まっていない目で呆然と立ち尽くすカルア。

その様子に、再起動にはまだ暫く時間がかかると見たマリアベルは、リアベルからの事情聴取は場所を変えて行う事にした。

「リアベル、ララベル、こっちに来な。他のみんなはすまないが暫くこの部屋で待ってとくれ。モリス! カルアの事、頼んだよ」


ベルマリア家の母娘3人が移動した先は、パーティ参加者用として並ぶ控室の一室。

「さて、それじゃあ話を聞かせてもらおうじゃないか。まず最初にリアベル、あんたがカルアの母親ってのは事実なのかい?」

「ええ、事実よ。カルアは間違いなく私が産んだ子供。今からちょうど14年前にね」

「父親は?」

「それは『まだ』言えない。ちょっと込み入った事情があるの。彼について言えるのは、私達はちゃんと愛し合って結婚した、彼は生きているんだけど今は『こちら』に来る事が出来ない、そして彼はちょっと『特別な種族』のひと。この三点だけよ」


ここまで聞いたマリアベルは、思わず唸った。

「その『言えない』ってのは、あの子の父親との絡みなのかい?」

その問いにリアベルは辛そうな表情で首を振り、言葉を絞り出すように答えた。

「それは、あの子の・・・カルアの命に関わるからなの」



思いもよらぬ答えに息を呑むマリアベル。

「カルアの命に、だって? ・・・リアベル、じゃああんたが死んだ事になってたってのも、もしかしてそいつが原因、なのかい?」

「ええそう。全ては『カルアに生きて欲しい』っていう、私の願いから始まった事なの・・・」



そして、リアベルのひとり語りが始まった。


「全ての始まりは、カバチョッチョの足跡(そくせき)を辿る旅から始まったの。あの足跡巡りってね、実はスタンプラリーみたいなものが用意されているの。各史跡ごとに置かれたのスタンプの事を(はな)って言うんだけど、この(はな)を集める専用の帳面っていうのが用意されていて、この帳面の事を『華把挑帳(かばちょうちょう)』っていうんだけど、『(はな)』を『()』るを『(いど)』むなんて、すごく洒落た名前よね。しかもカバチョッチョの名前に掛かってるなんてもう最高よ。一体誰が考えたのかしらね。でね、その(はな)がまた何種類も用意されていたりなんかして、もう何回廻っても新しいっていうか、ああごめんなさい、これは見てもらった方がいいわよね。もう言葉だけで説明しようなんて、私もホントおっちょこちょいっていうか、周りに眼が行かなくなるっていうか」


そう言って「ボックス」から取り出した派手な図柄の帳面を広げ、ふたりに見せようとするリアベルに、

「あんたそれ、ひょっとして話が横道に逸れていないかい?」

「あ・・・」

「はあぁ。その反応(リアクション)、あたしは今、あんたがあの子の母親だって初めて実感したよ」



そして、今度こそ(・・・・)リアベルのひとり語りが始まった。


「その旅の途中、私はあのひとに出会った。そして出会った瞬間、唐突に理解したの。私はこのひとと結婚して子供を生むんだって。自分でも凄く不思議だったんだけどね。それからあのひとと一緒に旅を続けたんだけど、それから暫くして私のお腹の中にカルアを授かる事が出来て。そしてそれと同時に私は『未来視』の魔法に目覚めたの」


「未来視? ・・・未来視だって!?」


「ええそう。といっても完全なものじゃないの。視ることが出来るのはカルアに関する事だけ。それも断片的な場面場面と、それに連なる事象の流れしか視る事が出来ない、そんな中途半端な未来視だった。でもねお母様、それでもそれは、カルアの命を守りたい私にとって、一番必要な能力だったのよ」


ここで一度口を閉ざしたリアベル。

眼を閉じて当時の事を思い浮かべ・・・その(まなじり)からは一筋の涙が溢れる。

やがて再び開いたその瞳は、強い意志の光に彩られていた。


「私が最初に見た未来の断片、それは14歳になったカルアの死だった。そして私は絶望したの。だって、それは絶対に避けられない未来なんだって思ったから」


ここで再び息をつく。


「でもね、そうじゃなかった。次に私が視たのも14歳になったカルアの死だったんだけど、でもそれは最初の断片とは少し違っていたの。それで私は考えた。もしかしたら未来に繋がるたくさんのルートがあって、それによって違う未来を掴みとる事が出来るんじゃないかって。そうしたらね、まるで誰かが『そうだよ』って言ったかのように、その断片に辿り着くまでのところどころのルートが視えるようになったの」


息を呑むマリアベルとララベル。


「それから私は繰り返し何度も未来を見た。魔力が尽きるまでひたすら見続けて、魔力が回復したらまた尽きるまで。そして何千回、何万回って数のカルアの死を見続けた。あれは辛かったわ。気が狂っちゃうんじゃないかと思った。でもね、もし私が狂っちゃったら、他の誰もカルアを助ける事は出来ない。だから私は、私が狂う事を許さなかった」


辛そうな、しかし決意に満ちた表情。子を護る母の顔。


「私はあのひとと旅を続けながら、冷静に、ひたすら冷静に、何度も何度も繰り返し視続けた。そしてヒトツメの街に辿り着いた時の事だったわ。とうとう私、14歳を超えた笑顔のカルアの姿を見つけたの」


その時の事を思い出したリアベルは微笑を浮かべる。


「でね、ようやく辿り着いたそのルートではね、カルアが10歳になってすぐ、私が死んでいたの。私は思ったわ。ああそうか、きっと私が生きてるからカルアが死ぬんだって」


「「・・・」」


「でもすぐに思い直した。そんなの嫌だって。そんなのつまらないって。だから次は私とカルアが一緒に笑顔を浮かべる、そんな未来を探す事にしたの」


表情を引き締めるリアベル。次なる戦いが始まる。


「カルアが生きる未来を見つけた理由、それがヒトツメの街に来た事なんじゃないかって思った私達は、ヒトツメの街に居を構える事にした。そして、そこからまた繰り返しの始まり。私は未来を何度も何度も何度も何度も視て、でも何度視ても必ず私とカルアのどちらかが死んじゃうの。でも私は諦めなかった。そしてある時思い付いたのよ。『もし私が死んだ事にして姿を隠したらどうなるんだろう』って」


「もしかしてそれが・・・」


「ええお母様。それが唯一の正解ルートだった。私はついに見つけた。とうとう辿り着いたの。そしてその未来の中で私がカルアに再会できる最初の日、それがカルアの14歳の誕生日、つまり今日だったのよ」


その言葉にマリアベルは若干涙ぐみ、

「じゃあ・・・じゃあこれでカルアは死ななくてすむんだね?」

と胸を撫で下ろしたが、しかしそうではなかった。


「それがね、実はまだなの。まだカルアの危機は去っていない。危機はもうあと数年続くの。あの子の父親の事を言えないのもその為。そしてその危機が完全に終わるまでの間、私がカルアに会えるのは年に一度、カルアの誕生日だけなんだって。だからね、だからねお母様、今日が終わったら私、次にカルアに会えるのは1年後になっちゃうの・・・」


そこまで話したところで、リアベルはその場に泣き崩れた。

マリアベルとララベルはその小さな背中に歩み寄り、自分のぬくもりを送るかのように彼女にそっと手を添えた。愛する娘に、そして妹に。


そして静かな時間が流れ・・・やがて。


「リアベル、あんたがこれまでどれだけ頑張ってきたかはよぉーっく分かったよ。なら今からあんたがやる事はただひとつだ。カルアのところに行って、これまでの4年間とこれからの1年間、その5年分の隙間を埋めてくるんだよ。もちろん、あんたとカルア、両方のね」


優しい母親のその声に、リアベルは小さく頷き、やがてその場に立ち上がる。


「そうよね。こんなところで泣いてる場合じゃないわ。カルアが私を呼んでる、いいえ、私がカルアを求めているのよ! よし、泣くのはもう終わり! 待たせたわねカルア、今復活のお母さんがあなたに会いに行くわっ!!」


その声を残し、リアベルはその場から消えた。いや転移した。その行き先は当然・・・

「だあっ!! 全くあの子は昔から極端なんだよ! ララベル、急いで追うよ! あの勢いで詰め寄られたら、またカルアがフリーズしかねないよっ!!」

「はいっお母様!!」




「あ? あれ? なんだっけ、さっき信じられないような何かを見た気が・・・」

「それは私ですっ!!」 ヒュンッ

「ひうっ!?」

「さあカルア、4年ぶりの母の胸に飛び込んできなさい。さあ! さあさあ!!」

「あ、あ・・・」


「こーのバカ娘っ!!!!」

ガンッッ!!

「痛ッ・・・お母様、痛い・・・」

「リアベルっ! あんたはそこで黙って待ってな! まずはあたしがカルアに説明するから、それまでは接触禁止! いや、5メートル以内への侵入は禁止だよ! 分かったね!?」

「そんな危険人物みたいに・・・私お母さんなのに・・・」



そしてベルベルさんが色々説明してくれて、だんだん状況が飲み込めてきたんだ。

母さんが生きてた事、僕のために身を隠さなきゃならなかった事、そして父さんも生きているって事・・・

最後まで話を聞いた僕は、やっと冷静に話を受け止めることが出来るようになって。


それは時間を置いてくれて、そしてあの母さんを押しとどめてゆっくり説明してくれたベルベルさんのお陰で。

そして・・・


「まあそんな訳だからカルア、以前あんたに話した『下の娘』っていうのがつまり、あんたの母親だったっていう訳さ」


下の娘・・・ベルベルさんの下の娘・・・じゃあ・・・それじゃあ!?


「母さん! それじゃあ僕と分かれている間に『聖地巡礼』してたって事!?」

「ぶふっ!? だっ第一声がそれかいっ!? 他にもっと何かあるだろ!? ・・・ったくあんたたちは・・・どうしようもないくらい、間違いなく母子だよっ!!!」


いやだって・・・

冷静になったらそこが一番気になっちゃったんだから・・・

仕方ないよ、ねえ?


そんな僕に瞳を輝かせた母さんは、もの凄い勢いでこっちに近づいてきて、


「さすが私の息子。まず最初にそこに食い付くなんて、なんて将来有望なんでしょう。そんなあなたには、お母さんが訪ね歩いた聖地の数々をじーっくりとお話ししてあげる。あっそうだ、まずはこれを見せなきゃ話が始まらないわね。これはね、『華把挑帳(かばちょうちょう)』って言って・・・」


こうして4年ぶりに再会した母さんの、長く楽しい旅の話が始まったんだ・・・





「はあぁ、そういえばあの娘はああいう娘だったよ。さてと、じゃああたしはみんなに説明してこようかねえ」

そうひとり呟くと、マリアベルは離れた場所に控えていた面々に歩み寄って行った。


「あんたたち、すまなかったね。とりあえず状況は把握してきたよ。それでカルアたちだが・・・まあ見ての通りだ。しばらくはふたりきりにしといてやってくれ。あんた達にはその間、一体どういう事なのかってのを説明しておこうかね」


マリアベルは、先ほどリアベルから聞いた話を包み隠す事なく全て彼らに伝えた。

そしてその話の中の、とある部分に激しく反応した少女がふたり。


「そっ、それじゃああたしとカルアって従兄妹同士だったって事!?」

「つっ、つまり今日は・・・カルア君の誕生日っ!?」


そしてふたりはカルアの方に視線を送り・・・


「・・・今日はそっとしておいてあげたほうが良さそうね」

「・・・ええ、そうみたいね。・・・それにしても従兄妹、従兄妹かあ・・・姉弟よりも従兄妹かぁ」

「なっ!? 何故そうなるのかな・・・?」


「もしかしてカルア、うちに引っ越してきたりとか? うん、それが当たり前で、それにすごく自然よね。だってここがカルアのお母さんの実家なんだし。それにうちって、たくさん部屋が余ってるし。そっ、それに・・・あ、あたしの隣の部屋とかも・・・」

「ええっ・・・そっそれは・・・」

「そうよ! こうしちゃいられないわ。急いでお祖母様とお母様に相談しなくっちゃ! お祖母様ぁ! お母様ぁ! あとついでにお父様ぁ!」



すぐ向こうのマリアベル達に突撃するアーシュ、そしてその後ろ姿を呆然と眺めるピノ。

「これってもしかして私最大のピンチ!? どうしよう、私どうしようっ!?」

それに答える事が出来る者は、誰もいない・・・





「それでね、その人っていうのがなんと、あの『ここがオダーラの街です』を繰り返し言ってたあの村人のモデルだったのよ」

「ええっ!? ビックリだよ! だってまさかそんな事が・・・」

「でしょ? ふふふっ。・・・じゃ、今はここまでにしましょうか。まだまだ話は全然尽きないんだけど、話し足りない気持ちも一杯なんだけど、さすがに私だけしゃべるっていうのもね。だからカルア、次はあなたの話を聞かせてくれる?」



そして僕は話し始めた。父さんと母さんが谷に落ちて死んだって聞かされた、あの日から今日までの僕の大冒険を。



「そしたら『あんたの母親からあんたのことを頼まれてるんだからね!』とか言って」

「ふふ、サマンサ達には『私が帰ってくるまで、カルアの事をお願い』って頼んでたからね。もちろん私が生きてる事は秘密って事も」

「ああ、それでだったのかぁ。ってあの奥様『サマンサさん』って名前なの? 初めて知ったよ・・・」



「それでさ、ピノさんの料理のお陰でものすごく魔力が増えたみたいって分かったんだ」

「そうなんだ。ああ、それってもしかしたらお父さんの影響もあるんじゃないかな。とんでもなく魔力が多いひとだったから」



「そんな訳でモリスさんに時空間魔法を教わって、それから校長先生からも教わったんだよ」

「ふふっ、あなたの時空間魔法の適性って、きっと私のを受け継いだのね。これから先も楽しみ。もしかしたらお伽噺に出てくるみたいな完全な過去視や未来視も出来るようになるかもね」



「それが、そのあと「チームカルア」なんて名前になってね」

「なるほど。で、あそこの人たちがそのメンバーって訳かあ。なかなか個性的な人たちが集まったものね。みんな結構な有名人じゃない。ああそうだ、あとで私からもご挨拶しておかなくちゃね。『うちのカルアがお世話になってます』って」



「その時にさ、なんだか流行りの服と似てるねって話になって」

「それはそうよ。だって何度も視てるうちに流行りの服とか分かっちゃったし。それと似た感じに仕立ててもらった服なんだから、予習は完璧でしょ?」

「ああ、だからサイズもぴったりだったんだ・・・」



「それで僕が使ってるのが、そのロベリーさんの付与術ってわけ」

「『付与の聖女』かあ。私も今度二つ名を考えてみようかな。何かカッコイイやつ」

「『聖地の周回者(サーキットランナー)』みたいな?」

「あはははは・・・それはイヤ」



「そのペンダントとブレスレットをセットでピノさんにプレゼントしたんだよ」

「そっか、カルアも女の子にプレゼントするような年になったのかー。それじゃあカルアはそのピノちゃんが好きって事なのね」

「それは・・・まだその『好き』ってのがよく分からないんだ」

「そうかそうか。まあ悩みなさい息子よ。答えは自然と心のうちに湧き上がってくるから」

「そう、なのかな?」

「そうよ。お母さんを信じなさいって。でも・・・ナックルダスターでも良かったんじゃない? お母さんもアレ貰った時すごく嬉しかったし」

「ええっ!? あれってやっぱり父さんからのプレゼントだったの!?」



「で、それがアーシュだったってわけ」

「そうかそうか、従兄妹と知らず劇的な出会いって訳ね。これもまたドラマチックねえ。で? もしかしてアーシュちゃんも好きだったりするの?」

「ええ? アーシュとはそういうんじゃないよ。何て言うか、ライバル? 友達? 親友? みたいな感じかなあ」

「ほほう、『親友』かあ・・・ふむふむ、それはそれで・・・ふぅーん」



だいたいこれで話し終えたかな?

もちろんまだまだ伝えたい事はたくさんあるんだけどね。

「そっか、うん! カルア、これまでよく頑張ったね。お母さんとっても嬉しいわ」

「母さん・・・」

「じゃあ、一緒にみんなの所に行こうか。お母さんもちょっとお話したい事があるしね」



そして母さんとふたり並んでみんなの所へ。

「すみません。なんだか僕達だけで話しちゃって」

「いいんだよカルア君。気にしない気にしない。君の事情は校長から全部教えてもらったから。むしろもっと話しとかなくっていいのかい? 僕達に遠慮する事なんてないんだよ?」


「あなたがモリスさんね。カルアのいいお兄さんになってくれてありがとう。そしてこれからもよろしくお願いします。それに他の皆さんも、これまでカルアの事を可愛がってくれて本当にありがとうございます。私はまだ暫くカルアと一緒に暮らすことは出来ないけど、皆さんにでしたら心から安心してカルアをお預けする事が出来ます。これからも、カルアの事をよろしくお願いいたします」


「あはははは、そうあらたまって言われちゃうと照れちゃうなあ。けど、カルア君のことは僕達にまかせてよ。ちゃんと暴走は食い止めてみせるからさ」

「モリスさん・・・ヒドイ」

「ふふっ、ホントにカルアが言ってた通りのかたね」


そう言って母さんは軽く笑い、

「皆さんに伝えなければならない大切なお話があります」

と真剣な表情で言葉を続けた。



「それは、私が未来視した『カルアの死因』についてです。このルートではどうなるのか分かりませんが、カルアが死ぬすべてのルートで、カルアの死因は常に同じでした」


僕の・・・死因・・・


「カルアは恐らく今から数ヶ月以内に、よく分からない『何か』に襲われます。そして、それを撃退する事で、直近の危険は回避できるはずなんです。それ以降の死因についてはルートによってバラバラで、何が起きるのか私にも全く分かりません」

「それで、その直近の『何か』というのに何かヒントのようなものは?」


「私も断片的なシーンでしか視る事が出来ないものですから断定は出来ませんが、何と言うかあれは『ドロドロとした何か』としか言いようのないものでした。これくらいしかお伝えできず、申し訳ありません」

「ドロドロと・・・それが魔物であればスライム、だろうか?」

「うーーん、今のところそれが一番可能性が高いかなあ・・・でも視野が狭まるから断定は避けたほうがいいだろうね。無理に答えを探そうとしないで『ドロドロとした何か』とだけ頭に入れておくのが良さそうだよ」

「確かにそうですね」



「それでは皆さん、よろしくお願いします。・・・ところで、さっきからずっとあそこで泣いているあの方は一体?」

「ああ、ミレアかい? あの娘の事だったら気にしなくっていいよ。『なんて素敵にドラマチック』とか言って感極まってるだけのあたしの弟子さ」

「そう・・・さすがお母様のお弟子さんだけあって個性的な方なんですね」

「言っとくけどリアベル、カルアもあたしの弟子だからね?」

「お母様? お願いですから、カルアをおかしな子にしないで下さいね?」

「そりゃあもう遅いよ。あの子、あたしんとこに来る前から相当だったからねえ」



そうして、その後も色々話をして・・・

「それでは、そろそろ私はまた身を隠します。皆さん、カルアの事を本当によろしくお願いします。じゃあカルア、来年のあなたの誕生日にまた会いましょう。あっそうだ、誕生日おめでとう。私のカルア・・・元気で・・・」


そう言い残して母さんは転移していった・・・




「ありがとう母さん。僕、がんばるよ」

そろそろ例のアレお願いしてもいいでしょうか?

ポイントが少ないと作品の存在自体に気付いてもらえないんです。

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