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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

パニック関連

あらゆる人や情報と接続されて、自分と他の境界線が分からなくなった未来世界

「…………」

 頭が混乱してくる。

 様々な情報が流れ込んでくる。

 それが無線で脳や神経に直接接続してくるネットワークのせいだとは分かってる。

 分かってるがどうしようもない。



 流れ込んでくるのはネットにのってるニュースだけではない。

 ゲームや漫画などの娯楽だけではない。 

 誰かが配信してる言葉や声だけではない。

 接続されてる全てだ。

 ありとあらゆる人間の考えや思いも流れこんでくる。



 目の前の誰かから、見えないところにいるあいつ。

 そんな全ての人間に例外なく触れていく。

 思考の全てが流れこんでくる。

 一つ一つは他愛のないものだ。



 今日は何を食べようか。

 この問題の答えはなんだろう。

 あの野郎、絶対に許さない。

 やっちまったよ、どうしよう。

 やった、上手くいった。

 …………こんな考えが常に流れこんでくる。



 そのうち境目がなくなってくる。

 流れ込んでくる他人の考えにおかされる。

 いったい自分はどこからどこまで何だろう?

 今考えてるこの思考は、自分のものなのだろうか?

 それとも、流れ込んできた他人のものなんだろうか?

 それが分からなくなる。



 そう考える自分自身も他の誰かに影響を与えていく。

 自分の考えや思い、それを他の誰かも抱いていく。

 口に出して、行動にあらわれる。

 境目がない。



 究極の相互理解というものだろう。

 人はわかり合えるという言葉の、究極。

 誰もが相手の考えを理解し、自分の全てを相手が理解している。

 砕けた言い方をすればこうなるだろう。

「みんな、仲良く!」



 最悪だった。



 人は理解し合ってはいけない。

 一緒にいてはいけない。

 仲良くしてはいけない。

 互いの間に距離は区切り、境目が必用だ。

 それを多くの者が理解した。



 自分が自分でなくなる。

 全てが混じり合う。

 相手の意思や気持ちが否応なく流れ込んでいく。

 自分の全てが、かくしておきたい事まで他の全てに伝わっていく。



 そうなったらどうなるか?

 結果がそこらに転がっている。

 自分だけで動かせなくなった体があちこちの転がってる。

 口からは意味の無い言葉があふれている。

「明日の仕事は…………公園で待ち合わせて…………こいつで殺してやる…………速く助けなくちゃ」

 様々な人間の思考が共有された。

 何十億という人間の思考が均等に分け与えられていく。

 そうなれば、一人一人の体の制御などできるわけもない。



 全てが均等になった。

 富や稼ぎだけではない。

 思考が、言ってしまえば霊魂そのものが等しく分け与えられた。

 魂の再配分だ。



 それは一人一人の破壊だった。

 尊厳も何もない。

 究極の無個性だった。

 個性を抱く一人一人、個人というものが消えたのだから。



 人工的な共有意識。

 人はそれを手に入れた。

 ひとつになった。

 それが人を潰えさせていった。



 かろうじて呟いた誰かの言葉がそれを示している。

 自分を失い、全てが混じり合った世界。

 それを彼は端的にあらわした。

「俺は誰なんだ?」

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