始まりの話
一発の発砲音の後、何かが駆ける音が聞こえる
音から推測するに四足歩行、鈍重ではあるが早い足音だった
一見するとイノシシのようにも見える獣だった
獣の後ろに追従して男が走っていた
てめー!とか逃がすかー!など暴言を吐きながら散弾銃を片手に追い回していた
時折、思い出したように銃を何度か撃ったのち天高くこう叫んだ
「晴!そろそろいいだろ!」
時を同じくして木々の隙間に一人の男がいた
ライフルを構え、カムフラージュ効果の高い狩猟用の服を身にまとい
すこしかがんだ状態で静かにスコープを覗いていた
彼の銃口は一撃目の発泡時から常に獣に向けられており、何箇所か指定されている狙撃ポイントに向かっていることを確認していた
「今回のやつはフォレスト・ボアだから、頭じゃ意味がないな」
などとつぶやき、頭部から胴体に狙いを移し、トリガー前のレバーを動かして装弾する
「晴!そろそろいいだろ!」
という叫び声が聞こえた刹那、一瞬息を止め彼はトリガーを引いた
銃弾はフォレスト・ボアの肺あたりに命中し、しばらく走った後にフォレストボアは倒れた
それを確認した彼はセーフティをかけながら獲物へ向かって移動した