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そらのそこのくにせかいのおわり(改変版)5.5 < chapter.15 >

 数時間後、タケミカヅチら四人はフードコートでの対話から同ショッピングモール内での買い物、ゲームセンター、カラオケ、駅前繁華街のそぞろ歩きを経て解散した。まるでごく普通の少年少女のような過ごし方だが、ただ遊んでいたわけではない。これはいわゆる、『現地視察』というヤツだ。

 国民の75%がワクチン接種を終えた今、二〇二〇年春頃から一年半以上にわたって続いた外出自粛や時短営業、諸々の制度変更について、徐々にコロナ禍以前に戻す動きが出ている。けれども、まだまだ安全とは言い難い。感染力がこれまで以上に強い新型株も、ほんの数例ずつではあるが、確実に海外から持ち込まれている。

 熱心に祈りを捧げる信者の声だけでは、どうしても取得情報に偏りが生じてしまう。天上から『神の眼』で眺めてみても、現場の空気感が分からない。実際に人の身体、『器』の中に入って五感で町の様子を見て回らねば、正しく状況を把握することは難しいのだ。

 ごく普通の中学生、ネットのちょっとした人気者、涼し気な顔のイケメン高校生、誰もが振り向く美少女小学生──というそれぞれの立場から現地視察を終えた神々は、『器』を出て、それぞれの持つ固有の世界、神域や幽世などと呼ばれる自宅マイホームへと帰った。

 時代の影響をまったく受けずに古代の海や森に住み続ける神もいるが、召し抱える英霊に建築・設計・土木関係者が多いせいか、タケミカヅチの自宅マイホームは過剰に近代化されている──というより、これはもう未来都市だ。予算や人員の確保、入札競争、関係各社への根回し、裏金の捻出にかける時間と労力が不要であるため、全力を発揮した技術者たちが大暴走。スカイツリー級の超高層ビルがジャンジャン建設され、ライフラインの地下共同溝化、集約管理システムはとうの昔に構築済み。昭和の子供向け科学雑誌で目にしたような空飛ぶ車や透明なパイプ内を走行するリニアシャトルも、この世界では何十年も前に大衆化し、英霊たちの公共交通機関として日常的に使用されている。

 この空間にいる間、タケミカヅチはなんとなく、雰囲気重視でスーツ姿に変身する。それもこれも、侍従として召し抱えている男の影響が大きい。大手ゼネコンで定年まで社長秘書を務め上げたサトウハジメ氏は、今日も一分の隙も無くビシッとスーツを着こなし、さも当然のようにスッと手を差し出す。タケミカヅチのほうも、ごく自然にビジネスタイプの革鞄を手渡す。が、中に何か入っているわけではない。雰囲気だ。これはもう、完全に雰囲気を演出するためのアイテムなのだ。

 侍従──というよりは社長秘書のサトウハジメ氏と共に黒塗りの高級車で移動し、この世界で一番高い建物へ。高速エレベーターで高さ999メートルのビル屋上へ上がると、そこにはこの世界で最も高貴な建築物、鹿島御殿がある。純和風の平屋建て。書院造を基調としながらも、違和感のない程度に明治期以降の近代建築様式を取り入れている。一見するとオープンな縁側に見える外廊下も、スイッチ一つでスライドドアが閉まってサンルームになるオール電化住宅だ。手動の扉なんて、この屋敷には一枚も無い。当然その他の箇所も最新鋭。見る者が見れば興奮しすぎて夜も眠れなくなるような、新時代建築技術の見本市会場と化していた。

 顔認証システムと人感センサーで音も無くスルスルと開く玄関扉をくぐると、そこには目に入れても痛くない愛妻、大雷がいる。

「おかえりなさいませ、タケミカヅチ様」

 三つ指をついて出迎える割烹着姿の妻を見るなり、タケミカヅチは途端に相好を崩し、だらしのない笑みで大雷を抱き締める。

「大雷~♡ た・だ・い・ま~♡」

 主のプライベートモード移行を察知し、サトウハジメ氏は無言で頭を下げ、速やかに玄関わきの使用人部屋に引っ込んでいく。判断の速さと行動の滑らかさは、「さすがプロ」としか言いようがない。

 だが、その直後だ。

 ものすごい勢いで玄関の引き戸を開け放ち、まるで道場破りのように押しかけて来た者たちがいた。

「たーのもーぅっ!」

「わはははは! ここがタケミカヅチ殿のご自宅か!」

「思ったよりも狭いのう。儂の宮殿には五十の門に二万の兵、七つの後宮に千人の妃がおるぞ? 妻が一人とは、なんと無欲な」

「すっごーい! 超近代化されてるじゃーん! 和っぽい内装なのに完全空調でしょ、この家!」

「おお! これが日本の『玄関』とやらか! 本当に靴を脱ぐのだな!」

 と、大騒ぎしているのは見目麗しい美女・美少女の一団だ。総勢十二名。一目見てタケミカヅチに比肩する神格の神々だと分かるのだが、どの顔にも見覚えがない。

「はて、どちらのお嬢さん方かな? こんなにお美しいお嬢さん方をご招待した覚えは無いのだが……?」

 と言いながらも、なんとも嫌な予感が全身を這い回る。『このお嬢さん方』に見覚えはないが、彼女らの装備品には見覚えがある。

 聖剣・聖槍・聖盾・聖冠──どれもこれも、世界各国の主神クラスの男神が身につけていたシンボルアイテムだ。ということは、まさか──。

「わはははは! やはり分からんか! 俺だ、俺! ニョルズだ! 好き放題に暴れまわっておったら、主様に怒られてしまってなぁ! 女に変えられてしまった!」

 仁王立ちで明るく笑うワイルドな美女に、元の髭面筋肉オヤジの面影はない。頑張ってそれらしい要素を探そうとしても、目の色と髪の色が同じ以外、何一つそれらしいポイントが見当たらなかった。

「ニョ……ニョルズ殿……? 本当に……?」

「応とも! 主様にな、修業を積んで、これまでになかった能力を得よと言われたのだ! そこで手っ取り早く、『贖いの救世主』を産んだ処女神に弟子入りすることにした! よろしく頼むぞ、大雷殿!」

「……はい?」

「大雷の、弟子に……?」

「ああ! 修行と言えば、師について鍛錬に励むことだろう? 弟子として、どんな雑用もこなしてみせよう! 何なりとお申し付け頂きたい!」

「そ、そんな! わたくしが命令を下すなど、とても……!」

「どこまでが主様の命だ? うちに下宿しろとでも言われたのか?」

「いいや。だが自国に引きこもっていたのでは、今までと何も変わらんからな。新型コロナウイルスの感染と人心の暴走、いずれも抑え込みに成功している貴国に学びに来た。これは最も理に適った行動であろう?」

「うむ、まあ、そうだろうが……」

「そんなわけだから、しばらく世話になる! 正妻の下につくのだから、側室か妾のような立場だ。俺のおっぱいにムラムラしたら、手を出してくれても良いからな! 宿代の代わりに払えるモノはそれくらいしか持っておらん! わはははは!」

「オッサンの乳など揉んでたまるか! いらん! 帰れ!」

「そこをなんとか!」

「断る!」

「この通りだ、頼む!」

 勢い良く頭を下げるニョルズ。他の神々も、申し訳なさそうに身を縮めている。

「……なぜそこまで? 貴殿らなら、身を寄せる場所くらいいくらでも……」

「いや、俺自身もそう思っていたのだが……女の身体にされて弱くなった途端、命やら貞操やら神器やら、色々と狙われてしまってなぁ……。ほんの四時間足らずで、こんなにひどい目に遭うとは思わなんだ。正直な話、ここまで命辛々(いのちからがら)逃げ延びてきたようなものでな……」

「そんなに恨みを買っていたのか」

「どうやらそのようだ」

「他の神も?」

 この問いに、全員が一斉に頷く。国外にまでその名が轟くほどの武神・軍神・英雄神たちは、築き上げた武勇伝と同じかそれ以上に、買った恨みも大きかったようだ。

 よくよく見れば、数人の衣服は胸元や腰回りに不自然な損傷がある。どれもこれも『女』として襲われ、衣服を剥ぎ取られたことが容易に想像できる破れ方だった。

 アポなし訪問とは言え、一応は客人。それも世界に名だたる英雄神たちが、庇護と学びを求めてやってきたのだ。ここで叩き出してしまっては、後々、各神族との関係が悪化しかねない。

「あー……うむ。まあ、仕方ないか。身体が元に戻るまでという条件であれば……」

 ため息交じりに承諾するタケミカヅチに、大雷がフフッと微笑む。

「ん? なんだ?」

「いえ、失礼いたしました。お優しいことと思いまして」

「念のため言っておくが、こいつらを側室扱いはしないからな。中身はオッサンなんだ。見た目が女でも、俺は絶対に手は出さんぞ」

「分かっております。だって、タケミカヅチ様はわたくしの旦那様ですもの。信じておりますよ? ね?」

「ム……まったく妬いてくれないのも、それはそれで……その……俺の負けみたいで、悔しいな……」

「フフッ♡ お可愛らしいこと♡」

「カ……カワイイとか言うな……っ!」

 二人のラブラブぶりを見せつけられて、十二の神々はガクリと項垂れた。

「うちの妻たちは全く庇ってくれなかったぞ……儂が弟どもにぶん殴られてる最中に、『ザマアw』って……」

「日頃の行い、というヤツよのぅ。何があっても、妻と息子だけは味方と思っておったのに……はぁ~……」

「僕だって、ちゃんと愛し合えてるつもりだったんだけどなぁ……」

「弟子入り先、間違って無さそうだな」

「ああ……学ぶことが多い気がする……」

 物事を武力で解決し、秩序を男性的上下関係で維持してきた旧時代の神々にとって、現代人の多様な人生観は埒外の思想である。年下かつ格下の妻にからかわれる男神の様も、それが『恥』でなく『ほほえましい会話』に見える現状も、彼らが権勢をふるった神代の世では絶対にありえない事だったのだ。

 何もかもが変化を続けている。

 技術も、思想も、気候も、環境も、生物も。

 己の守護対象を守り抜くためにも、もっと広い視野と柔軟な思考が必要となる。

 神々はいま、改めてそのことを肝に銘じた。

 と、その時だった。

「タケミカヅチ様、伊勢の方より、新たな指令が」

 侍従のサトウハジメ氏は音も無くそっと近づくと、耳元でそう囁いた。

「概要は?」

「『穢れ』に呑まれた人間の浄化と、闇堕ちした神の浄化。それが不可能であれば討伐をと」

「神が闇堕ちするほどの『穢れ』だと? そんなもの、いまさらどこに……?」

「長崎県諫早市でございます。本日午後六時ごろ、諫早市内にて放火事件発生。その火災により家屋内の竈、井戸、鬼門除けの社、通り沿いの地蔵も被害を受け、竈神から連鎖的に井戸の守神、社の稲荷、地蔵が闇堕ちになったと……」

「なるほど。ということは、放火に使われたのは竈の火か」

「はい。破壊行為に使われたことで神格を損ない、闇堕ちとなり果ててしまったようでございます。近くの寺の霊獣と近隣住宅の守神たちが対応に当たっておりますが、人口減少著しい地区であることから十分な信仰心が得られず、今にも取り込まれかねない有様だと……」

「そうだな……一度に四体もの神が堕ちたとなると、生半可な神格では、逆に……。大雷、留守の間、客人たちの相手を頼む」

「かしこまりました。それでは皆さま、どうぞこちらへ」

 そう言って大雷が案内しようとすると、ニョルズは片手を突き出して、断りの意を示した。

「闇堕ちが出たと聞いて、黙って無視できるような我らではない」

「タケミカヅチ殿、加勢いたしますぞ」

「と言っても弱体化しておりますゆえ、神使の霊獣と大差ない戦闘力ですが」

「僕も行きますよ。構いませんよね?」

「駄目と言われても、勝手について行きますがね」

 姿かたちを女にされても、その眼に宿る炎は、まさしく『戦う男』のそれだった。

 タケミカヅチは一同の顔を見渡し、大きく頷く。

「分かった。サトウ、皆に軍馬を用意しろ」

「申し訳ございませんタケミカヅチ様。私めの独断にて、既にこちらを……」

 サトウハジメ氏が玄関ホールの壁に手をかざすと、それまでそこにあった絵画と漆喰壁が姿を消し、ほんの一瞬で地下駐車場の様子を映した大型モニターになった。この玄関ホールの装飾はプロジェクションマッピング技術を応用した投影システムで作り出されており、季節や招待客に応じて異なった設えを演出できるのだ。

 壁に投影された地下駐車場の防犯カメラ映像には、ガレージで働くメカニック担当の英霊たちが映し出されていた。彼らが得意気な顔で指し示しているのは、十三台のオフロードバイクである。

「ホンダCRF250Lに呪詛対策塗装を施した特別仕様車でございます。一般人気では取り回しが容易なヤマハ車に一歩及ばず、といったところですが、優れた力強さと卓越した加速性能を両立し、オンロードでもオフロードでも安定した走行を可能としたこちらの車種であれば、対闇堕ち戦においても十二分に力を発揮できることと存じます」

「いいチョイスだサトウ。よくやった」

「もったいないお言葉でございます」

「皆、バイクには乗れるな?」

「あー……大丈夫だ。たった今マニュアルをダウンロードした。我らの運動能力であれば制御は容易い」

「では行くぞ。ついてまいれ!」

 パァンと一つ柏手を打ち、自らの装束をライダースーツへと変えるタケミカヅチ。十二の神々もそれに倣い、意気揚々と鹿島御殿を後にする。




 一時間後、青銅鏡越しに『タケミカヅチ&美女ライダー軍団vs.百人合体! 巨大融合怪獣イサハヤンX(仮称)』の戦いを目にしたアマテラスは、特大のため息とともに、ゆっくり床へと倒れこんだ。慌てて御簾の内側に駆け寄る御付きの霊獣・金狐と銀狐。二頭の霊獣に抱き起されながら、アマテラスは投げやりな口調で言い放つ。

「あぁ~んのバカ兄貴ぃぃぃーっ! なんでいつも、こう、無駄にクソデカスケールなことになっちゃうわけ? しちゃうわけ? なんなの? もう本当に何なのあの人! ちょっと金狐! 大雷ちゃんのところ行って、旦那の手綱はちゃんと握っとけって言ってきなさいよ!」

 金狐は静かに、首を横に振る。

「御可哀想でございますわ。大雷様の腕力で握れるような、細い手綱ではございませんもの」

「だったらフッくんに! 兄貴の大暴走を止められるのはあいつくらいでしょ!」

 これには銀狐が返答する。

「フツヌシ様には、感染状況が悪化している印欧諸国への現状視察および現地神族への助力の命が下っております。こちらはアメノミナカノヌシ様からの勅命でございますので、タケミカヅチ様のブレーキ役をお任せするわけには……」

「うぅ……痛む胃なんか無いはずなのに、なんだかとっても胃が痛いわ。これが神経性胃炎というモノね。決めたわ。今日から向こう三千年、消化器内科への加護を特盛にするわよ!」

「それは素晴らしい。さっそく、管狐の手配を」

「ええそうね、そうしましょう銀狐。現代人は、だれもかれも胃の腑を病んでおりますものね」

「ちょっとちょっと! 金さん銀さん! ここはツッコむところじゃないかしら?」

「いいえ、アマテラス様。私共は本気でございますわ」

「長引くコロナ禍に、医療現場は疲弊しきっております。これまでも幾度となく管狐を派遣してまいりましたが、感染者数が少ない今こそ、さらなる体制強化を……ああっ!? ア、アマテラス様! 鏡をご覧くださいませ!」

「え? ……ぎゃあああぁぁぁーっ!? ス、スサノオぉぉぉーっ! なんでアンタが長崎にいるのよぉぉぉーっ!」

「あら! まあ! 他の武神の皆様方も! さすがのフットワーク! 疾風迅雷とは、このことでございますわね!」

「金狐! 感心している場合ですか! アマテラス様、いかがいたしましょう!」

 青銅鏡に映る諫早市の光景は、もはや特撮怪獣映画の世界だった。

 炎を吐く巨大怪獣、火災から逃げ惑う人々、泣き叫ぶ子供、吠える犬、震える子猫。

 ライダー軍団に次々と襲い掛かる謎の怪人は、怪獣から発せられた邪気・瘴気に当てられた虫や小動物が、闇のモンスターへと変化したものである。数にものを言わせて押し寄せるそれらを、応援に駆け付けた神々が力任せに薙ぎ倒してゆく。

 巨大怪獣にはダイダラボッチのジャーマンスープレックス、天狗の大風、かまいたちの真空刃しんくうは、海坊主の腕挫十字固うでひしぎじゅうじがためが炸裂し、ここだけ見れば怪獣映画というよりも、妖怪映画に近い。

 青銅鏡から投影される立体映像の中で、スサノオが叫ぶ。

「見せてくれよう、日ノ本の国の底力を! プリウスミサァァァーイルッ!!」

 路上に放置されていた自動車に乗り込み、アクセル全開で突撃するスサノオ。

 アクセルペダル・ブレーキペダルの踏み間違え事故などで使用される『プリウスミサイル』というネットスラングは、その殺傷能力の高さから非常に強い『言霊』を有している。スサノオは言霊パワーで超加速しながら、瓦礫を踏み台に大ジャンプ。プリウスは巨大怪獣のドテッ腹に直撃し、そのまま体内深くにめり込んだ。

 大ダメージに倒れる怪獣。一気に畳みかける神々。

 止めに神の名を冠した必殺技、《神明雷剣タケミカヅチ》が撃ち込まれ、巨大怪獣は討伐・浄化された。

 邪気が祓われた戦場には、元の姿に戻った守神、稲荷、地蔵、その他融合状態にあった霊獣たちが。そして彼らの真ん中に、ボロボロになったプリウスが停まっている。

 スサノオの名を呼びながら、神々は大慌てで事故車に駆け寄った。だが、彼らの心配は杞憂に終わる。歪んだ扉が内側から蹴破られ、無傷のスサノオが姿を見せたのだ。

 決死の特攻から無事生還したスサノオは、興奮気味にまくしたてる。

「心配ご無用ォォォーッ!! どれほどひどい事故であろうと、ドライバーはほぼ無傷! これこそプリウス! 厳しい安全基準と優れた品質管理により生み出される高クオリティ国産車! だがしかし! だからこそ生じる『加害者のみ無事』というお約束パターン! 何たる皮肉! 何たる悲劇! 自動車は何も悪くない! 自動車メーカーも悪くない! ドライバーが認知症に片足突っ込んでたらエンジニアやディーラーにできることなんかほぼほぼ残ってねえんだよコンチキショーウッ! 日本車を称えよ! モノづくり日本の技術力を称えよォォォーッ!」

「そうだそうだーっ!」

「日本車バンザーイッ!」

「さすがは愛知県の守護神! 良い事言うぜ!」

「ジャパンクオリティ! ジャパンクオリティ!」

 戦いに勝利し、誰もが極限の興奮状態である。どこからともなく謎のトヨタコールと胴上げとビールかけが始まってしまい、収拾がつく気配は微塵もない。

 再び倒れ込んだ──というよりはコントのようにズッコケたアマテラスは、腹の底から絶叫した。

「意味わかんない! まったく全然わかんないわよ! どうして! あんたらは! いつも! いつでも! そんな感じになっちゃうのよォォォーッ!」

 発狂気味のアマテラスを前に、金狐と銀狐はそっと顔を見合わせる。


 彼らの手元の端末には、フツヌシを追って欧州入りした管狐から巨大怪獣出現の知らせが舞い込んでいた。


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