表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

第三回なろうラジオ大賞用

ラスボスはお味噌汁、ではなく彼女かもしれない

作者: 城河 ゆう

こう言う料理、アニメとかでたまに見ますよね(笑)

 俺は今、この後の人生を大きく左右するであろう分岐点に立たされている。


 事の発端は3日前。

 彼女がデートの最後に『今度、家に来ない?こないだ言った、特製お味噌汁を食べてみて欲しくて』と言ったので、俺は、即OKした。


 当たり前だ、可愛い彼女の手料理である。


 食べたくないわけがない。


 だが今、その時の軽率な自分をぶん殴ってやりたい気分になっていた。


 軽く閉じていた目を開き、可愛らしいガラス製の天板が乗ったローテーブルの上に置かれた物……いや“物体(モノ)”に視線を向ける。


 ソコには、愛しの彼女が本命の味噌汁を作る間、小腹を満たすために、と作ってくれた“玉子焼き”が置かれていた。



 “玉子焼き”である。



 誰が何と言おうが“玉子焼き”なのだ。



 だって、彼女が「少し時間がかかるから、お腹空かないように、先に玉子焼き作ってあげるね♪」と言っていたのだから。



 そう、たとえそれが、まるで炭化してしまったかのように黒ずんでいてたり。

 そのくせ半生のようなプルプル感が残っていたり。

 出来立てとは言え、薄く立つ湯気がうっすらと紫色に見えていても、“玉子焼き”である。



――あれ?



――玉子焼きってなんだっけ?



少なくとも、俺のイメージの中にあった玉子焼きは、こんな禍々しい紫のオーラを放つ黒いバ○ルスラ○ムでは無かったように記憶しているのだが。



 もうお気づきだろう。



 要は、この手料理を食べるか否か、と言う分岐に立っているのである。

 どちらを選んでも、デメリットばかりが思いつくわけだが。



 いや、どうやらタイムアップだったらしい。



 満面の笑みを浮かべたマイハニーが、トレイに乗せたお椀を持って向かって来た。


「あれ?玉子焼き食べなかったの?」

「あ……あぁ、せっかくの特製味噌汁を、一番に食べたくてさ」


 咄嗟に言ったが、どうやらセーフだったらしく、彼女の口元がニマニマしている。


「も~、じゃあ、はい!召し上がれ!」


 そう言って出された味噌汁は、普通に見えるが……油断はできない。


 だが、目の前には彼女の期待の眼差し。

 俺は意を決して味噌汁に口をつけた。


「……美味しい。」

「よかった!私の好みで作ったから、ドキドキしちゃった」


 そう言って、自分も味噌汁を1口啜った後、おもむろに玉子焼きへと箸を伸ばし――


「あれ?ちょっと味濃かったかな?」



 なん……だと?



 それ、食えるのか?



 味噌汁は普通だったが……とりあえず、一緒に料理の勉強は、した方が良いかもしれない。


 ――自分のためにも……な。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] きっとピータンで作ったんですよ…… そうに違いない。
[一言] たっ……食べてしまわれたのですか、彼女さまは……((( ;゜Д゜))) いったいどんな味がするんでしょう。 もしかしてイカスミ入りとか?
[良い点] ちょっと!電車の中で読んだら大変でしたよ! マスクの下で笑いを我慢するのが! 「なん……だと?」が好きです笑
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ