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なおパンツ一枚である。

「――――!!――!」

「――!!」


俺の名前は芦原アシハラ狼牙ウルハ。ウルハって呼んでくれ。


ここは異世界。街の名前も国の名前も知らない。

この身一つでこの世界に来た俺に不運ばかりが襲っている。


「―――――――?!」


今も人相の悪い髭面の男が二人がかりで何か喋っている。しかし何言ってるか分からない。

だが言いたい事は何となく察しがつく、金目のものを置いていけ、的な事を言っているのだろう。何故分かるかって?


こうして絡まれるの三回目です。しかもほとんど奪われて、パンツ一枚しか履いてません。



「―――――!!」


動じない俺に痺れを切らしたのか勢いよく片割れが近づいてくる。

俺から最後の砦パンツすら奪おうというのか。


させん!俺の尊厳を守る為に俺は抵抗しようじゃないか。拳で!


……


…………


………………


……………………



ボッコボコにされました。反撃も出来ずに一方的に滅多打ちにされた。でもパンツだけは守り通した。


「こひゅー……こひゅ……げほげほ」


気管に血が入ったのか咽せた。

顔面は勿論、首や手首太もも。あちこち蹴られ殴られ青あざやたんこぶが激痛を呼ぶ。

手も内出血しているのか赤く鈍痛を伴っている。

見えない場所にはもっと傷がある事だろう。今は見えないだけ精神的にマシと思おう。


ずり、ずりと折れたかのように全く動かない片足を引き摺るように安全な場所を探して歩き続ける。

何処が安全なのか。何処が危険なのか。全く分からない以上下手に動くのはリスクが高いのだがそれでも動かずにさっきのような目に遭うのは嫌だった。


誰か他の人に助けを求めようとしたが路地裏に住む人間は全てが犯罪者予備軍(アウトロー)自分以外は敵だという目をしていた。ならば表にいる人達なら?と期待したのだがどいつもこいつも汚いゴミを見るような目でちらりと一見しただけで無視したのだ。


俺を助けてくれる存在がいない事が分かった瞬間であり、心が折れかかった瞬間でもあった。







「はっ………」


気づけば寝ていた。冷たい石畳や土ではなく木造の床にうつ伏せになっていたみたいだ。


「ここはどこだ」


風は感じられず滞留したカビの匂いが鼻をつく。どうやらここはどこかの建物の中のようだ。

どの道順で辿り着いたのか、どうやって入り込んだのか覚えが無い。


(襲われ監禁されたか?)


そう思いもしたがここには路地裏の住人の据えた臭いと残飯を漁った中途半端な食材の匂いが混ざった、とてもえぐみのある臭いがしない。(動物の糞尿が香ばしく感じられる程)


無人の廃墟。辺りに人気は無い。


力尽きる前に見つけた安全地帯に逃げ込みそして倒れるようにして眠った、と推測する。


「どのくらい眠った?どのくらい時間が経ったんだ」


廃墟ではあるが屋根は健在、壁も崩れておらず外からの光は入ってきていない。それでも薄っすらと室内を確認できるのは太陽の光とは別物の仄かな光が照らしているからだ。

それでも月明かりよりも弱くとても頼りない。

光源は宙に舞っている埃?だろうか。床に落ちると光が消えた。俺が触っても同じだった。

幻想的、にも見えたが場所がそもそも埃っぽくてそれどころではない。


つっかえ棒で塞いでいる扉を発見。棒を外し外へ出る。


冷えた空気が身体から熱を奪う。そして目にしたのは赤く染まった空。

夕暮れ、ではなく朝日。


どうやら半日ほど寝ていたようだ。そう意識すると昨日負った怪我も血が止まって瘡蓋になっていた。


「雲もなくいい天気になりそうだけどもどうしたものかなぁ」


元の世界に帰りたいが来た方法も分からなければ誰が連れてきたのかも分からない。帰還は現状絶望的といえる。


考えるが答えは出ない。この問題は先送りにして目の前の問題に取り掛かる。即ち。



パンツ一枚の現状をどうにかしよう、だ。

ウルハ 性別 男

E 綿100%パンツ

E 折れかけた心

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