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第7話 旅のルールと計画

 ブリート島の地図をさっと広げて、ミリーちゃんは四隅に重しを乗せた。感心した様子でレーネちゃんが地図をのぞき込む。


「へえ。新しい街道があるってことは、少し前に出たばかりの地図じゃない。人気で手に入らないって聞いたけど」


 ミリーちゃんは嬉しそうに頷く。


「鶏が起きる前に並んで買ったんです! それでも私より先に並んでいるひとが――」

「えらいよ、ミリーちゃん!」


 言いながらアイリスさんはミリーちゃんをなでる。

 

「こ、子供扱いはやめてくださいっ!」

「否定するところもかわいいっ」


 ミリーちゃんは、ぷくっと頬を膨らませる。


「そうなのよね……人気のものって並ばないと手に入らないのよね……」


 レーネちゃんの独り言を聞き流しつつ、私は床に置いた鞄から袋を取り出した。袋口を緩めると金貨と銀貸がちらっと見える。


 旅の計画を立てるなら、いくらお金があるかって大事だよね。旅はなにかとお金がかかるからね。えっと、金貨一枚が一万ポントで、銀貨一枚が千ポントで、銅貨一枚が百ポントだったっけ。宮殿で、庶民の暮らしの授業を一回だけ受けたけど、このためだったんだな……。

 トントンと扉を叩く音とジェイクさんの声が聞こえてきた。


「ど~ぞ~」


 アイリスさんが返すとジェイクさんが部屋に入って来て、


「失礼する」


 すっと隅の方へ移動した。部屋に全員が集まった。ミリーちゃんが話を切り出した。


「サラさん! 始めに私の方から少しお話をさせていただきたいのですがよろしいでしょうか!」

「ええ、お願いするわ」


 私はお金が入った袋を持って立ち上がった。地図が置いてあるテーブルをみんなで囲む。ミリーちゃんは大きく息を吸って、


「はいっ! 旅の計画に関わることで三つ、お伝えするようにと言付かっておりますので、一つずつお話をさせていただきます!」

 

 改めて旅の説明をしてくれるんだね。突然宮殿をバーンて出されて、あんまり説明が頭に入ってなかったからよかった。よし。気合いを入れて聞こう。

 ミリーちゃんは話し始める前にスタンプラリーの紙をバーンと広げた。この紙、ミリーちゃんが持ってたんだ!


「えっとですね、一つ目は、七つの国を巡る順番は自由に決めていいこと、です!」


 どこの国から行ってもいいってことだね。どこの国から行けばいいのか全然わからないから、みんなにそれとなく聞かないと……。


「二つ目は、印をもらうときに旅のお金として五十万ポントもらえること、です! ちなみに、サラさんがお持ちになっている旅のお金も五十万ポントです! それから、私たちお供にはそれぞれ二十万ポントずつ支給されています!」


 旅のお金を途中で足してもらえるのはありがたいな。旅でお金に困ることはなさそう。みんなにおこづかいが支給されてるってことは、五十万ポントの余った分は私のおこづかいなのかな。ていうかこの袋に、五十万ポントも入ってたんだね。数えなくてよくなったし、早めにしまっておこう。


「三つ目は、サラさんが旅を続けられないほどの怪我を負った場合や一年以内に七つの印を揃えることができなかった場合、サラさんの王位継承の序列が下がること、です!」

 

 旅を続けられないほどの怪我って……。やっぱり危ない目にあったりするのかな。嫌だな……。


「大丈夫だよ、サラちゃん!」


 アイリスさんが声をかけてくれた。それからニコっと笑顔を作って、


「モンスターにもぐもぐされるようなことがない限り、わたしだいたいの怪我は治せるから!」

「……」


 元気づけようとしてくれて嬉しいけどもっと怖い。帰りたい。


「それにわたし――」


 アイリスさんの言葉に被せるように、ジェイクさんが話に入ってきた。


「なにを言っているのだ、神官――いやアイリス殿! いやアイリスさん! 我々がお守りするのだからサラさ、サラさんが怪我をするわけがないだろう!」

「はあ~い、わかったわかった~」


 そう言いながらアイリスさんはこくこくと首を縦に振った。


「まったく。まあ、我々がお守りせずともサラさんに傷がつくことなど万に一つもありはしないだろうがな」

 

 誇らしげに胸を張るジェイクさん。


 やっぱりサラ王女って強いのかな。この体になってから、ものすごく体が軽いし、旅の荷物だって全然重くないし。でもいくらこの体が強かったとしてもモンスターとなんて絶対に戦いたくない。だいたいモンスターと戦えるわけ――――ん!? モンスター!? えっ、この世界モンスターいるの!? モンスター……て? ドラゴンとかゾンビとか……?


 私の頭にドラゴンとゾンビの大群が大迫力で浮かんで、次に疑問が浮かんだ。

 ドラゴンはモンスターであってるとして、ゾンビはモンスターであってるのかな……? 

 


「――ね、サラ」


 不意にレーネちゃんに話を振られてびくっとした。私はモンスターのことで頭が一杯で全然聞いてなくて、慌てて、


「ええ! やっぱりゾンビはモンスターじゃないわ」


 変なことを言っちゃった……!


「ゾンビ? ゾンビってなにかしら?」


 きょとんとした顔でレーネちゃんに聞き返される。

 やばい。ゾンビこの世界にいないっぽい。しどろもどろになりながら私は答える。


「ごめんなさい、ぼうっとしていたわ。えっとその、ゾンビは私の夢に出てきた、モンスターの仲間みたいな生き物よ」

「なによそれ、ふふっ」


 レーネちゃんは笑って言った。


「サラって案外変な夢を見るのね。そんな印象なかったわ」

「そう?」

「ええ」


 そんな印象ってどんな印象だろう。もしかして私が想像するよりサラ王女って真面目でクールな印象なのかな。実際サラ王女ってどんなひとなんだろう。   

 レーネちゃんはすっと表情を引き締めて、

  

「ごめんなさい、あたしも話を逸らしてしまったわね。旅の計画を立てましょうって言ったのよ。まずはどの国に行くかよね」

「ええ、そうね。まずはどこの国に行くかを決めましょう。みんなの意見を聞きたいわ」


 自然な流れで四人に意見を聞くことができて私は心の中でガッツポーズを取った。


1月8日(金)は夜に投稿します。

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