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第4話 招かれるお供たち

「国王陛下、本日は宮殿へお招きいただき光栄至極に存じます」


 先頭を歩いて来た白髪の男のひとがすぐに話を切り出した。


「うむ! では、順番に名乗ってもらおう!」

「は!」


 自己紹介始まっちゃったよ。もう。せっかくだから自己紹介ちゃんと聞いておこう。

 張り詰める空気の中、白髪の男のひとが自己紹介を始めた。


「此度の任務を仰せつかりました、剣士、ジェイク・ターダーにございます。旅が終わるまで、命を賭してサラ王女をお守りいたします」


 強そう。身長百八十くらいあるんじゃないかな。白髪だけど年は若そう。

 ジェイクさんの自己紹介が終わるとすぐに、真っすぐな桃色の髪を胸元くらいまで伸ばした女の子が自己紹介を始めた。


「同じく、魔法使いのレーネ・イートレットにございます。必ずや、サラ様の旅を成功させてみせます」


 冷静そう。イヤリングとかブレスレットとか、アクセサリーいっぱいつけてすごくおしゃれ。

 次に、ブロンドで青い瞳の女のひとが自己紹介を始めた。


「同じく、神官のアイリス・カンダリーでございます。片時もサラ王女のお側から離れることなく、お支えいたします」


 おしとやかそう。スタイルよくて羨ましい。いいな……。

 最後に、薄茶色の髪を肩口で揃えた小柄な女の子が自己紹介を始めた。


「同じく、執事のミリー・ゴートにございます。見習いから一人立ちしてまだ数ヶ月の未熟者ではございますが、全力でお支えいたします! 何卒よろしくお願いいたします!」


 真面目そう。一番若そうだけど十五歳くらいかな。そういえばサラ王女も十六歳になったばっかりだっけ。一歳くらいしか変わらないのか。


「うむ! 我が愛娘を頼んだぞ! さあサラ、次はおまえの番だ!」


 そうだよね、来るよね。自己紹介やっぱり回って来るよね。サラ王女が言いそうなこと……、言いそうなこと……! よし!


「……はい! 私はサトース家の第一王太子、サラ・サトースです。長い旅になると思います。協力し合い、素敵な旅にしましょう」


 これが私の精一杯の自己紹介――

 

 四人は左胸に手を当て、


「仰せのままに!」  


 そう言ってくれた。やった。自己紹介うまくいった。でも旅にすごく乗り気なひとみたいになっちゃったな……。


「うむ! では出発の準備に向かうのだ!」

「仰せのままに!」


 四人はさっと立ち上がって部屋を出て行った。振り返ってメイダーさんを見ると一歩も動いていなかった。私も一緒に出て行くのかと思ったけど、まだ部屋にいた方がよさそう。そんなことを考えていると国王陛下に声をかけられた。


「サラよ、必ずや無事、戻ってまいるのだぞ。次の国王に一番相応しいのはおまえだと思っておる。無条件に国王にできればいいのだが、この旅は代々続いている儀式なのだ。他の国も関わっている故、一存でなくすことはできぬ。我が子ではあるが……いや、今ここで言うことではないか。サラ、我が国を任せられるのは、おまえしかおらぬのだ!」

「は、はい」


 急にただならぬ雰囲気出てきた。


「陛下、申し訳ございませんが、そろそろ王城に戻る頃合いにございます」


 国王陛下の右側の兵士さんがそう告げた。


「うむ。サラ、我はもう戻らねばならぬ。残念だが、ここでおまえを見送らせてもらうぞ。さあ、旅の支度に向かうのだ。わかっておるとは思うが、旅の間は片時も油断をしてはならぬぞ!」

「はい」


 返事の声が小さくなる。今更だけど旅に出るのが不安になってきた。国王陛下が私の身を案じるほど、この旅が安全なものではないと念を押されているみたいで。

 今からでも嫌だって言ったら行かなくてよくならないかな、嫌だって言って――


「真の第一王位継承権を手にし、我が跡を継ぐのだ、サラよ! そして、ブリート島の平和を永く守ってゆくのだ!」


 揺るぎない信頼を感じさせる国王陛下の言葉。それには後ろ向きな考えを吹き飛ばしてしまう力と、旅に出ることが唯一の選択肢と思わせてしまう力があった。

 前向きに考えたら、ここにいるより旅に出た方が元に戻る方法を見つけられそうな気がするし! 勢いに任せて、


「はいっ! 行って参ります!」


 出せるかぎりの声で言った。最後に国王陛下に一礼をし、メイダーさんとともに出発の準備へ向かった。



「では、まずこちらを」

「ええ……」


 私はメイダーさんから手渡された剣を仕方なく両手で受け取る。


 ずっしりおも……くない。あれ、軽い。

 

 片手だけで柄を握って持ってみて、それでも軽かった。


「軽いわ」

「そちらの剣は十二分に重い剣でございます。軽くお感じになられるはサラ様の日頃の鍛錬の賜でございます」 

 

 サラ王女、頑張って体を鍛えてたんだな……。こんなに剣が軽いんだもん。私は剣先を天井に向けて上品な剣を眺める。ふと鞘を掴んでずらしてみると刀身がキラリと輝いた。慌てて鞘を戻した。

 私は目を瞑って祈った。この剣を使う日が絶対に訪れませんように。目を開けると、


「サラ様、お時間が迫っておりますので、ご容赦ください」


 メイダーさんは私の手からそっと剣を取って、私の腰に巻かれたベルトに差した。


「旅のお荷物はこちらになります。旅のお金、着替え、薬、保存食などが入っております。約束のものも入っております」

「約束のもの?」

「新しい日記帳でございます」


 日記帳を頼んだ記憶は全くないけど、うまく話を合わせておこう。

 

「そうね、そうね思い出したわ。用意してくれてありがとう」 

「これからサラ様はいろいろな国を旅して回るでしょうから、よい旅の思い出を記されてはと思います」

 

 言いながらメイダーはさんは私に荷物を背負わせる。


「これで旅の支度が全て整いました。旅のお供たちが待つ場所へご案内いたします」

「ええ」


 メイダーさんに案内され、廊下を歩き、階段を上がって、また廊下を歩く。

 旅に出たら、しばらくメイダーさんには会えなくなるんだよね。短い間だったけどメイダーさんにはすごくお世話になったな。感傷に浸っていると、


「着きましたよ、サラ様」


 扉がもう目の前にあった。


「それではお気をつけて行ってらっしゃいませ」

 

 メイダーさんは心配そうに微笑んだ。その表情に返す言葉がすぐに出てこなかった。メイダーさんが笑ったところを見るのが初めてだったから。


「ありがとう、行って来るわ」


 私も笑顔で言った。


 扉が開けられ、待ち構えている四人が見えた。お待ちしておりました、と四人は自信に満ち溢れた様子で迎え入れてくれた。

 そのときの四人の姿は、すごく頼もしかった。


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