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ポンコツ生産系チーターの助手  作者: 助手の助手
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青い炎

「見たまえハヤシ君!!」


 またミツクニが何かを作ったようだ。ミツクニの手には小さな箱が握られていた。

 ミツクニが箱の魔法陣に触れて魔力を流すと、箱の上に青い炎が現れた。


「ライターですか?」


「よく見たまえ!ただのライターではないのだよ!」


「・・・。何処が特別なのですか?」


「炎だよ炎!!あ、の、青い炎を実現したのだよ!!」


「「あの青い炎」?ですか?」


「知らないのかねハヤシ君!青い炎は超高温で、超格好いいのだよ!!」


「あ~、そういうことですか。」


「むむ、何やら不穏な反応。」



 青い炎は高温だ。これは、間違っていないが間違っている。勘違いしている人は多く、ミツクニもその一人のようだ。


青い炎が高温だと言える理由は色温度にある。ほとんど全ての物質は、高温になると発光する。熱せられた金属が赤く光る現象がこれだ。この高温発光は、更に温度を上げていくと赤から黄色に変わり、白になり、青へと変わる。この現象に合わせて色を温度で表したのが、色温度だ。赤は2500℃付近で、青は12000℃くらいになったと思う。炎の発光が高温発光によるものならば、青い炎は極めて高温と言えるだろう。


 だが青い炎が全て高温かと言えばそうではない。例えばガスバーナーの炎の色は青だ。だがこちらの青い炎の温度は1000ド付近で、先ほどの高温発光の赤にすら達していない。こちらの色は化学反応の副産物であり、色と温度の関係性は燃やすものによって変わる。ややこしいのは、ガスバーナーも酸素不足で不完全燃焼になると赤い炎になり、不完全燃焼なので温度が低くなることだ。こちらの赤い炎より青い炎の方が温度は高くなる。どんな条件でも青い炎は高温と勘違いしても無理は無いだろう。


 どちらも赤い炎よりも青い炎の方が高温ではあるが、同じ青でも温度が全く違う。恐らくミツクニの言う超高温の青い炎は、高温発光により青く見える炎のことだろう。

 では、目の前で燃えているライターは高温発光による青であろうか。答えは否だ。例えライターサイズといえども、12000℃の炎が手元にあったら熱くて持ってはいられないだろう。あれはあって1000℃の炎だ。


 ミツクニにも分かるように丁寧に説明してあげた。



「つまりこのライターは、ただ青いだけで伝説の青い炎ではないということでござるか。」


「そうですね。」


「でも、青い方が格好いいでござろう?」


「そのライターの目的が火を付けることだとすると、青い光は無駄でしかありませんね。」


「何故でござろうか?」


「光の色は光子の持つエネルギーによって決まります。赤い光よりも青い光の方がエネルギーは高くなります。つまり青い光を出す方が光にエネルギーを多く消費していることになります。火を付けるために必要なのは高温であり、光は無駄でしかありませんので、青い光のライターは無駄となります。」


「でも青い光の方が高温なのでござろう?早く火が点くのではござらんか?」


「高温発光でなくとも、これが化学現象によって発生した熱と光であれば、高いエネルギーの発光をする青い炎の方が赤い炎よりも高温である可能性が高いでしょう。ですがこれは魔法の炎です。発光させずとも熱を出せるのではないですか?魔力効率を考えると発光は極力低エネルギーの方が良いはずです。」


「うぐっ。製作者であるがゆえに分かってしまう指摘の正しさ。確かに熱だけ出せるでござる。ぐうの音がでないからうぐの音が出たでござる。」


「うぐの音ってなんですか。はぁ。残念ながら、この世界の人は青い光が高温だとは思ってくれません。むしろ水の色、すなわち低温と勘違いするでしょう。青い炎のライターは無駄に魔力を消費するだけで赤い炎の方が売れるでしょうね。というわけで、赤い炎のライターに作り直してください。大きさももう少し小さくできませんか?それと、持ち歩いている時に誤って発動しないように安全機能も付けてください。」


「むむむ。注文が多いでござるなぁ。それよりも高温発光による青い光のライターを作りたいのでござるが。」


「手、燃えますよ。」


「・・・。赤い炎のライターを作るでござる・・・。」


「頑張ってください。」



 数日後、これまでの発火の魔道具とは比べ物にならないくらい小型の発火の魔道具が、ハヤシが懇意にする魔道具店で発売された。小型な上に従来の物よりも魔力消費が少ないと売れ行きは順調。そんなことには興味のないミツクニは密かに高温発光による青い光の研究を進めて、工房で小火を起こしてハヤシに大目玉を食らうのであった。


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