探索
「それじゃあ探索始めますか!」
そして俺は記念すべき1歩を踏み出した。
今のところ特に体に変化は無いようだった。
まあ、無い方がいいのだが。
周りを見ると壁に光る苔のようなものが着いていて、空間を明るく照らしていた。
「何かに使えそうだし少し取っとくか」
壁に生えている苔を少し採取する。
取りすぎると視界が悪くなるかもしれないので本当に少しだけにしておく。
「さて、どっちに行くかな…」
目の前の道は右と左に別れている。
どっちが下に繋がっているのかだが…
「っとその前にここにドア置いとかないとな」
そう言って俺はアイテムボックスから事前に作って置いたドアを取り出す。
幹にこれまた作っておいた釘で蝶番の部分を止め、ドアの設置が完成する。
「こうしとかないとモンスターがいた時に危険だからな…」
鍵は作れなかったので外側に木を置くことで鍵をかけ、戻ってくる時はアイテムボックスで木を回収して開けるという仕組みだ。
アイテムボックスは視界に入っていなくても、ある程度の距離の中でそこにはあるアイテムを認識していれば取る事が出来ることがわかった。
ただし、認識していても取れないアイテムもあり、多分自分のものかどうかで区別しているのだと思う。
スキルにはまだわからないことが多くあるので、不確定要素はできるだけ少なくしておきたいところだ。
「さて、どっちに行くかだけど…うーん右で!」
そして俺は右側に歩き始めた。
できればモンスターに出会わないことを祈って…
しばらく歩いてわかったことだが、ダンジョンはアイテムの宝庫だった。
壁や床に小さい木の欠片や樹液などがあり、それらは見つけ次第アイテムボックスに放り込んでいる。
そして、俺が床に落ちていた固まった樹液を拾っている時にそれは起こった。
何かが横の通路から現れたのだ。
それは足を引きずって歩いていたため、足音が小さく気づくのが遅れたのだ。
直線距離にして20メートルほど先に現れたものの見た目は、木でできたゴーレムだった。
その姿を見た俺は、しばらく硬直した後に鑑定を発動させた。
「鑑定」
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ウッドゴーレムLv83
ステータス[0]
HP 10000/10000
MP 0/0
力 35
魔力 0
敏捷 1
防御 60
器用 1
運 1
スキル[0]
・堅牢Lv5 ・世界樹の加護Lv1
称号
世界樹の守護者
木でできたゴーレム。
材料によって性能が変わる。
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「…無理だろ」
この結果が目に入り、俺は全速力でドアへと走り出した。
もちろん相手には見つかっているため、追いかけてくる。
俺は適当に足が引っかかることを期待してブロックをばら撒きながら走る。
変に迷わないためにも冷静にドアまでの道を選ぶ。
実際のゴーレムの強さを見ていないからか、そこそこ冷静に思考できている。
ゴーレムは自身の重さからか足を引きずって歩いているのでばらまいたブロックがいい仕事をして、無事俺はゴーレムから逃げ出すことができた。
ゴーレムからは逃げ出したが、他のモンスターが出てくるかもしれないので、俺は引き続きドアへと走っていく。
しばらくするとドアが見えたので、アイテムボックスを使いロックを解除し拠点へと戻る。
それからブロックを出して鍵をかけ、ようやく俺は安心を得ることができた。
「なんだよあいつ!レベル83!?…いやこんなところからスタートしてる俺がおかしいんだよな…だとしてもこれどうするよ…」
下から徐々に強い敵が出てくるとすると、雲より高いここにはかなり強いモンスターが出てくることにも納得できる。
しかし、この結果は俺の地上への帰還を絶望的にするものであり…
こうして俺のダンジョン探索は最悪の形でスタートした。