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追尾

「家康はそこだー!家康の首をとったものには褒美は望み通りぞ。突っ込めー!」


勝頼と旗本は動揺する家康本陣に斬り込んだ。槍を振り回し騎馬で駆け抜ける勝頼の周りを徒士の護衛が走りながら勝頼を守りつつ、家康の方へ向かって進んだ。


家康は駆け出した。走って逃げた。その周りを守る旗本五十人も一緒に逃げた。

家康の撤退の合図で徳川家は総崩れとなった。辺りはすっかり暗くなり、逃げ惑う徳川軍を武田軍が一方的に蹂躙する事となった。


「こうなったか。桜花散撃改で仕留めたかったが仕方ない。あいつら後で説教だな。わたしたち〜なんていってるからだ、あのボケ共。」


あのキャッチフレーズは、勝頼の寝言を楓が聞いてアレンジしたらしい。あんな事言ってるの、俺?


勝頼は進む。斬る、斬る、斬る。家康を逃がそうと前に立ち塞がる敵をひたすら斬りまくった。


「ん?」


その時、前方に松明を持った異様な雰囲気の集団が現れた。





楓は部下10人を連れて祝田村にいた。上空から4機のハンググライダー『甲斐紫電』が降りてきて田んぼに着地した。

そう、楓は機体の回収にきていたのである。


「あ、楓さんだ。わたしたち〜、今翔べる…」


「あ、それもういいから。紅、あんたねえ、家康外したでしょ。下手くそ。」


「やっぱり外したか。風が強くて狙いがずれちゃって。あ、飛ぶ前に『かつよりんZ』飲み忘れたからかも。」


「あんたらねえ、だったら4人いるんだからもっとあちこちにばら撒くとか工夫しなさいよ。本陣の左翼に集中してたよ。」


作戦では、家康を一気に葬り動揺する徳川軍を全滅させる予定だった。楓は勝頼に言われていた予備の作戦の準備を始めた。

分解したハンググライダーを小荷駄に載せ、くノ一4人に、


「あれを本陣の勝頼様の陣へ運んで。棟梁の出番がくるよ。」






勝頼の前方に突然現れた不気味な50人の集団。勝頼は馬を止め槍を構えた。その周りを徒士の護衛が追いつき囲んだ。

勝頼隊の侍大将 玉井伊織も追いついてきて騎馬隊と共に勝頼の横に並んだ。


敵は突然、紙で作ったメガホンを持ち叫び始めた。


「かーつーよーりー。我らは二俣城を落ち延びた者。貴様の卑怯な策で城を明け渡した事、死んでも許さん。我ら一同、貴様に一矢報いる為にここで待っていた。」


今度は10人がメガホンを持って同時に叫んだ。


「かーつーよーりー。ゆーるーさーんーぞー。」


なんだあのメガホン。この時代にあったのかあんなアイデア。


「殿、卑怯な策とはなんです?」


二俣城攻めで、下剤作戦を知らない玉さんに聞かれた。


「いや、ちょっとな。実は…………。」


「そりゃ怒るわ、それって格さんが作ったあれでしょ?想像しただけで下痢になりそう。で、どうします?」


「そうだな、遊んでる暇はないから玉さんはあいつら無視して家康追って。俺は流石に相手してやらないと後味が悪い。」


「武士の情けですね。では、お先に。」


玉さんを先に行かせ、勝頼はメガホン部隊に向かって言った。


「二俣城の衆よ、貴様らはよくこの武田軍を相手に持ちこたえた。城は明け渡したが犠牲を出す事なかった。この勝頼。皆を讃えようぞ。」


「うるさい、貴様を糞まみれにしなければ気が治らん。」


あちゃー、怒ってますね。どうするかなと考えていたら、敵の一人が前に出てきた。


「元二俣城代、中根正昭である。勝頼、一騎打ちじゃ。」




勝頼は馬から降りた。徒士何人かに松明で辺りを明るくさせてから、


「手を出すな。中根殿、その一騎打ち。お受けする。」


勝頼は槍を徒士へ預け、斬鉄○こと、『鬼斬り丸』を抜いた。中根も刀を抜き、二人は3m位の距離を置きお互いに左回りに回り始めた。

勝頼は特製のスニーカーを履いていた。三方ヶ原の地面は決して平らではない。石も落ちているし、草も生えている。相手の草鞋よりは足場は数段上まっていた。


お互いの動きが止まった。と思ったら、勝頼の身体がぼやけた。次の瞬間、勝頼は中根の横を通り過ぎていた。

中根の胴が2つに割れた。


「陰流奥義 陽炎」


そう、勝頼は上泉伊勢守に以前見せてもらった陰流奥義 陽炎を必死に練習し会得していたのである。

それに加えて鬼斬り丸の斬れ味、勝頼は剣豪としても超一流であった。


中根が斬られた後、少しの間をおき、二俣城勢は勝頼に斬りかかろうとしていた。勝頼は腰に付けていたペンライトホルダーのような所から、『雷出印』を出し、二俣城勢に投げ付け馬に戻った。

マグネシウムにより発生した突然の閃光に目をやられた二俣城勢は、勝頼の護衛隊に一瞬で葬りさられた。


「卑怯な奴には遠慮はせん。さて、余は本陣に戻る。護衛は100人でいい。残りは徳川の敗残兵を残さず討ち取れ。行け!」


武田軍は逃げ惑う徳川軍を朝まで追い続けた。

その頃、家康は浜松城へ向かって逃げていた。旗本は一人減り二人減り、既に30人になっていた。

武田軍は、家康どこだーと追い続ける。このままでは逃げ切れないと思った時、旗本の大石兼蔵が家康の兜を取った。


「殿、某が影武者になります。殿は早く城へお逃げください。」


と言って武田軍に向かっていった。


「余は徳川家康である。貴様ら雑兵に討たれる家康ではない、かかってこい!」


大石兼蔵は必死に戦い、武田軍の兵士5人を斬ったが力尽き、首を斬られた。


「徳川家康、討ち取ったり。」


その声は戦場に響き武田軍は勝ち鬨を上げた。家康の首は本陣に届けられた。


「家康ではないな、影武者だ。追え、まだ家康は生きている。」


この隙に家康は城へ戻った。旗本は5名まで減っていた。


すでに三方ヶ原は闇の中である。武田軍は本陣の場所がわかるように火を焚き、味方が迷わないようにしていた。

勝頼は本陣へ戻り、信玄に提案した。


「家康は城へ戻るでしょう。お屋形様今こそトドメを刺す時。某に策がございます。城を攻める御許可を。」


「ならん、徳川は虫の息。それに武田軍の恐ろしさが身にしみたであろう。放っておいても脅威ではない。」


「無傷で城を焼きます。勝頼空隙隊にお任せ下さい。」


信玄の許可を得た勝頼は側にいた孫六に、楓を呼ぶように言った。










いよいよ前半クライマックスです。

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